病の起源:第3集「うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」
<解説>
人類が苦しむ病気を、進化の観点から追求する「病の起源」。シリーズ第3集は、働き盛りを襲い自殺に追い込むなど、深刻な社会問題になっている「うつ病」。世界の患者数は3億5千万人に達し、日本でもこの10年あまりで2倍に急増している。なぜ、私たちはうつ病になるのか?その秘密は、意外にも5億2千万年前に誕生した魚の研究から明らかになってきた。魚でもある条件を作ると、天敵から身を守るために備わった脳の「扁桃(へんとう)体」が暴走し、うつ状態になることが分かってきたのだ。さらに2億2千万年前に誕生した哺乳類は、扁桃体を暴走させる新たな要因を生みだしていた。群れを作り外敵から身を守る社会性を発達させたことが、孤独には弱くなりうつ病になりやすくなっていたのだ。そして700万年前に人類が誕生。脳を進化させたことで高度な知性が生まれ、文明社会への道を切り開いてきた。しかしこの繁栄は、皮肉にも人類がうつ病になる引き金を引いていた。文明社会によって社会が複雑化し、人間関係が一変したことが、扁桃体を暴走させ始めたのだ。
番組では、研究の最前線で明らかにされてきたうつ病の秘密に迫り、そして進化を手掛かりにして生まれた新たな治療法を紹介。人類の進化がもたらした光と影を浮き彫りにしていく。
ヒトの脳の深部に扁桃体という部位がある。
恐怖・不安・悲しみなどをつかさどり、うつ病患者では活動が上昇しているという。
節足動物全盛時代の5億年前に魚類が登場した。進化の過程上で魚類に注目すべきは「脳」の発生である。同時に扁桃体という天敵を察知しストレスホルモンを分泌することにより逃避行動を起こす器官も発達した。
この扁桃体が、うつ病を起こす起源となる。
一過性の逃避行動で済むならよいが、魚を天敵とともに同じ水槽に1ヶ月飼育する実験では、最初は逃げ回っていた魚があるときから動きを止めてしまうことがわかった。その際のストレスホルモン量が増加していることが判明した。
過剰なストレスホルモンに脳がさらされると、神経細胞が栄養不足となり、ダメージを受けて脳が萎縮し、意欲減退を引き起こす。
魚は「うつ病」になったのだ。
進化の過程で、扁桃体を過剰に活性させる要因が番組の中で示された。
1.天敵:上記の通り
2.記憶:恐怖体験の記憶
3.孤独:ヒトは孤独になると扁桃体が暴走する傾向がある
4.言葉:恐怖体験の伝達
これらを抑制する役割を担ったのが「平等」である。
狩猟採集時代は、一人では生きていけなかった。共同生活を営み、助け合い、獲物は平等に分配された。
現在でも狩猟生活をしているアフリカの部族にはうつ病が存在しない。
しかし、農業で生計を立てる文明社会に時代になると、貧富の差が出てきた。平等社会の崩壊である。
その延長線上に我々の生活がある。
最近の研究によると、仕事の内容がうつ病になりやすさに関係していると報告された。自分で判断できる技術職では少なく、上司から命令されて自分の最良がない営業職では多かった。
また、自分が損をした時だけではなく、得をした時も扁桃体の活動は活発になってしまうという意外なデータも紹介された。
「平等」が重要なのだ。
人類は現代社会の中でうつ病に対抗する手段を持てるのだろうか?
