京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
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教科書でよく出るシリーズ  『源氏物語』 葵 車争ひ

2021-03-12 16:10:06 | 俳句
教科書でよく出るシリーズ  『源氏物語』 葵 車争ひ
 登場人物
○光源氏=大将殿 近衛府(帝直属軍)の大将・・将来を約束された名誉ある地位
○葵の上(あおいのうえ)・・光源氏の正妻。父は左大臣、母は大宮。
  プライド高い。光源氏とはあまり打ち解けていない。ただし、妊娠中。
○六条御息所(読み ろくじょうみやすどころ )・・前の皇太子の妃。前の皇太子とは死別。娘がいる。娘は伊勢神宮の斎宮(さいぐう 神に奉仕する女性)に選ばれる。光源氏と恋愛関係になっているが、正妻でないので、不安がある。
【本文】その1
 大殿には、かやうの御歩きもをさをさし給はぬに、御心地さへなやましければ思しかけざりけるを、若き人々、「いでや、おのがどちひき忍びて見侍らむこそ、映えなかるべけれ。おほよそ人だに、今日の物見には、大将殿をこそは、あやしき山賤さへ見奉らむとすなれ。遠き国々より、妻子を引き具しつつもまうで来なるを、御覧ぜぬは、いとあまりも侍るかな。」と言ふを、大宮聞こし召して、「御心地もよろしき隙なり。候ふ人々もさうざうしげなめり。」とて、にはかにめぐらし仰せ給ひて見給ふ。
【口語訳】
 大殿(葵の上)は、このようなお出かけをめったになさらない上に、(妊娠して)ご気分までも悪いのでご考慮に入れなかったのを、若い女房達が、「いやいや、私たち仲間でこっそりと見ますようなことは、引き立つ華やぎがないでしょう。一般人でさえ、今日の葵祭見物には、大将殿(光源氏様)を、いやしい田舎者までもが見申し上げようとすると聞いています。遠い地方から、妻子を引き連れて参上するらしいのを、あなた様がごらんにならないのは、とてもあまりといえばあまりですよ。」と言うのを、大宮(葵の上の母)がお聞きになって、「(あなた=葵の上の)ご気分もまあまあの時である。あなたにお仕えする女房達もつまらなそうだ。」といって、急に大宮が(外出の)お触れをおっしゃって、葵の上が(葵祭を)見ていらっしゃる(ことになった)。
【語句解説】
大殿・・葵の上をさす。
かやうの御歩き・・意味は「このようなお出かけ」。「歩き」は「ありき」と読む。葵祭の御禊の行列を見物するというようなこと。
をさをさ~打ち消し語  意味は「めったに~ない」
給は・・四段活用補助動詞「給ふ」は尊敬語
「ぬ」は四段活用未然形に接続→打消助動詞「ず」の連体形
御心地・・葵の上のご気分
さへ・・までも
なやましけれ シク活用形容詞「なやまし」已然形 意味は「気分が悪い」
関連で 「なやむ」は「病気になる」 「なやみ」は「病気」の意味になることがある。
思しかけ 下二段動詞「思しかく」未然形 意味は「ご考慮に入れる」尊敬語
ざり・・打消助動詞「ず」連用形 ける・・過去助動詞「けり」連体形
人々・・「女房達」 女房とは、高貴な方に使える女性たち。今ならキャリアウーマン。女房自身、中流貴族の娘である。そうじゃないと、ハイソな世界のことを知らないし、つとまらない。
いでや・・「いやいや」 おのがどち・・「私たち仲間」
ひき忍び・・「こっそりと」 侍ら・・丁寧語 現代語訳すると「です」「ます」「ございます」の意味になる。
映え・・「見栄え 引きたつこと」  おほよそ人・・「一般人」
だに・・「でさえ」最低のものを例に挙げるときに使う。「ダニは最低」と覚えましょう。
物見=見物   
大将殿・・「光源氏」この時22歳。近衛大将だった。 葵の上の夫の晴れ舞台でもあるので、女房達はしきりに誘う。まあ本音のところ、祭り見物に自分たちが行きたくてうずうずしているということでしょうが。
あやしき・・「いやしい」 古文の「あやし」は「いやしい」か「不思議だ」「変だ」の意味と押さえましょう。
山賤・・「田舎者」よみ方は「やまがつ」。平安時代の都人は、都中心で世界を考えている。地方の人を低く見ていた。上から目線なんです!
