居間塵(imagine)

居間塵、と書いて、イマジン。その日その時、流れゆく時の川から、思いつくままに掬いあげる。絵図とポエムの棚

何かがそこに

2012-11-07 13:33:14 | ポエム

何かがそこに

 

 

そこにあるのは
何かと
といただしたら
にんげんと戀と愛とが
ふるえていた
まはだかの
おさない幼児ににて
かすかにみぶるいする
路傍のほそい茎のさきの
ちいさな花だ
それから木々のかげで
いたわるふたり
木漏れ日のかぜ
ゆらぐせいしんのようなものが
手でおれなくて
草むらにねそべる
いきもののにおいといきれ
ああ薫風か
そらのいろはとうめいで
むしろ夜のようだが
それよりもちかい
かんじる
みる
さわる

てからはじまる
たびのさなかの
宇宙の絶壁から
地底のほのぼのした地層が
せりあがってきた

もう行かなくっちゃ


欲望

2012-11-06 12:58:17 | ポエム

欲望

 

あれがしたいな
これもしたいな
デパートメントの
欲望売り場です
  レジがこんでいます
  応援お願いします
きょう一日限定の
欲望のバーゲンセール

おしのけても
おしのけても
おしくらまんじゅう
皮がやぶれて血がにじむ
なにが売れ筋?
  金満家
  幸せ鳥
  友愛薬
  憎悪箱
  因縁壺
  名誉椀
なんだか骨董市のような品ぞろえ

その日は土砂降りの雨
傘からはみでた買い物袋が
ずぶ濡れで
中身が奇妙に溶け出して
デパートメントから
歩道までが
欲望だらけで
ねっとりとして
足をとられる有り様に
バーゲンで買った欲望は
すぐみずのようにながされる

側溝はとつぜんの豪雨と欲望で
地上にあふれだした

バーゲンセールはよしましょう

 


哀しみの行方

2012-11-04 12:44:14 | ポエム

哀しみの行方

 

 

哀しみは
かさかさと
おおきな函の中で
時々鳴る
その音をきくと
いくつかの物語が
動画になる

哀しみは
かさかさと
砂漠みたいに寝そべって
空洞のような場所から
時雨のように
降ってくる

哀しみは
かさかさと
小さな動物のように
生きている
おおくは暗闇の中で

哀しみは
かさかさと
じぶんで這いだして
屋根のうえのペンペン草のかげで
滂沱の涙をながす

哀しみは
かさかさと
砂のようになったり
濁流のようになったりして
やがて青空のなかへきえる

かさかさという音は
風の音だったのかもしれない

 

 


たたくもの

2012-11-03 10:44:20 | ポエム

たたくもの

 

あたまのなかを
コンコン叩く奴がいる
あさからなにをそんなに
水ちゅうを泳ぐタコのように
けったりして、グルグル、ブクブク、かきまわして
少しの知識の切れはしを餌にするきか?

そんな切れ端のものは役にたたないといつているではないか
風のなかの風の切れ端みたいにくべつのつけようもないもの

三角錐は切削のようにキリキリする
球体のほうがまろやかに叩いてくれる
そいつはまあゆるす

あたまのなかを
コンコン叩く奴がいる
もう数時間も、叩きつづけている
記憶力のお化け
思い出コンテストで
受賞に輝いた
三角錐よ
どんなに叩いても
もうみんな
かなたにおいてきたよ
それは
忘却となづけた
一人歩きもできない
メモリーさ

 

 


こころもたびをする

2012-11-01 12:05:09 | ポエム

こころもたびをする

 

たびはおもしろいが
それなりに面倒でもある
いつずけてしまうと
ちゅうとはんぱのデッサンみたいに
いつかんせいするのかわからなくなる

小路にはいりこんで
どこへでるのかスリルもあるが
たいていはどこにでもある
工場の裏口かドブにかかったちいさい橋にゆきあたる

それでもいろづいた秋の木の葉が
絨毯を敷いて
さあどうぞといわんばかりの景色にであうと
股旅ものの映画をおもいだす

居続けるとすぐいとおしいきぶんになって
もときた道をもどってゆく
これをさかのぼり旅という

時雨など降ると、きみがこころに秋や来ぬらん(*1)
袖触れ合うも旅の縁とかおもい
寅さんのように鼻歌でつぎの街めざして(*2)
秋晴れのそらのしたテクテクとゆく
山頭火のように白い雲をめざしてゆくか(*3)

こころなんて死活問題のひとつだけれど
なんてことはないふつうにいえば、気分です
蒲団のなかのダウンです
左右上下からおされてははねかえしたり
圧力にたえていることもある
たいせつな麦藁ですが
これでは蟻がおおきな獲物を
巣にはこんでいるすがたににている

そういえば旅には荷物がついてくる

 

 

 

                           (*1)古今和歌集より

                           (*2)映画の「寅さん」

                           (*3)山頭火句集より