本日、建交労長崎県本部の組合員4人が国を相手にたたかっていた、「じん肺遺族補償不支給取消訴訟」の判決が長崎地方裁判所にて言い渡されました。 判決は、長崎労働基準監督署長が決定した遺族補償給付と葬祭料の不支給について取り消すというもので、裁判所が正当な判断を示しました。 本判決を受けて、原告団・弁護団と建交労長崎県本部が連名で声明を出しました。声明は以下の内容となっています。
6月21日長崎地方裁判所民事部合議B係の判決を受けての声明
長崎間質性肺炎労災事件原告団・弁護団
全日本建設交運一般労働組合長崎県本部
2021年(令和3年)6月21日、長崎地方裁判所民事部合議B係(天川博義裁判長裁判官)は、じん肺に罹患してじん肺が悪化したことにより死亡した4人の被災者に、じん肺罹患と死亡との因果関係を認める判断を示した。被告国が主張する、極めてまれな難病(特発性非特異性間質性肺炎)罹患の主張を退ける正当な判断であり、原告団・弁護団及び被災者らの支援を行う建交労長崎県本部としても、裁判所が正当な判断を示したことを評価する。
そもそも本件原告らの配偶者であった被災者らは、炭鉱や造船現場、自動車整備工場など、紛れもない粉じん職場で約30年間稼働しており、職場で発生する石炭粉じん、石綿粉じん等に長期間ばく露してきた。その事実に争いはない。被災者らは、粉じん職場に稼働している最中等に胸部に異常陰影を生じさせ、あるいは咳や痰、呼吸困難などの臨床症状もあり、じん肺管理区分決定を受け、その後、合併症にも罹患して労災認定まで受けていた。その被災者らが、肺の線維化の進行によって呼吸困難となり死亡したため、残された遺族らがそれぞれ労災補償を得るべく労災認定を求めたところ、長崎労働基準監督署長は、これらを否定した。否定した理由は、被災者らの肺にじん肺とは別に特発性間質性肺炎(特発性非特異性間質性肺炎)が発生し、呼吸困難を生じさせているのはじん肺ではなく、こちらの難病である旨主張したのである。これ(特発性非特異性間質性肺炎:NSIP)は10万人に数人がり患する程度の極めて稀な疾患である(発症率10万人に2人、有病率同10人程度)。被告国もこの数値は争わない。ところが、被告国は、被災者4名のCT画像がNSIPのように見えるというだけのことから、全員がもっぱら、ないしじん肺とともに、この奇病に罹患し死亡したと主張するのであって、たんなる机上の空論の域を出ない主張を繰り返した。
今般、長崎地方裁判所は、炭鉱等で働いた労働者の胸部に高頻度で間質性肺炎様陰影が生じうるという原告側医師意見書や医学文献を正しく評価し、被災者らの肺の線維化の悪化がじん肺の病気の進行であると正当に判断をした。その上で、これらの疾患による死亡の有力原因が職業性の粉じんばく露であるじん肺であるため、被災者らの死亡と被災者らの粉じんばく露には因果関係が認められるとして、労災を認定した。
このような被災者らの労災認定は、過日最高裁で国の責任が確定し、救済のための法律も成立した建設労働者やその他のアスベスト関連疾患に罹患した被災者が正当に救済されることの一助ともなりうるため、本件被災者らにとどまらず、多くの被災者救済につながることとなると高く評価する。
私たちは、国に対し、本判決の意義を重く受け止め、控訴せず本判決を確定させることを求める。