建交労長崎県本部

全日本建設交運一般労働組合(略称:建交労)長崎県本部のブログです。
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トラック運転手における職能別賃金の考え方~建交労トラック政策⑥

2017年06月29日 09時42分01秒 | トラック政策

建交労がトラック運転手の賃金政策を出すにあたり、根拠となるのは、職能別賃金制度のあり方です。通常賃金は、企業の支払い能力によって決められています。支払い能力の最低が最低賃金法によって定められているほかには、賃金支払いの決まった法則はありません。しかし、職能別賃金制は、過去の日本の歴史、諸外国の一般通念、さらに最低賃金法による地方別業種別最低賃金など、その考え方は労使交渉でも取り入れられてきました。

今でもありますが、集団交渉を行なっている産別では、その産別の基幹的(代表職種)な労働者の賃金水準の平準化に取組まれてきました。これらは、全労連、連合を問わず、この職種で一定の経験を積んだ労働者の賃金水準を決めるもので、各労組はそれに向かって賃金闘争の組み立てを行なっています。最低水準、標準水準、到達水準などを設定し、これに見合った賃金カーブを描きだしています。

こうした考え方に対し、経営者側は個別の企業別支払い水準の設定、の声を大きくしています。つまり、職能別賃金のあり方は労使の対決軸の一つであり、労働組合の賃金闘争の幹をなすものと言えます。

さらに、最低賃金法による特定最低賃金の現状をみると、現行の最低賃金制度の下で、地域ごとの業種別最低賃金が決められており、47都道府県には、延べ242種の業種別最低賃金が定められています。このなかで多いのが『各種商品小売業』で、24都府県で定められており、『自動車(地域により「新車」)小売業』が20府県で定められるなどしています。

建交労トラック部会では、トラック労働者の賃金目標を明確にするとともに、全国一律特定最低賃金の設定を運動化しています。こうした特定最低賃金の設定に積極的に運動している産別労組は少なくありません。


木村草太教授講演会「テレビが伝えない憲法のはなし」

2017年06月28日 09時34分02秒 | 行事案内

長崎県保険医協会の第40回定期総会にあわせて開催される、市民公開記念講演で、首都大学東京都市教養学部教授の木村草太先生(憲法学)が「テレビが伝えない憲法のはなし」と題して講演されます。

日時:7月22日(土)17:30~19:00

会場:ザ・ホテル長崎3階プレミアホール(入場無料)

問い合わせ先:長崎県保険医協会 TEL 095-825-3829


生計費原則に基づいた賃金のありかた~建交労のトラック政策⑤

2017年06月27日 09時08分18秒 | トラック政策

各地方労連では、生計費原則にもとついた最低賃金や年代別賃金水準を検討するため、生計費調査を行ない、そのデータに基づいて2011年に全労連は標準生計費の試算を行ないました。

それによれば、30代夫婦子1人の世帯における年収は522万円と試算し、40代夫婦子2人では年収676万円、50代夫婦未婚子2人では年収900万円が必要と試算されました。

トラック運転手で年収500万を考えた場合、年間一時金が占める年収比率を大幅に改善させなければなりません。2012年における普通・小型、大型運転手ともに年間一時金額は24万円前後(賃金センサス調査)となっています。月収ベースで0.8ヶ月に満たない年間一時金の支給水準では、年収の大幅引上げは困難であり、少なくとも基準内月収べ一スで3ヶ月の年間一時金への到達が必要であると思われます。年間一時金の安定は、経営の安定が前提といえ、経営の安定なくして、500万の到達も困難を極めてしまうことになります。

年間一時金を3ヶ月とした場合、月例賃金は500万÷14.4月≒35万(34.7万)となります。全国トラック部会では、18才最低賃金及び年齢別の最低保障賃金要求(家族手当・通勤手当を除く所定内賃金)として、18才177,500円、30才235,000円、45才365,000円を統一要求基準に掲げています。さらに40~45歳の基幹労働者の最低保障賃金要求(運送業での運転手、10~15年勤続・扶養3名の家族手当を含む所定内賃金)を385,000円としています。

