夢中人

sura@cosmic_a

狂言劇場その伍

2008年11月27日 | 狂言
野村萬斎様が芸術監督を務められている世田谷パブリックシアターに行ってまいりました。
 
場所は、三軒茶屋。
三茶ってどこにあったけ~?と思いながら調べてみると渋谷駅から二駅目。
しかも、駅を出てすぐに、世田谷パブリックシアターにたどり着いちゃうんですね。
いい感じの場所にあるんですねぇ。そうなんだぁと思って、会場にはいってみると、
目の前には、写真でみたことのある「三間四方」の舞台。そして、しめ縄。
ここにやってきたんだなぁと思って席に着き会場全体を見まわす。
そこで目に付いたのが天井。空が画かれてあった。
へ~天井に空の絵が描かれてあるんだぁ。それって意味があるんだよねえ。。。などと
感動しつつ、いろんなことを思う。
で、この空間って・・・と思った時間があるんですよ。
それは、笛と太鼓の演奏があったんですけど、その演奏を聴いていたら、
「陰陽師2」で清明と博正が天岩戸に行く場面が浮かんできて、映画を観ている時はピンとこなかったけど、
笛は風で太鼓は時間だと感じたんですよ。
笛と太鼓が演奏される場所は、あの世とこの世の堺目なんですね。
笛の風と太鼓の時間で、時空を乱して、あの世とこの世の境目をつくっているんだと感じました。
映画の中では太鼓はなかったけど、だからあの場面で笛を吹いたんだぁと思ってしまった。
その笛と太鼓の生演奏を聴きながら、目の前の舞台上にあるしめ縄と会場の天井に画かれている
「空」が妙に気になりながら、なんていうんですか。。。こう。。。「ほっとけない空間」がそこにありました。
笛と太鼓のちゃんとした生演奏って初めて聴いたけど、よかったように思えます。


狂言ですが、「「苞山伏」「磁石」「彦市ばなし」を観ました。
この3つの狂言のテーマは「嘘」。
「嘘」によって物語が展開していくんです。
そして、この狂言を観終わった後に、自分なりのこの3つの狂言のキーワードをみつけました。
それは「道具」です。
「彦市ばなし」では隠れ蓑という道具が使われていました。
そして、「苞山伏」と「磁石」では、「嘘」というものが「おろかな刃」という道具となり、
また、自分を守る「盾」にもなるものだと教えてくれました。
嘘はついてはいけないけど、でも「盾」として使わなければいけない場合もあるんです。
「磁石」では、田舎者が旅の途中にたまたまであった詐欺師達に売り飛ばされそうになるんですよ。
それで、その気配に気が付いた田舎者は、逃げ出るんですが、
詐欺師が田舎者を追いかけて、追いついて刀で田舎者を切ろうとするんです。
その時に、田舎者はとっさに口を大きく開けて「私は磁石の精で、刀がのみたい」と嘘をいうんです。
それを見ていったいなんだと詐欺師はあっけにとられるんです。
この場面を観た時に、以前DVDで見た「ホテルルワンダ」を思い出しました。
ホテルルワンダの主人公の支配人は自分がかくまった人たちの命を守るために嘘をつくんです。
そこで争っている兵隊達に「このホテルを守った人には、会社が報酬をだすといっている」とか、
「ここで起こることはアメリカがスパイ衛星で見張っている」などの嘘をいうんです。
そして、この嘘を「盾」という道具にして彼は大勢の人の命を守ったんです。
嘘という言葉の道具を使ったんです。
これは、この田舎者も同じだと思います。

「彦市ばなし」は、自称「ウソつきの名人」彦市が、ただの釣竿を望遠鏡と偽って、
天狗の子から隠れ蓑をうばっちゃうんですよ。
たまたま出会ってしまった二人。
彦市が天狗の子から奪った隠れ蓑は、それを肩にかけると透明人間になっちゃうんです。
彦市は、その隠れ蓑を使って、お酒をたくさんただ呑みしようなどと自分の欲望を満たそうと考えるわけです。
この、彦市の考えは、私的にはせめられません。
だって、私だって隠れ蓑が手に入ったら、飛行機や電車などにそっと乗って、
あっちこっちに行きたいかもぐらいの考えはでてきます。
あの隠れ蓑を普通の人間が手にした場合、それを正しく使える人もそうそういないんじゃないかな。
隠れ蓑という「道具」は、人間の許容範囲外の力があるわけですよ。
日頃想像していたあれやこれやをやってしまおうとろくでもないことに使ってしまうのが普通の人間かもしれませんね。
あの隠れ蓑を天狗がどのように使っているかはわかりませんが、
天狗が使ってこそ隠れ蓑の力が発揮できるのではないのでしょうか。

私がこの話と重ねあわせたのが「薬」です。
たとえば、薬の中で麻薬系は病院で取り扱う場合はプラスに作用するんですよ。
病院には、傷みを抱える人がいて、それは、他人にはわからない想像を絶する痛みかもしれなくて
そんな時、麻薬系の薬がその痛みを抑えてくれるんです。
そんな薬を自分の欲望を満たすためや遊び感覚で使うパターンがあるみたいですね。
それはマイナスの作用だと思います。
また、睡眠薬も悪戯に使うパターンもあるみたいですね。

その「道具」というのは、正しく使える人の手元にあってこそその力を発揮できる物なんだと思います。
それで、ちょっと思ったんですけど、あの隠れ蓑を殿様が手にしていたらどうなっていたんだろうって。
私の想像は、殿様というのは、ある意味、天狗と近いような力があるわけですよ。
隠れ蓑を手にして、透明人間になったとしばらくは珍しがっているかもしれないけど、
殿様には、ある程度の物はあるし、ちょっとお願いすればなんでもかなえられる状況にあるはずです。
だから、隠れ蓑を持っていても、持っていなくてもだいたい同じような状況じゃないかな。
だから、殿様は、すぐに隠れ蓑にあきちゃって返しちゃうと思うんです。
彦市と天狗の子と殿様。
それぞれに環境がまったく違う3人。ここに私は「国」を感じました。
そしてそこに浮かんだ道具は「核兵器」です。
核兵器を持つ国それぞれに、核兵器を持つことの意味があって、それは意味が違うのではないのでしょうか。
ムム~。。。自分でもすごいところにたどり着いたなと思いました。
でもだよ、「核兵器」を「嘘」として当てはめた場合どういう風になるかな。。。ちょっと考えてみたい。

今回テーマになっていた「嘘」。
この「嘘」ってもっと深そうな気がする。
「嘘」って人間が持っている道具の一つですよ。
嘘をついてはいけない。でも嘘をつかなければいけない場合もある。
でもそれは「盾」として使う場合だ。
人をだまし、なにかを奪い取るような「おろかな刃」としての嘘はいけない。
嘘ってさぁ、結局は言葉なんだよね。
言葉って・・・
もう少し掘り下げてみよう。
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