うみにおふねをうかばせて

四十路 田舎嫁 あれやこれや。

旅の終わりに。

2020-06-26 14:47:00 | 日記
未だに、
髪と心までもしっかりケアしてくれる
ゴットハンドな美容師さんに出会っていない。

否、正確にいうと
この島で未だ出会っていない。

ゴットと認めたその彼女は
遠く離れた懐かしの場所で
今でも確かにハサミをふるっているのだけど、
私がその土地を離れてしまった今、
彼女に触れてもらうことが出来ない。

髪色がすっかり退化してしまった時、
毛先が末広がりに傷んできた時、
私は微かな苛立ちを感じて
そして少し傷ついたような気持ちにも
なる。

だからもうどうでもいいやと
半ば投げやり気味と
それでも少しの希望と共に、
島中の美容室を漂流している。

さて。

また髪が鬱陶しくなってきた。
根元の白髪も目立つ。
人前にでる仕事をしている故、
身なりは最低限整えておかなくてはならない。
私は重い腰をあげる。

早く髪を切れるようになりたいです。
(入店して暫くはまだカットできる
権利を与えてもらえないらしい)
その人に似合っている髪型を提案して
喜んでもらいたいんです。

前回、
カラーをお願いしたお店で
やたら元気よく接客していた
少し小生意気な印象を感じた
若い美容師の言葉をふと思い出す。

今回はそこに行ってみることにしよう。
近いうちにカットも任せてもらえそうだ
と言っていた事だし。

気分は
キャバなお店の御贔屓の女の子が
ある日突然辞めてしまっていて
え、そうなの?じゃあまあ、
前回ヘルプでついてた
新人のこの娘でいいや、とボーイに 
貰った名刺を渡すサラリーマンの気分だ。
(そんな気分だろ?私の中のおじさんよ)

とにかく。予約の電話をして、
指名は誰になさいますか?との問いに
前回カラーをお願いした方でお願いします。
と答える。

店に到着する。
いらっしゃいませ。お久しぶりです。
そう言われても目の前のその子が
あの新人さんなのか記憶が確かではない
私は曖昧な笑顔で勧められた席に座る。

しかし開始数分で、
その小生意気な喋り方で彼女だと確信した。

私は早速切り出す。
ねえ、前回言ったこと覚えてる?
今日はその為に来たんだと。
私はすっかりチャラいキャラで居直る。

彼女は嬉しそうにウンウンと頷く。
任せて下さいと請け負う。

私は彼女を軽く刺激する。
私には心を寄せた相手が居たことを。←笑
彼女を超える人を探す為に
島の美容室を漂流し始めて数年だと。

大丈夫です。
シュミレーション、出来ました。
彼女は私を上から下まで
じっくりと見ながら請け負う。

カットしたのは何人いるの?

気分はすっかり、
新人キャバ嬢を品定めしている
サラリーマンのそれのようだ。

うみさんが初めてです。

ほう、私の名前を覚えているのか。
(まあカルテを確認したら分かることだけど)
しかも苗字ではなく下の名前を呼ぶとは。
なかなかハイリスクハイリターンな技だ。
まあ。掴みとしてはバッチリだけど。
私の中のおじさんがニヤける。

しかし。キャバ嬢の初客なら
なんだかウキウキしそう(私論)だけど、
初めてのカット客はなんだか。
なんだか。な。大丈夫かな。

うみさんが予約の電話をしたとき、
指名が入ったならやってみるか?
って店長から許可が下りたんです。

ああ、それで。
さっきからチラチラとこちらを見ている
艶黒髪ロングな女性の存在に合点がいった。
あの方、店長ね。

彼女は相変わらず、
小生意気なマシンガントークを
炸裂させながら、
それとは反対に丁寧に施術をしていく。

丁寧だね。
なんだかそうされると嬉しくなる。

一応、感想を述べる。

多分、ね。出来上がりは、
私が想像した通りになると思うのだけど、
まあ、それはどうでもいいや。
髪の毛なんてすぐ伸びるし。
という心の声はそっと胸にしまう。

そうして、やはり。

出来上がりは、
若い子が似合いそうな、前髪パツンな
元気いっぱいのボブカットであった。
これは、
化粧の仕方を一新しないといけないかな。

ありがとうございました!

本日カットデビューのその子は
達成感満載の顔で送り出してくれた。

まあ、いいや。初客のよしみで
今度からこの子にお願いしようかな。
次は、カタログを見ながらディスカッション
したらいいや。マダムカットってやつ。

漂流は終わりにしよう。

私はその足で、
元気いっぱいのパッツン前髪に合わせる
べく、ハイパーにグリングリンに上がる
マスカラを求めに行った。