ヤスの雑草日記(ヤスの創る癒しの場)

私の人生の総括集です。みなさんと共有出来ることがあれば幸いです。

論理的思考の重要性について

2008-12-10 23:50:02 | Weblog
 論理というと何かしら堅苦しいイメージをともなうもののようで、昨今の風潮では、論理とは程遠い、感性に訴える方法論による思考形体が好まれる。別の言い方では、論理的思考を柱にしたカルチャーに対抗し得る価値意識として、感性的思考を柱にしたサブ・カルチャーという二元論が世の中を席巻している。とりわけ後者のサブ・カルチャーとしてのマンガブームなどは、オタクと呼ばれるある種の偏狭な趣味に固執する人々によって、論理を超える実体として、それが、世界を捉えるツールであるかのごとき認識がなされているように思われる。しかし、このようなカルチャーとサブ・カルチャーという二元論そのものがすでに使い古された思想的な枠組みであるとも言える。        
政治というカルチャーの領域における最重要ポストに就いた麻生首相がサブ・カルチャーの理解者気どりで、秋葉原のオタクたちが傾注するマンガ愛好者として登場してきたのは、いかにも時代を象徴するかのような出来事ではあった。カルチャーという領域に含まれる重要な要素としての政治の担い手が、カルチャーの領域である論理力を要求されるいくつかの演説の場で、まともに漢字も読めないことが判明して以来、おそらくはサブ・カルチャーという存在価値そのものまでも著しく損ねたのは見逃せない事実であろう。サブ・カルチャーの旗手ともいえるテレビのバラエティ番組における漢字ブームは、麻生首相に犯されたサブ・カルチャーの側からの、カルチャーが有する論理力の重要なファクターとしての、日本語という言語の、漢字に対する博識を争う番組の流行という形をとって、強烈な巻き返しを行っているようにみえる。
 しかし、よく考えてみれば、このような傾向が言い表している現実とは、正確には、かつて、旧来の価値を形づくっていたカルチャーと、カウンター・カルチャーとしてのサブ・カルチャーという二元論よる社会分析そのものが、そもそもかなり表層的な価値意識の分類の方法論に過ぎなかったのではないか、と思われる。このような二元論が、旧価値を破壊し、新たな価値観の生成を感じさせるだけの力をもっていたのは否定出来ない事実であろう。しかし、前記したように、このような視点そのものが、簡便なる二元論に過ぎなかったという事実は、麻生首相の出現によって、明らかにカルチャーとしての政治が貶められ、同時に、サブ・カルチャーという反権威性の化けの皮まで剥がされてしまったのは皮肉な現象である。このような現象から何が読み取れるのか?
 それは、旧価値であるという論理を反転させ得る、新たな価値たるサブ・カルチャーにも確固とした論理が不可欠であった、ということではなかろうか。それが一国の首相たる人間の論理力の欠如という破廉恥な事実の露呈によって、新旧の両価値観の位相の違いがかえって曖昧になったということではないか、と思われるのである。つまりは、カルチャーに対するサブ・カルチャーにも、カルチャーを底支えしている論理力なくしては成立不能であることが証明されたことに他ならない。麻生太郎とは、論理力を持たない政治家というピエロ役を演じたと同時に、自称マンガ愛好家というおふれによって、サブ・カルチャーの持ち得る論理力の意味を理解し得ない、破壊役としての、一人二役を演じて見せた存在である。
 いまや麻生首相及び麻生内閣の支持率は最低迷を続けている。彼と彼が組閣した内閣への信頼感が急速に下落したのは、麻生太郎という一国の指導者の無策ぶりもさることながら、彼が漢字すらまともに読めない大金持ちで下品な、ただのおっさんに過ぎない、という幻滅が政治に対する監視の必要性を庶民に抱かせたのは、予期せぬ麻生効果というべき現象である。
 政治が言葉による政策とその実践によって成立する存在として、その言葉を紡ぎ出している根底にあるファクターとは、一言で言うと、論理力である。人は蓄積した知識を統合する論理力によって、新たな思想を編みあげる才能に溢れた存在である。その才がカルチャーという領域で発揮されようと、カウンター・カルチャーという領域で発揮されようと、そのようなことはとるに足らない要素である。この頽落した21世紀に、一条の光なりとも投げかけられる可能性が残っているとするなら、その可能性を支える中軸は、あくまで論理力でしかない、と僕は確信する。この時代だからこそ、敢えて無骨に、論理力の不可欠な存在理由について書き遺す。今日の観想である。

○推薦図書「論文の書き方」清水幾太郎著。岩波新書。論文の書き方についての基本的な考察と具体的な指導書として読んでいただきたいのですが、「いかに書くか」は「いかに考えるか」を離れては存立し得ないものです。論理力の必要性をこれほど分かりやすく、しかも硬質な筆致で書かれた入門書は数少ないでしょう。お勧めの書です。ぜひ、どうぞ。

京都カウンセリングルーム(http://www.medianetjapan.com/2/17/lifestyle/counselor/)
Tel/Fax 075-253-3848 E-mail yas-nagano713@nifty.com

ヤスの創る癒しの場 (メルマガ)
http://merumaga.yahoo.co.jp/Detail/15970/p/1/