つまり、統一要求基準として掲げている年齢別賃金等の要求根拠を明らかにすることが、建交労トラック部会のめざすべき賃金に近づくことになるわけです。


トラック運転手・低賃金の打開の方向と課題~建交労のトラック政策④

2017年06月26日 09時27分18秒 | トラック政策

(1)賃金制度の確立のために一求められる賃金体系

「トラック労働者なら誰でも年収500万円」をめざすためには、「安全・安心」なトラック運送を担保する「労働時間短縮」と、誰にでも判りやすい賃金体系を確立することが必要な課題です。

私たちは全産業並みの賃金水準と生計費原則にもとついた賃金体系のあり方を目標にしています。国土交通省の試算では「平成27年(2015年)には約14万人のトラック運転者が不足する」と予測してきましたが、それが現実化している現在、複雑で判りにくい賃金体系を簡素化し、それらを必ず全従業員に明示し、賃金の透明性を図ることがなければ、業界そのものの信頼性は失われることになります。ブラック企業からホワイト企業へ、業界全体が襟を正すことによってこそ、適正な運賃収受の道が開けてくるはずです。

 

(2)賃金体系がもつ機能と改善方向

①賃金体系の留意点

賃金体系は、賃金率の決め方(例えば基本給、出勤給の額・レートなど)と支払方法・形態(時間決めか、出来高・歩合か)がかたく結びついています。"ブラック企業"の定義には、時間外賃金の正当な支給がなされているかに、大きな要素があります。このことを考えた場合、「出来高賃金」の導入は限りなく抑え、また「歩合賃金」の率をできるかぎり低く抑えることが重要となります。

②賃金構成と基本給について

通常、賃金体系は、基本給、職能給、能率給(稼働給・出来高給)、家族手当、住宅手当など、いくつかの賃金項目によって構成されています。

貨物運送業においては、所定内賃金における基本給の占める割合が、他産業と比べは極端に低くなっているのが特徴です。

この基本給は、年齢、勤続などの属人的要素(個人的条件)、仕事に関係する職務、職種的な要素で構成されています。年齢・勤続・職能給が独立した賃金項目になっていたとしても、これらを全部包括して基本給として位置づけることです。基本給が賃金構成の中心部分である以上、基本給の構成要素、賃金率の決定基準を明確にしておくことが重要です。

③職能給について

職能給は職能資格制度を設定し、資格や勤務上の取りまとめなど責務の大きさによって「昇給昇格」するものです。職能給の昇給昇格が、能力・成績の考課によるものとして、企業の一方的な人事考課だけでなく、全従業員に納得できる内容とすることが、トラック産業の近代化や透明性を高めることになります。これまで、トラック運転手には、車種別の手当だけが主流でしたが、トラック産業の近代化、組織性の向上をめざした場合、経験年数等による職責による職能給制度を導入することも必要になるはずです。

④固定給と変動給

トラック、タクシーなどのように、能率給(歩合給など)の賃金形態がとられ、それが賃金構成のうえで一定の比重を占めるようになると、固定給部門と変動給部門の区分が使われています。

固定給とは、定額賃金(時間賃金)=基本給、職能、職種給など、それに家族手当、住宅手当などの生活補助給、その他を含めたものです。変動給は、能率・歩合給と残業・休日出勤などの時間外労働の割増賃金を含めたものを指しています。つまり、出来高の具合、残業の有無・長短の程度で賃金額が変動するから、変動給というのです。

固定給、変動給の区分は、経営者の立場からすれば、労務コストの計算、収益などの計画のうえでも大事な経営指標ではありますが、労働組合の立場からは、時間外労働の割増賃金を含めて賃金水準を計ることになり、感心できません。

しかし、現実に歩合給部分が賃金構成のうえで、一定または相当部分を占め、時間外労働の割増賃金部分にも依存する状態では、現在の賃金総額で固定給部門の比重を高め、変動部分を縮小させる一指標として活用する必要はあります。


