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「おもてなし」が労働生産性を下げ、長時間労働を増長させる?

2016年12月29日 17時41分54秒 | コラム・ルポ

「おもてなし」が労働生産性を下げ、長時間労働を増長させる?

「おもてなし」が労働生産性を下げ、長時間労働を増長させる?

「おもてなし」が労働生産性を下げ、長時間労働を増長させる?

(フォーブス ジャパン)

久しぶりにパリへ行った。土曜日に到着したので、その日はホテル近辺で夕食をし、日曜日に街へ繰り出した。

通りにある小売店だけでなく、プランタンやギャラリーラファイエットなどの百貨店も閉まっているので、散歩をしながら、オルセー美術館へ行き、アート鑑賞して一日を過ごした。日曜日のパリは時間がゆっくりと流れていく。

以前、フランス人に「日曜日にショッピングしないの?」と聞いたら「そんなの土曜にやればいい。日曜は自分のための時間だよ」と返ってきた。世界トップレベルの観光客数を誇るパリでも、日曜は店を開けずに休むのだ。

多くの欧州の都市では日曜に店が閉まっているだけでなく、深夜営業も限られる。コンビニもない。法律で週一日の休みや深夜営業の禁止が定められていることもあるが、たとえ法律がなくても、深夜や日曜日に働く十分な人数が集められないだろう。

買う人(消費者・顧客)がいれば、売る人(労働者)がいる。

欧州のシステムは”買う人”にとっては不便だが、計画的に買い物するなどすればその環境にもすぐに慣れるものだ。すると、”売る人”は休むことができる。誰でも、休日や深夜には休みたいでないか。欧州では消費者と労働者がお互いに尊重し合っているのだ。

「お客さまは神様です」がまかり通る日本では、消費者の厳しく高い要求に対して、労働者が必死に応えている。しかし、海外へ行くと、今や世界的に有名になってしまった日本独特の「おもてなし」が労働者の生産性を下げ、給与を下げ、長時間労働を増長し、結果自分たちの首を絞めていることに気づく。

国際比較をすると日本のサービスは特殊で、しばしば過剰とさえも受け取られるのだ。

例えば、日本の宅配便のサービスレベルは世界でも稀なことを認識すべきだろう。週7日間稼働し、時間指定をしても低価格で「明日」届けてくれることにすっかり慣れてしまっているが、海外では週末には配達してくれないし、時間指定もできないことがスタンダードだ。

急ぎの場合は追加料金を支払って、オプションで土曜日に送ることができるが、それでも日曜日は指定できないのが当たり前。日本に住み始めたアメリカ人は「日本では日曜日に宅配が届く!」と驚いていた。

送料だって、無料じゃない。配達員が仕事時間に労力を使って届けているのだから、誰かがその分を払っているのは当然だ。結局、客が送料を支払わないことのしわ寄せが、立場の弱い下請け労働者の賃金を下げてしまっている。送料無料やサービス無料は、まわりまわって「サービス残業」と同等のことを、客が労働者に強いている結果になっている。

要求が高く、細かく、厳しい日本の顧客に鍛えられたおかげで、日本の高品質サービスは「高級ブランド品」となった。それ自体は誇らしいことだが、問題は顧客がそれに対して相応の対価を払わないことである。海外ではそのような付加価値の高いサービスにお金を支払うのが当たり前だ。

日本の製造業の生産性はトップレベルだ。しかし、日本独特の「おもてなし」精神がはびこるサービス業が足を引っ張り、賃金の低下と長時間労働を増長し、日本の労働生産性は「先進諸国の中で最も低い」ことで有名になってしまっている。

もちろん、海外も高レベルのサービスを提供するところはある。しかし、例えばそれを提供する高級ホテルやレストランは、従業員の給料も高い。高品質のサービスにはそれなりの金額を払うことを客が心得ているので、サービスの質と対価が正比例し、従業員の給与に結びついているのだ。

日本人もそろそろ消費者の「便利さ」の代償が、労働者の働く環境を悪化させていることに気づくべきだろう。そこで日本がすべきことは、サービスレベルを下げるのではなく、サービスに対して相応の対価を払う意識を高めることだ。それが日本の労働者の賃金と労働生産性の向上につながっていく。

明日から個人でできることもある。多少の不便さを受け入れる、または、サービス提供者に感謝の気持ちを伝えることだ。そうすることで皆が気持ち良く、生産性高く働ける社会になるのではないか。