国=地方。都の対義語。  さへ・・「までも」
奉ら・・「申し上げる」謙譲語  む・・意志助動詞
すなれ・・「す」サ変動詞「す」終止形 「なれ」は終止形に接続しているので、「伝聞・推定」助動詞
※助動詞「なり」について
 連体形・名詞―なり・・・断定助動詞
 終止形―なり・・・伝聞・推定助動詞・・ただしラ変型タイプの時は連体形接続
具し・・「連れ」
まうで来・・「参上する」謙譲語  「まうで来」はカ変動詞終止形 そのあとの「なる」も終止形接続なので、「伝聞・推定」
御覧ぜ・・サ変「御覧ず」未然形。「ごらんになる」の意味 尊敬語 そのあとの「ぬ」は未然形に接続→打消助動詞「ず」連体形
あまり・・「あまりといえばあまり」「ひどい」 女房達、大騒ぎ。
かな・・詠嘆 「だなあ」
大宮・・葵の上のお母さん。夫は左大臣。
聞こし召し・・「お聞きになり」尊敬語
よろしき・・シク活用形容詞「よろし」連体形 「よろし」は「まあまあ」ぐらいのいみ。
隙・・よみかたは「ひま」。いみは「時」ぐらいの意味。
候ふ・・「お仕えする」謙譲語 
さうざうしげな・・下に「ん」の省略。「さうざうしげなん」が元の形。「さうざうしげなん」は「さうざうしげなる」の撥音便で発音が「ん」に変化。「さうざうしげなる」は形容動詞「さうざうしげなり」の連体形。意味は「つまらない さびしい」
関連で形容詞「さうざうし」も意味は同じ。
めり・・推定助動詞 「目」で見て推定する時に使う。
とて・・「と言って」
めぐらし・・「葵の上外出のお触れ」
仰せ給ひ・・「仰せ」は「おっしゃる」の意味。「仰せ」も「給ひ」も尊敬語。尊敬語を二つ重ねて、二重敬語にしている。二重敬語のこの部分の主語は「大宮」。
見給ふ。・・「仰せ給ひ」と同じ文中だが、ここは尊敬語一つだけ。二重敬語ではない。
ここの主語は「葵の上」 
文中の尊敬語の変化は、主語の変化を表していることがあるので、注意!

教科書でよく出るシリーズ  『源氏物語』 葵 車争ひ
【本文】その2
日たけゆきて、儀式もわざとならぬさまにて出で給へり。隙もなう立ちわたりたるに、よそほしう引き続きて立ちわづらふ。よき女房車多くて、雑々の人なき隙を思ひ定めて、みなさし退けさする中に、網代の少しなれたるが、下簾のさまなどよしばめるに、いたう引き入りて、ほのかなる袖口、裳の裾、汗衫など、物の色いと清らにて、ことさらにやつれたるけはひしるく見ゆる車二つあり。「これは、さらにさやうにさし退けなどすべき御車にもあらず。」と口強くて、手触れさせず。いづ方にも、若き者ども酔ひすぎたち騒ぎたるほどのことは、えしたためあへず。おとなおとなしき御前の人々は、「かくな。」など言へど、えとどめあへず。
【口語訳】その2
 日が高く昇って、外出の支度もさりげない様子で葵の上はお出かけになられた。(遅くでかけたので、賀茂神社は)隙間もないぐらい牛車が一面立ち並んでいたところに、車はいかめしく立派で並んでいて、車の止める所がなく困っている。立派な女性用の車が多くて、身分の低い人がいない隙間を(葵の上の車を止める場所に)思い定めて、みな立ち退けさせる中に、網代車(殿上人クラスが乗る高級車)で少し使い古している車が、下簾の布の様子が
上品ぶっているのに、(乗っている女性達は)とても奥に引きこもって、(下簾の端に)ほのかに見える袖口や、裳の裾、汗衫など、服の色目がとても美しく、ことさらに人目を忍んでいる様子がはっきりと見える車が二つある。
【語句解説】
日たけ・・日が高く昇る  最初、葵の上は葵祭に行く気がなく、女房達や大宮のすすめで急に出かけることになったため、出発が遅くなったのである。
わざとならぬ (わざとならず)・・さりげない  さま・・ありさま
