パリオリンピックの先陣を切ったのは男女のロード個人タイムトライアルでした。コースは五輪史上初となる男女共通のコース&距離となり、フランスの英雄ナポレオンが眠るアンヴァリッドを出発した選手たちは、バスティーユ広場やヴェロドローム・ド・ヴァンセンヌ(自転車競技場)、ヴァンセンヌの森を通過してアンヴァリッドに戻ってくる32.4kmコース。鋭角なコーナーは多いものの、起伏のない平坦路のためTTスペシャリストがその実力をいかんなく発揮できるレイアウト。
ただ、開幕式から降り続く雨は止むことなく、ウェットなコンディションで落車も相次ぎました。このようなコンディションでは選手の技量は勿論、機材の質が大きく影響します。特にタイヤは重要で、どのメーカーのどの太さのタイヤで空気圧はどの程度にするのかに注目していました。
選手たちが乗るバイクは所属するチームのバイクで、国対抗のオリンピックにあっても、普段から選手たちが乗り慣れているバイクが優先されています。トラック競技では日本のように特別なバイクを用意するケースもありますが、あまりにもお金がかかり過ぎるのが欠点です。パリ五輪で日本のトラック選手が使うV-Izu TCM-2の価格は1985万円(税抜)とロードバイクの10倍もの価格になっています。イタリアは地元メーカーのPINALLEROとの共同開発したトラック専用のバイクを使うようです。
優勝候補に名が上がるレムコ・エヴェヌプールはクイックステップで使っているスペシャライズドS-WORKSのSHIVTTにS-WORKS TURBO Rapid Airというタイヤを履かせています。現アワーレコードホルダーのフィリッポガンナはPINALLEROのBOLIDE F TTにGrand Prix 5000S TR、ワウト・ファンアールトはサーヴェロのP5にタイヤはヴィットリアのコルサプロでした。ファンアールトが前後共にディスクホイールだったのには驚かされましたが、結果はエヴェネプール、ガンナに次ぐ3位でした。
現個人TTの世界チャンピオンが実力を見せた形になりましたが、ツール・ド・フランスを先週の日曜に終えたばかりで、疲れも残る中、コーナーではリスクを取らず、直線だけでスピードを上げる走りで楽々の金メダル獲得でした。身長171㎝と小柄な身体のどこにこんなパワーがあるのかと驚いてしまいますが、これでもっと登りが速くなればポガチャルやヴィンゲゴーを負かす時が来るのはそう遠くないかもしれません。
グランツールではポガチャルのGrand Prix 5000S TRが圧倒していた感はありますが、個人的にはヴィスマが使用し昨年は全てのグランツールを征したヴィットリアのコルサプロが好みです。ファンデルプールはこのタイヤでパリ~ルーベを征しているのですから。ツールでのタイヤ採用率も6チームずつと同率でした。グランツールではなかなか活躍の場が無かったスペシャライズドのバイクとタイヤですが、オリンピックで輝くことができるのかに注目です。
まあ、ツールでは後れを取ったヴィンゲゴーは代表に選ばれず、ポガチャルは代表を辞退しているので、勝って当たり前なのでしょう。TTの1位と3位のいるベルギーはロードレースでも優勝候補の筆頭でしょう。ファンアールトはエヴェネプールのアシストに回るのか、TTはエヴェネプールが勝ったのでロードはファンアールトが取りに行くのか、非情に興味があります。
春のクラシックの走りからオランダのファンデルプールに期待しているのですが、ツールを観る限り調子は良くありませんでしたので、調子の良いベルギー勢に分がありそうな気がしています。
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