パク スックチャ


欧米を真似しろとは言わないけど、便利さに慣れてしまった今、もう(多少でも)不便だと感じる生活には戻れないんだろうねぇ。 

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「アマゾン多過ぎ」ヤマトドライバーから悲鳴続出、「利便性」が生んだ過酷な実態

2016年12月29日 17時32分15秒 | コラム・ルポ

「アマゾン多過ぎ」ヤマトドライバーから悲鳴続出、「利便性」が生んだ過酷な実態

「12月に入って、3キロも痩せました」。首都圏のヤマト運輸に勤めるAさんは、入社10年以上のベテランセールスドライバー。体重が減るのは、長時間の肉体労働に加え、昼食の時間が取れないためだ。

「荷物が多くて、まとまった休憩が取れません。12月は、お歳暮、クリスマス、おせちと1年で一番忙しい。朝7時半から夜11時くらいまで働いています」

実質的な時間外労働は「過労死ライン」と呼ばれる月80時間前後。「僕だけでなく、大半がそんな感じで働いているんです」

●ネットショッピングでドライバー疲弊

ネットショッピングの拡大で、宅配便の利用が増えている。国土交通省によると、2015年度の宅配便は37億4493万個。この10年間で約8億個(約27.3%)も増加した。

ショップ事業者としては、Amazonが独走している。インプレスの調査によると、2015年のAmazonの売上高は9300億円。2位のヨドバシカメラが790億円だから、10倍以上だ。楽天については、楽天ブックスなどの直販が対象のため、5位(550億円)。楽天市場を含めた流通総額では日本トップクラスとされる。

 

必然、Amazonの配達を受け持つヤマトの取り扱い数も増える。同社の2015年度の「宅急便」取り扱い総数は17億3126万件。Amazonの配達開始から3年で、およそ2億4000万件(約16.4%)伸びた。

本来、荷物が多いことは、ドライバーにとってマイナスばかりではない。ヤマトでは配送件数に応じた「業務インセンティブ」があるからだ。ただし、宅急便は1個20円ほど。仮に余分に50個運んでも、1000円ちょっとにしかならない。

「忙しさに比して、給料が上がった感覚はありません」。Aさんは訴える。結果として、現場にはAmazonに対する負担感が蔓延しているという。

●終わらない「再配達」、コンビニ配送は「オアシス」

Aさんの場合、1日に運ぶ荷物は150個ほど。12月は200個以上の日もあったという。そのうち、2〜3割がAmazonだ。「Amazonを扱うようになって、本当にしんどくなりました」

Aさんは朝、配達を始めると、まずマンションに向かう。「宅配ボックスってあるでしょ。すぐいっぱいになっちゃうから、他社と競争になるんです」

ボックスを狙うのは「再配達」したくないからだ。国交省の調査(2014年)によると、宅配便の再配達率は19.6%。再配達1回目でも約4%が残る。「みんな帰宅してから再配達の電話をかけてくる。だから夜の仕事はいつまでたっても終わらないんです。ヤマトの時間指定は午後9時までですが、その後も配達を続けています」(Aさん)

宅配ボックスを使いたい理由は、ほかにもある。都心部で働くBさん(40代)は、「タワーマンションは宅配業者にとって、面倒なルールが多い」と語る。管理人から台車の利用禁止や、一軒一軒インターホンで許可をとるよう言われることが多いそうだ。宅配ボックスを使えれば、そのわずらわしさから解放される。

「Amazonは、もっと荷物をまとめて発送してくれたらなと思います。それから、小さいものは封筒で送ってもらえると、不在でも郵便受けに入れられるのでありがたいです」(Bさん)

再配達に悩まされる宅配ドライバーにとって、オアシスとも言えるのが「コンビニ」だ。今年、ヤマトを退社した元ドライバーのCさん(30代)は、「コンビニはまとまった量を確実に受け取ってくれるから、本当にありがたかったです」と語る。

しかし、コンビニ店員の評判は芳しくないようだ。Cさんはこう続ける。「知り合いの店員さんは、『こんなサービスなくなればいいのに』と話していましたね。バックヤードがいっぱいになるし、受け渡しに時間がかかるから『休めない』って」

●業務効率でカバー図るも「現場はパンク状態」

Amazonの配送はもともと佐川急便が受け持っていた。ところが、運賃の値上げ交渉が決裂し撤退。入れ替わりで、ヤマトが2013年から参入した。現在、Amazonの配送はヤマトを中心に、日本郵便や「デリバリープロバイダ」と呼ばれる中小企業などが受け持っている。