出で給へり。・・尊敬語「給へ」→主語は「葵の上」 
隙・・読み方は「ひま」 牛車を止める隙間 葵の上一行は遅く出発したので、すでに先に来ていた車が一面止まっていて、車を止める隙間もなかったのである。
たちわたり・・「わたる」という四段補助動詞は、「一面~」という意味。
よそほしう・・いかめしく立派だ  華やかな祭り見物なので、皆豪華な車で来ている。
立ちわづらふ・・車を止める所がなく困る。
女房車・・女性が乗る車。簾の下に「下簾」という絹の布をかけ、ことさら中が見えないようにしている。
雑々の人なき隙・・身分の低い者が混じっていない隙間。そこに葵の上の車を止めようとしたのである。
さし退けさする・・・「さし退け」は「立ち退け」。「さする」は使役助動詞「さす」連体形
網代の少しなれたる・・「網代」の読み方は「あむじろ」。牛車の中でも高級車。殿上人クラスの車。「の」は同格助詞で「で」と訳す。「なれ」は「使い古す」。「たる」は完了助動詞「たり」連体形。以下、六条御息所がお忍びで乗っている車の描写。
よしばめる・・四段動詞「よしばむ」已然形 「上品ぶる」の意味。「る」は完了助動詞「り」連体形
いたう引き入れ・・「乗っている女性達はひどく車の中にひきこもって」 素性をことさらに隠そうとしている。
ほのかなる袖口・・女性達は「いだしぎぬ」と言って、衣の先や髪を外に出し、それとなく知らせることをした。そのいだしぎぬの有様。牛車の下簾のはしにほのかに見える袖口。
裳・・腰に巻くスカートの一種。
汗衫・・読み方「かざみ」。成人前の女性の正装。
清らに・・清らかに美しい
やつれ・・「やつす」と同じ。人目を忍ぶ
けはひ・・様子
しるく・・ク活用形容詞「しるし」。はっきり
さらに~打ち消し語  まったく~ない
べき・・適当助動詞「べし」連体形 してよい
にもあらず・・「に」 下に「あり」「はべり」「さぶらふ」を伴う「に」は断定助動詞「なり」連用形。「あら」がラ変「あり」未然形でこの形をとる。
口強く・・読み方「くちごはし」言い張る
いづ方・・どちら側にも 葵の上側にも六条御息所側にも
え~ず・・不可能の表現  「あへず」も不可能の表現
したため・・制止する
おとなおとなしき・・「年配の」
御前・・葵の上の行列の先払いをする人々
「かくな」・・「かくなせそ」の略。「このようにするな」

【本文】その3
 斎宮の御母御息所、もの思し乱るる慰めにもやと、忍びて出で給へるなりけり。つれなしづくれど、おのづから見知りぬ。「さばかりにては、さな言はせそ。大将殿をぞ豪家には思ひ聞こゆらむ。」など言ふを、その御方の人も交じれれば、いとほしと見ながら、用意せむもわづらはしければ、知らず顔をつくる。つひに御車ども立て続けつれば、副車の奥に押しやられてものも見えず。心やましきをばさるものにて、かかるやつれをそれと知られぬるが、いみじうねたきこと限りなし。榻などもみな押し折られて、すずろなる車の筒にうちかけたれば、またなう人わろく、悔しう、何に来つらむと思ふにかひなし。
【口語訳】その3
斎宮の母の御息所(六条御息所)が、(源氏との一件で)お思い乱れることの慰めにもなるだろうかと、お忍びで外出されていたのですよ。御息所は(素性を隠して)何気ないふりを装っているけれど、(葵の上の側の人々は)自然と(相手が御息所だと)分かってしまった。「その程度(源氏の愛人程度)では、そのように言わせないぞ。大将殿(源氏)を頼みに思い申し上げているのだろう(が思い違いだ)。」などと(葵の上側の従者が)言うのを、(葵の上の供に加えられている)その方面(光源氏に仕えていて御息所側の人と顔見知り)の人も交じっているのだが、気の毒だとは見るものの、(事を荒立てないように)気を遣うのも面倒であるので、知らない顔をする。ついに葵の上側の車を一面に立て続けたので、御息所の車は葵の上の侍女が乗る車の奥に押しやられてものも見えない。葵の上は不愉快なのは当然だとして、このようなお忍びを自分だと知られてしまったのが、ひどくいまいましいこと限りない。車のながえを乗せるしじなども皆押し折られて、そのあたりの変哲も無い車の車軸受けに車のながえをかけているので、またとなく体裁が悪く、後悔し、どうして来てしまったのだろうと思うがどうしようもない。
