仰天!「超長距離」通勤列車の遠すぎる始発駅 東京に3時間以上かけてやってくる列車も
平日朝の通勤ラッシュの時間帯、全国各地のターミナル駅には、たくさんの列車が到着する。
その多くは郊外にある車庫や、駅のホームの脇などにある、一時的に車両を停めておく「留置線」と呼ばれるところに置かれていた列車だ。だが、車庫や留置線にある車両だけでは通勤客を運びきれない、もしくは、増え続ける通勤客に対して車庫が手狭になってしまった、という場合、遠くにある車庫に列車を置いて対応することがある。
時刻表を見ると、朝5時台、6時台に遠くの駅から出発して、8時台、9時台にターミナル駅に到着する列車が各地で走っている。
そんな「一見なんでもないような通勤列車に見えるけれど、実はすごいところから来ている」列車をいくつか紹介したい。
富士山のふもとから来る通勤電車
東京と新宿・立川・八王子方面を結ぶ中央線の快速。この路線には、富士山のふもと、山梨県の富士急行線河口湖駅を朝5時48分に出発し、8時51分に東京に到着する電車が走っている。走行距離114.4キロメートル、所要時間3時間3分。途中47もの駅に停車する。
この電車は新宿に8時35分に到着するので、通勤で乗ったことのある沿線の方は多いと思われるが、河口湖が始発駅だということを知って乗る方は少ないだろう。ちなみに、河口湖発の快速は1日2本あり、もう1本は河口湖を6時18分に出発、東京着は9時20分となっている。
山小屋のような風情の奥多摩駅。東京駅8時14分着の中央線快速電車は、この駅を6時6分に出発する(写真:J6HQL / PIXTA)
中央線の快速にはもうひとつ、変わったところから来ている通勤電車がある。青梅線の奥多摩駅を6時6分に出発し、8時14分に東京に到着する電車だ。
河口湖と東京を結ぶ電車は、夕方の時間帯に通勤快速河口湖行が走っているので「逆もあるだろうな」と想像がつくが、東京発奥多摩行の中央線快速電車は平日、土休日とも1本も運転されていないため、意外な感じがある。始発駅の奥多摩も終着駅の東京も東京都内。2時間以上かけてこの電車を乗り通せば、東京都の広さを実感できるだろう。
新幹線なら40分の距離に4時間!
名古屋エリアで走っている朝の長距離列車は、東海道本線静岡発の岐阜行普通列車だ。静岡駅を早朝5時1分に出発し、名古屋に9時4分、終着の岐阜には9時34分に到着する。静岡を6時41分に出る東海道新幹線の「ひかり493号」に乗ると、名古屋着は7時24分。新幹線だと43分で行ける距離を4時間かけて走るという、なかなかの鈍行ぶりだ。
海沿いを走る紀勢本線。紀伊田辺駅6時ちょうど発の京橋行きは、この路線を大阪方面へと向かう(写真:tarousite / PIXTA)
関西エリアでは、和歌山県の紀勢本線紀伊田辺駅を朝6時ちょうどに出発する列車が、天王寺、大阪を通って京橋までを結んでいるほか、三重県伊賀市にある関西本線の柘植(つげ)駅を6時34分に出る列車は、草津線、東海道線を経由して大阪まで乗り入れている。
九州では、博多に8時19分に到着する普通列車が、長崎県の佐世保の手前、早岐(はいき)駅を始発駅としている。5時34分に早岐を出発した列車は、有田、肥前山口、佐賀、鳥栖、博多を通り、さらに小倉、門司港へと向かう。終着の門司港駅到着は10時11分。午前8時台に博多に到着するこの通勤列車は、JR九州の普通列車の中で、最長距離を走る列車だ。
首都圏では、小田急多摩線の唐木田から東京メトロ千代田線を経由し、JR常磐線の我孫子を結ぶ列車など、3つの鉄道会社にまたがって運転される列車は珍しくない。だが、全国的に見てみると、3社以上を直通する列車は数少ない存在だ。
そんなレアな存在の列車が、朝の通勤時間帯、意外なところで運転されている。まずひとつめは、新潟県の糸魚川を6時41分に出発する金沢行普通列車だ。この列車は、えちごトキめき鉄道の糸魚川駅を出発して、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道を経由して金沢へと向かう。
北陸新幹線の開業によって誕生したこれら3つの鉄道会社だが、時刻表を見ると金沢発富山行など、2社にまたがって運転される列車は多数あるものの、3社にまたがって運転されるのはこの列車と、夕方に金沢を出発する糸魚川行の1往復だけだ。
そしてもう一つは、岩手県の小鳥谷(こずや)を6時33分に出る鮫行の普通列車だ。始発駅の小鳥谷はIGRいわて銀河鉄道の駅で、ここから青い森鉄道、JR東日本の八戸線を経由して、終着駅の鮫に8時24分に到着する。走行距離59.9キロメートル、所要時間1時間51分と、非常にのんびり走る列車だ。
日本で1本しかない通勤列車が北海道に
珍しい通勤列車は他にもある。JR北海道では、函館本線の倶知安(くっちゃん)を6時20分に出発する苫小牧行(札幌8時19分着)が、日本で1本しかない特徴のある列車だ。この列車は途中の小樽と札幌の間で電車とディーゼルカーを一緒に連結し、電力とディーゼルエンジンの両方を使って運転されている。
また、長野県の篠ノ井駅を8時3分に出る豊野行の普通列車も珍しい存在だ。長野駅を発着する在来線の列車は、この列車以外すべてが長野始発、長野止まりで、この1本だけが唯一、長野駅を「途中駅」とする列車なのだ。
最近は、早朝に遊んでから出社する「エクストリーム出社」が話題となっている。もし自分が通う会社や学校の近くに、ちょうどいい時間に到着する列車があったら、早朝、もしくは前日に始発駅へと向かい、長距離列車や珍しい列車に乗って出社する「鉄ストリーム出社」をしてみるのも面白いだろう。
全国の意外な通勤列車一覧
少しでいいから、鉄道旅行をしておきたかった…。