発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

うつ病・双極性障害の動物モデル

2017-05-13 06:59:38 | 双極性障害
以前、加藤忠史先生の著書「双極性障害の人の気持ちを考える本」を読んで、双極性障害はミトコンドリア障害と関連がある、ということを知りました。
以下の記事を読むと、動物モデルが開発されてその後の研究も着々と進んでいる様子。

■ 「自発的なうつ状態を繰り返す初めてのモデルマウス
(2015年10月20日 理化学研究所)
<背景>
 日本でうつ病や躁うつ病により治療を受けている人は約100万人に上り、日本人の健康寿命を奪う主な疾患の1つとなっています(厚生労働省による2011年患者調査)。抗うつ薬や気分安定薬などによる治療が行われていますが、すべての人に有効とはいえず、副作用もあることから、新たな薬の開発が期待されています。しかし、半世紀にわたる研究でも、その原因は完全には解明されておらず、画期的な新薬の開発は成功していません。抗うつ薬の創薬研究がもっぱらストレスによる動物の行動変化を指標に行われてきたことが、同分野での創薬がうまく進まなかった理由の1つと考えられています。
 精神疾患動態研究チームは、ミトコンドリア病という遺伝病の1つである「慢性進行性外眼筋麻痺」が、しばしばうつ病や躁うつ病を伴うことに着目し、その原因遺伝子の変異が神経のみで働くモデルマウスを作成しました。そして、このマウスが、日内リズムの異常や性周期に伴った顕著な行動量の変化などを示すことを2006年に報告しました。この研究の過程で、このモデルマウスが、2週間ほど、輪回し行動をあまりしなくなる時があることに気づきました。
<研究手法と成果>
 この活動低下の状態は、モデルマウスでは平均すると半年に1回の頻度で出現し、中には半年に複数回繰り返す個体も見られました。今回、共同研究グループは、このモデルマウスが活動低下状態にある時の行動を詳しく解析しました。その結果、興味喪失、睡眠障害、食欲の変化、動作が緩慢になる、疲れやすいといった症状、および社会行動の障害を示し、精神疾患の診断基準であるDSM-5[5]のうつ状態の基準に合致することが分かりました。また、この状態は、抗うつ薬治療により減少し、気分安定薬であるリチウム投与を中止すると増加するなど、うつ病や躁うつ病のうつ状態と同様の治療薬に対する反応を示しました。さらに、この状態の間には、副腎皮質ホルモンの増加など、うつ病患者と同様の生理学的変化が見られました。
 次に、この活動低下の原因となる脳部位を調べるため、異常なミトコンドリアDNAが多く蓄積している脳部位を探索しました。その結果、視床室傍核という、これまでうつ病との関連が知られていなかった脳部位に著しく蓄積していることが分かりました。同じようなミトコンドリア機能障害は、うつ症状を示すミトコンドリア病の患者の脳の視床室傍部でも見られました。
 続いて、この部位がうつ状態の原因かどうかを明らかにするため、正常なマウスの神経回路を人為的に操作して解析しました。その結果、視床室傍核の神経細胞の神経伝達を遮断することにより、モデルマウスによく似た活動低下状態が現われました。この結果は、モデルマウスのうつ状態が、視床室傍核の病変により生じていることを示しています。
<今後の期待>
このモデルマウスは、自発的で反復性のうつ状態を示すモデルマウスとしては初めてのものです。このモデルマウスを用いることにより、これまでとは全く作用メカニズムの異なる抗うつ薬や気分安定薬の開発が可能になると期待できます。また、もし、うつ病や躁うつ病の一部が、視床室傍核の病変によって起きることが分かれば、これらの病気をこころの症状ではなく、脳の病変により定義することができると考えられます。更に、精神疾患を脳の病として理解する道が開け、脳の病変に基づく診断法の開発につながる可能性もあります。



★ 「Medical Note」より
国立研究開発法人理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長:加藤 忠史先生
双極性障害(躁うつ病)を生物学的精神医学からみる
双極性障害(躁うつ病)とミトコンドリアの関係
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