【語句解説】
もの思し乱るる・・お思い乱れる 光源氏がしだいに疎遠になりつつある悩み
 その悩みをひとときでも忘れるために、気晴らしで葵祭に出かけたのが、かえってあだになってしまったのである。
つれなしづくれ・・何気ないふりを装う
おのづから・・自然に
さばかり・・その程度 源氏の愛人程度。葵の上側の従者の言葉。六条御息所を見下している。
な~そ・・禁止
せ・・使役助動詞「す」
豪家に思ひ・・「豪家」の読み方は「かうけ」 頼みにする 威光を借りるの意味
その御方の人・・光源氏に仕える人 この日は葵の上側のお供に加わっているが、六条御息所側の人とも顔見知りである。
心やましき・・不愉快さ
さるもの・・当然 
かかるやつれ・・六条御息所のこのようなお忍び
ねたき・・いまいましい
榻・・読み方は「しじ」。牛車のながえを載せる台。停車時には、これで車を支える。乗り降りにも使った。争いに負け、六条御息所の車はしじを壊されたのである。
すずろなる・・いいかげんな これといってよくもない
筒・・読み方「どう」 牛車の車軸受け
またなう・・またとなく
人わるく・・体裁が悪い
かひなし・・どうしようもない
【本文】その4
 ものも見で帰らむとし給へど、通り出でむ隙もなきに、「事なりぬ。」と言へば、さすがにつらき人の御前渡りの待たるるも心弱しや。笹の隈にだにあらねばにや、つれなく過ぎ給ふにつけても、なかなか御心づくしなり。げに、常よりも好みととのへたる車どもの、我も我もと乗りこぼれたる下簾の隙間どもも、さらぬ顔なれど、ほほ笑みつつ後目にとどめ給ふもあり。大殿のはしるければ、まめだちて渡り給ふ。御供の人々うちかしこまり、心ばへありつつ渡るを、おし消たれたるありさま、こよなう思さる。
  影をのみみたらし川のつれなきに身のうきほどぞいとど知らるる
と涙のこぼるるを、人の見るもはしたなけれど、目もあやなる御さまかたちのいとどしう出で映えを、見ざらましかばと思さる。
【現代語訳】その4
 六条御息所はものも見ずに帰ろうとなさるけれど、車が通って出るような隙間もない上に、「行列が来た。」と言うので、そうはいっても薄情な人のお通りが自然と待たれるのも弱い心だよ。その心情は古今和歌集の歌の「笹の隈」のいうように(あなたのお姿だけでも見ようという気持ち)だけでもないからだろうか、光源氏が冷淡に前をお過ぎになるにつけても、かえって気をもむことだ。本当に、いつもより趣向をこらしている車などが、服の裾などを我も我もといだし衣でこぼれ出している女性(光源氏の彼女達)の車の下簾の隙間なども、光源氏はなにくわぬ顔でいるが、(恋人に気付き)微笑みつつ流し目にとどめていらっしゃるのもある。葵の上の車ははっきり目立つので、まじめな顔をして光源氏は進んで行かれる。光源氏の従者達はかしこまり、(葵の上に)敬意を払いつつ行くのを、御息所は押し負かされている有様が、とてもたまらなく思われる。
(御息所の和歌)あなたの姿だけでも見たくて葵祭のみたらし川まで来たのに、あなたの冷淡さに我が身の不幸な具合をますます思い知ってしまう
と涙がこぼれるのを、おつきの女房が見るにも体裁が悪いけれど、光源氏のまばゆいほどの有様や容貌がいっそう映えて見えるのを、もし見なかったとしたならば(やはり心残りだろう)と六条御息所はお思いになる。