トラック業界の賃金体系の特徴と問題点~建交労のトラック政策③

2017年06月25日 09時21分00秒 | トラック政策

(1)賃金体系の特徴

トラック運輸産業の賃金体系の特徴は、所定外賃金の比率が運転者で見ると50%~60%と高くなっていて、中でも歩合給の比率が高いことです。

トラック運輸産業の賃金体系は固定給よりも変動給の割合が高く、変動給の内訳で見ても歩合給の占める割合が高いこと、特に大型運転手の変動給比率が高く、時間外手当の支給よりも歩合給による支給の額が高くなっていることです。

 

(2)低賃金構造の原因と問題点=固定給が少ない賃金体系、世間の半分の一時金、運賃問題など=

①賃金体系上の問題点

i.固定給の低さと歩合給の拡大

基幹職種である運転者の賃金は、約半分が歩合給や時間外手当などで占められています。さらには個人請負などという違法な雇用形態も導入され、完全歩合制や個人償却制のところも増加傾向にあります。

完全歩合制(個人償却制)の特徴は、労働時間と賃金が連動していないことです。そのため、時間外労働賃金の計算が成り立たず、時間外労働割増賃金(残業代)が支払われないところも多くみられます。また、こうした企業では、社会保険に未加入という問題も含んでいます。

ⅱ.歩合給の中身

変動給のうち約5割から6割が歩合給で構成されています。その歩合給の支給方法は、売上げ(運賃)に対して支給する運賃歩合が主流になっています。

ⅲ.年齢別に見る水準

月例所定内賃金を道路貨物(トラック)と全産業、製造業の比較でみると、29歳以下の年齢層では道路貨物がいずれも高く、30歳~34歳を境にその後の年齢層では逆に低くなります。24歳までのトラック運輸産業の賃金は、全産業・製造業と比較しても高い位置にありますが、45才~49才までの賃金は全産業・製造業は2倍に増加していている一方、トラック運輸業では1.45倍に過ぎません。またトラック運輸産業の年間一時金は、若年層の水準が高いという特徴がなく、他産業と比較してすべての年齢層で約半分の水準にしかなりません。従って、年齢が進むにつれて格差が拡大しています。これでは将来安定して働くための賃金体系とは言えません。同時に60歳以降も年金制度の改悪により、年金の未支給期間があり、60歳以降の再雇用における賃金も問題があり、生活がなりたたないのが現状です。年金が満額支給されるまでの安心して暮らせる賃金体系が必要です。

②一時金の低さについて

トラック運輸産業での年間一時金は、全産業の半分以下の水準にあり、改善する気配がないどころか一時金の支給を無くした企業も増えています。一時金の支給基準は、他産業が(本給×月数)が基本となるのに対し、トラック運輸産業では本給そのものが低いことも要因となって基準のない金額設定が多くあり、他産業からみれば"どんぶり勘定"となっている企業が多いのです。

③産業構造の特徴からくる原因

最大の問題は運賃(物流費)問題です。トラックは90年の「規制緩和」により、事実上の運賃の自由化となりました。新規参入も容易(免許制から許可制へ、保有台数5台)になり、保有台数が20台未満の企業が圧倒的な比率を占めています。企業の零細化により運賃ダンピングによる過当競争が激化し、荷主からの値下げ強要にも対応しきれないのです。さらに、重層的下請け構造による下請イジメが横行し、トラック運輸産業の秩序も破壊されているわけです。

④違法性の疑いの強い控除一「事故」に対するペナルティ

運転者が事故を起こした(事故にあった)場合に修理費等の名目で労働者の賃金から控除するという問題も増えています。さらに、積み荷の「商品事故」に対する弁償金も運転手に課せられることも広がっています。何の定めもなく賃金からの一方的な控除する行為は、法違反(労基法第24条違反)となります。しかし、こうしたペナルティーを受け入れざるを得ない労働者の弱い立場が広がっています。