佐川が撤退するような運賃でもヤマトが手を挙げたのは、佐川とのビジネスモデルの違いが大きい。佐川の宅配便の多くは、下請け業者に代金を払って届けてもらっている。これに対し、ヤマトはほぼ自社ドライバーで届けることができる。配達効率を上げれば、利益が出る。

しかし、目論見に反して、現場はパンク寸前だという。前述のAさんは次のように証言する。「この1年で周りのドライバーが10人ぐらいやめました。下請けの人にお願いして凌いでいるけど、社員自体はなかなか増えない。この間も、体験入社の子を1日、トラックの助手席に乗せたところ、『仕事が慌ただしすぎる』と言ってやめてしまいました」

●「送料無料」を求める消費者

Aさんはこうも述べる。「Amazonについて言えば、会社(ヤマト)が安く仕事を取って来て、現場に押し付けているという感覚です。そもそも『送料無料』は厳しいと思います。最近は、米や水など重いものもネット通販。消費者の方も『送料=手間賃』だと思ってもらえないでしょうか…」

送料が無料なのはAmazonだけではない。急速にシェアを伸ばしているヨドバシカメラなどもそうだ。野村総研が2016年に発表した「買い物に関するアンケート調査」によると、「ネットショップを選ぶ際の必須条件」は、「送料が安いこと」が約70%で、「価格の安さ」を上回る1位だった。送料無料の背景には、消費者の強い要望がある。

「適正な送料をいただければ、給料も上がるし、人も増えると思うのですが…。ダッシュボタンも出て、これからAmazonやネット通販の利用はもっと増えますよね。肉体労働ですから、今のままでは、あと何年体がもつか、まったく先が見えません」

●「労働時間の削減」がかえってサービス残業を生む

ヤマトは今年8月、横浜市にある支店が労働基準監督署からの是正勧告を受けた。問題視されたのは、(1)休憩時間が法定通り取得できていないこと、(2)時間外労働に対する賃金が支払われていないこと。

労基署に窮状を訴えた元ドライバーによると、労働時間を短縮するための取り組みが、かえってサービス残業を生み出していたそうだ。

ヤマトの労働組合は、会社との協定で労働時間の上限を決めており、上限は年々短縮されている。しかし、業務量は増える一方。サービス残業しないと、仕事が回らない状態だったという。

ヤマトの社員ドライバーは5年前から約4000人増えて、およそ6万人。しかし、荷物の増加に追いついているとは言いがたい。単純計算だが、この間、社員ドライバー1人当たりの宅急便の件数が年3000件以上増えているからだ。

会社も業務の効率化を目指し、近年は地域の主婦を2〜3時間だけパート社員として雇う「チーム集配」という方法に力を入れている。ドライバーと同乗させて、客先まで荷物を届けさせるのだ。

同社広報は「労働集約型の産業なので、人手が大切という認識は当然あります。ドライバーの増員も含めて、対策を検討しています」と話す。

●ユーザーはどうすべきなのか?

12月24日午前、記者宅のインターホンが鳴った。部屋の前にいたのは、ヤマト運輸の中年セールスドライバー。ネットの酒屋で注文した商品を届けてくれたのだ。

サインをしながら、恐る恐る尋ねてみる。「やはり、クリスマスは大変ですか?」。男性は苦笑いで答えた。「キャパ超えちゃってますね。特にAmazonは多過ぎ。仕分けが追いつかないですよ」。送料別のサイトで買ったものの、後ろめたい気持ちばかりが残った。

近所の営業所をのぞくと、大小さまざまな段ボールがうず高く積まれていた。慌ただしく出入りするスタッフ。「現代のサンタクロース」は忙しい。それも物凄く――。

今年はクリスマス期間中に、佐川急便に大規模な遅配が発生し、大きな話題になった。ネット通販で生活は飛躍的に便利になったが、運ぶのは「人」だ。宅配便の増加に、業界が耐えられなくなって来ている。

とはいえ、Amazonをはじめ、ネット通販の便利さを手離すことは難しい。Aさんに尋ねてみた。「利用者として最低限できることはなんでしょうか」。返って来た答えは、次のようなものだった。

「僕も『利用者』なんで、あんまり偉そうなことは言えません…。時間指定して、その時間必ず家にいてくれる、それだけでもだいぶ違います」

(弁護士ドットコムニュース)


毎回のように書いているけど、劣悪な条件で働かざるを得ないトラックドライバーに頼っている現状では、いつか物流というものが破たんすると思うんだけど…。 

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