【語句解説】
見で・・「で」は打消 見ないで
事なりぬ・・行列が来た
さすがに・・そうはいっても 来たことを後悔するといっても、やはり光源氏の姿は一目でも見たいという未練。
つらき人・・薄情な人 光源氏をさす
待たるる・・「るる」は自発助動詞「る」連体形
笹の隈・・『古今和歌集』の引き歌
「笹の隈檜隈川に駒とめてしばし水かへ影をだに見む」
大意「笹の物陰で檜隈川に馬をとめてしばらく水を与えてください。その間にあなたの姿だけでも見よう」
 この歌の「影をだに見む」の意味を伝えようとしている。
つれなく・・冷淡に
なかなか・・かえって
御心づくし・・気をもむこと
げに・・本当に
好みととのへ・・趣向をこらす
さらぬ顔・・(光源氏の)何食わぬ顔
後目・・読み方「しりめ」 横目 流し目
大殿・・葵の上
しるけれ・・はっきりしている 目立つ
まめだち・・まじめな顔をする 正妻に対して光源氏が敬意を示している
心ばへ・・敬意
おし消たれたる・・押し負かされている 「れ」・・受身助動詞「る」連用形
こよなう・・とても(たまらなく)
思さる・・六条御息所がお思いになられる。「思さ」尊敬語 「る」自発助動詞
「影をのみ」・・六条御息所の歌
影・・光源氏の姿 先ほどの引き歌の「影をだに見む」と呼応している。
掛詞 「みたらし川」の「み」 意味①「見」②「みたらし川」の「み」
うき・・不幸
ほど・・具合
いとど・・ますます
知らるる・・「るる」自発助動詞「る」連体形
人・・六条御息所のおつきの女房達
はしたなけれ・・体裁が悪い
目もあやなる・・まばゆいほどの
かたち・・容貌 顔のようす
いとどしう・・いっそう
見ざらましかば・・「ましかば」は反実仮想 現実と違うことを空想する もし見なかったならば

ひとりごと

2021-03-12 12:54:34 | 俳句
ひとりごと
       金澤ひろあき
 風が寒いねえ。すれ違うおじいさんがひとりごとのように言います。
京都ではそろそろ桜ですが、大津はひやりとします。湖西線で以前は西大津と言いましたが、今は大津京という名に変わりました。湖西線に乗るのは久しぶりです。
琵琶湖マラソンのスタート地点でもありましたが、今年限りで歴史を閉じました。
 春なのに風がつめたいひとりごと  ひろあき
今、木蓮が開きかかっています。

十年

2021-03-12 08:05:38 | 俳句
十年
           金澤ひろあき
 東日本東北大震災から十年が経ちました。まだ傷は癒えていないような気がします。
 何よりも、原発事故という未曾有の事態が起こりました。事故機の廃炉の見通しも不明です。放射能に汚染された水が、毎日たまっています。当初は、地下水まるごと冷凍にすると言いましたが、できていません。処理ができないので、海に放出することも検討されています。
 放出されたものが、そのまま海で薄まるという確証はないのです。かつて水俣の海で、放出された有機水銀が魚介類に蓄積され、それらを食べた人達が水俣病で苦しみました。
 同じことが、今度は世界の海で起こらないでしょうか。
 人間は誤ることもあります。苦しい中で、もがくこともあります。ただ、人間はそういった失敗や苦しみの中で学ぶことができる。それが人間の価値だと思うのです。
 まだ、大震災の影響と考えられる余震もまだ続いています。南海トラフの危険も言われています。地震は止めたり変えることはできませんが、人間は変わることができます。
 十年前罹災した友のことを思い出しながら、こんなことを考えていました。
  三月十日確かに生きていたしるし    ひろあき