第4ステージの頂上ゴールでマイヨ・ロホを手に入れたログリッジですが、今年のブエルタは相当暑いようで優勝候補のひとりアダム・イエーツが遅れてしまっています。続く唯一の平坦ステージはワウトがゴール前スプリントで21歳パヴェル・ビットネル(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)に敗れるという波乱もありました。
「影でフィニッシュラインの位置を勘違いしてしまった」というワウトですが。油断はなかったのかと思ってしまいます。DSMの下部チーム出身のビットネルは2023年プロデビューした21歳。ブエルタの前哨戦であるブエルタ・ア・ブルゴス(UCI2.Pro)の初日にプロ初勝利を飾り、大会最終日でも勝利を挙げていたものの、あくまでも下部カテゴリーでのことで、ワウト自身もまさか自分が得意のロングスプリントで負けるとは想像すらしていなかったのでしょう。
ワウトにとってはステージ勝利をひとつ失うことになりましたが、目標とするマイヨ・プントス(ポイント賞)のライバルはカーデン・グローブスなので、彼に先着すれば問題はないのですが...これも暑さのなせる業だったのかもしれません。
そして大波乱は続きます。第6ステージでは大逃げが決まり、ベン・オコーナー(デカトロンAG2Rラモンティアル)がマイヨ・ロホのログリッジ等に6分半以上の大差を付けて逃げ切ってしまったのです。近年のグランツールでこれ程の大差での逃げ切りは珍しく、特に総合争いの選手たちが5分近い差を付けられて逆転を許すのは初めて見たかもしれません。
前日のビットネルとは違いベン・オコーナーはデカトロンのエースで、総合首位のログリッジから1分半しか離されていなかったのです。それをレッド・ブルもUAEもヴィスマも大きなタイム差を与えてしまったのです。猛暑の中でエースを守ることを優先したのかもしれませんが、結果、予想以上の大差がついてしまいました。絶対的なエース不在の大会なので致し方のないことかもしれません。
今年からスポーツメーカー大手のデカトロンをメインスポンサーにしたAG2Rは絶好調で、前半戦のワールドランキングは5位でした。レッドブルがメインスポンサーになる前のボーラ・ハンスグローエより上なので、この5分近いタイム差は総合優勝争いに大きく影響してくると思っています。
マイヨ・ロホを獲得したからといってデカトロンに集団をコントロールする力があるとは思えませんから、依然として集団コントロールはUAEやヴィスマやレッドブルが担うことになるはずです。
第4ステージでログリッジから1分半ほど遅れていたベン・オコーナーなので、これからも勾配のキツイ山頂ゴールで遅れることも考えられますが、ブエルタは登りの距離が短いので、1つのステージでの逆転は無理でしょう。有力チームの今後の戦い方が変わって来るのは間違いないでしょう。
今回のスタートリストを見るとツールでエースを担ったフェリックス・ガルや今年初出場となったジロの山岳ステージで初勝利を飾ったクライマーのヴァランタン・パレパントルという名が並んでいて、山岳でのアシストも揃っているので、ライバル勢にとっては、やっかいな選手にマイヨ・ロホを与えてしまったのかもしれません。大本命が不在のブエルタなら何が起こっても不思議はないのでしょう。
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