今の世界を見回すと、憎しみがはびこっているように見えるが・・・。
取り組みとしてTLCとDBSが紹介された。
■ TLC(Therapeutic Lifestyle Change)
その内容は、
1.日の出とともに起きる。
2.日中、身体を動かす。
3.陽の光を浴びて汗を流す。
4.共同体の中で暮らす。
5.助け合う文化を大切にする。
6.夜はぐっすり眠る。
つまり、狩猟時代の生活のエッセンスを取り入れるということ。
これが「人間らしい生活」なのだろう。
■ DBS(Deep Brain Stimulation)脳深部刺激療法
※ 参考文献:うつ病に対する脳深部刺激療法の 臨床評価と精神病理 ─“悲哀”を巡って─
齊尾 武郎 1) 栗原千絵子 2) 1)フジ虎ノ門健康増進センター 2)␣放射線医学総合研究所(Clin Eval 36(1)2008)
<解説>
人類が苦しむ病気を、進化の観点から追求する「病の起源」。シリーズ第3集は、働き盛りを襲い自殺に追い込むなど、深刻な社会問題になっている「うつ病」。世界の患者数は3億5千万人に達し、日本でもこの10年あまりで2倍に急増している。なぜ、私たちはうつ病になるのか?その秘密は、意外にも5億2千万年前に誕生した魚の研究から明らかになってきた。魚でもある条件を作ると、天敵から身を守るために備わった脳の「扁桃(へんとう)体」が暴走し、うつ状態になることが分かってきたのだ。さらに2億2千万年前に誕生した哺乳類は、扁桃体を暴走させる新たな要因を生みだしていた。群れを作り外敵から身を守る社会性を発達させたことが、孤独には弱くなりうつ病になりやすくなっていたのだ。そして700万年前に人類が誕生。脳を進化させたことで高度な知性が生まれ、文明社会への道を切り開いてきた。しかしこの繁栄は、皮肉にも人類がうつ病になる引き金を引いていた。文明社会によって社会が複雑化し、人間関係が一変したことが、扁桃体を暴走させ始めたのだ。
番組では、研究の最前線で明らかにされてきたうつ病の秘密に迫り、そして進化を手掛かりにして生まれた新たな治療法を紹介。人類の進化がもたらした光と影を浮き彫りにしていく。
ヒトの脳の深部に扁桃体という部位がある。
恐怖・不安・悲しみなどをつかさどり、うつ病患者では活動が上昇しているという。
節足動物全盛時代の5億年前に魚類が登場した。進化の過程上で魚類に注目すべきは「脳」の発生である。同時に扁桃体という天敵を察知しストレスホルモンを分泌することにより逃避行動を起こす器官も発達した。
この扁桃体が、うつ病を起こす起源となる。
一過性の逃避行動で済むならよいが、魚を天敵とともに同じ水槽に1ヶ月飼育する実験では、最初は逃げ回っていた魚があるときから動きを止めてしまうことがわかった。その際のストレスホルモン量が増加していることが判明した。
過剰なストレスホルモンに脳がさらされると、神経細胞が栄養不足となり、ダメージを受けて脳が萎縮し、意欲減退を引き起こす。
魚は「うつ病」になったのだ。
進化の過程で、扁桃体を過剰に活性させる要因が番組の中で示された。
1.天敵:上記の通り
2.記憶:恐怖体験の記憶
3.孤独:ヒトは孤独になると扁桃体が暴走する傾向がある
4.言葉:恐怖体験の伝達
これらを抑制する役割を担ったのが「平等」である。
狩猟採集時代は、一人では生きていけなかった。共同生活を営み、助け合い、獲物は平等に分配された。
現在でも狩猟生活をしているアフリカの部族にはうつ病が存在しない。
しかし、農業で生計を立てる文明社会に時代になると、貧富の差が出てきた。平等社会の崩壊である。
その延長線上に我々の生活がある。
最近の研究によると、仕事の内容がうつ病になりやすさに関係していると報告された。自分で判断できる技術職では少なく、上司から命令されて自分の最良がない営業職では多かった。
また、自分が損をした時だけではなく、得をした時も扁桃体の活動は活発になってしまうという意外なデータも紹介された。
「平等」が重要なのだ。
人類は現代社会の中でうつ病に対抗する手段を持てるのだろうか?
今の世界を見回すと、憎しみがはびこっているように見えるが・・・。
取り組みとしてTLCとDBSが紹介された。
■ TLC(Therapeutic Lifestyle Change)
その内容は、
1.日の出とともに起きる。
2.日中、身体を動かす。
3.陽の光を浴びて汗を流す。
4.共同体の中で暮らす。
5.助け合う文化を大切にする。
6.夜はぐっすり眠る。
つまり、狩猟時代の生活のエッセンスを取り入れるということ。
これが「人間らしい生活」なのだろう。
■ DBS(Deep Brain Stimulation)脳深部刺激療法
※ 参考文献:うつ病に対する脳深部刺激療法の 臨床評価と精神病理 ─“悲哀”を巡って─
齊尾 武郎 1) 栗原千絵子 2) 1)フジ虎ノ門健康増進センター 2)␣放射線医学総合研究所(Clin Eval 36(1)2008)