京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
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教科書によく出るシリーズ 源氏物語 光源氏誕生「桐壺」

2021-08-27 16:54:10 | 俳句
教科書によく出るシリーズ 源氏物語  光源氏誕生「桐壺」
【本文】第一段落
 ①いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、②いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。③初めより我はと思ひ上がり給へる御方々、めざましきものにおとしめそねみ給ふ。④同じほど、それより下﨟の更衣たちは、まして安からず。⑤朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふつもりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、⑥いよいよ飽かずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえはばからせ給はず、⑦世の例にもなりぬべき御もてなしなり。⑧上達部、上人などもあいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御おぼえなり。⑨唐土にもかかる事の起こりにこそ世も乱れ悪しかりけれと、やうやう天の下にもあぢきなう、人のもて悩みぐさになりて、楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、⑩いとはしたなきこと多かれど、
⑪かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて交じらひ給ふ。
 ⑫父の大納言は亡くなりて、母北の方なむいにしへの人のよしあるにて、⑬親うち具し、さしあたりて世のおぼえ華やかなる御方々にもいたう劣らず、何事の儀式をももてなし給ひけれど、⑭とりたててはかばかしき後見しなければ、⑮事あるときは、なほよりどころなく心細げなり。
【口語訳】第一段落
①どの帝の治められた時代であっただろうか、女御、更衣がたくさん帝にお仕えなさった中に、②それほど高貴な身分ではない方で、すぐれて帝の寵愛をお受けになった更衣がいた。(※以下、この更衣を桐壺更衣と表記します。)
③初めより私が(帝に愛されるだろう)と思い上がっておられる方々は、(桐壺更衣を)めざわりなものに見下しねたんでいらっしゃる。④同じ身分、それより下の地位の更衣たちは、まして心穏やかでない。⑤朝夕の帝にお仕えすることにつけても、人の心を刺激し、恨みを負うことが積もることがあったのだろうか、(桐壺更衣は)とても病気がちになって行き、心細げに実家に帰りがちであるのを、⑥(帝は)ますます満足せずに(桐壺更衣を)すばらしいものにお思いになって、人の非難をご遠慮なさることができず、⑦世の中の悪い帝の例にもきっとなるような人(桐壺更衣)へのご待遇である。⑧上達部、殿上人なども気に入らず目をそむけつつ、帝はとても見てはいられないほどの桐壺更衣へのご寵愛である。⑨唐の国=中国でもこのような事件で世の中も乱れ悪かったと、しだいに天下でもにがにがしく、人々の悩みの種になって、楊貴妃の例=天下を乱れさせた悪女の例もきっと引きだされるはずにもなっていくのに、⑩とても体裁が悪いことが多いけれど、⑪恐れ多い帝のご配慮が比べるものがないのを頼りにして桐壺更衣は(宮中での)交際をなさっている。
 ⑫桐壺更衣の父の大納言は亡くなって、母の北の方が古い家柄の人で由緒ある人で、⑬親が揃い、さしあたって世の中の評判が華やかな方々にもそれほど劣らず、何事の儀式をもとり行っていらっしゃったけれど、⑭これといってしっかりした支援者がないので、⑮特別な事があるときは、なお頼る所がなく心細そうである。
【語句説明】第一段落
①・いづれ・・どの    ・御時・・帝の御治世 
・にか 「に」・・断定助動詞「なり」連用形 「か」疑問係り助詞
・女御 更衣  帝の妃の位
 中宮―女御―更衣の順  女御は親が大臣クラス 女御の子は必ず皇族になった。更衣は親が大納言以下。更衣の子は臣籍に下ることがあった。扱いに格差あり。
・あまた・・たくさん 多く 「たくさん、あまった」とごろあわせ。
・候ひ・・謙譲語 お仕えする  ・給ひ・・尊敬語 なさる いらっしゃる
②いと~ぬ(打消助動詞「ず」連体)・・それほど~ない
・やむごとなき(形容詞 やむごとなし)高貴な 大切な 格別な
・時めき・・寵愛を受ける  ・給ふ(下に 更衣 が省略されている)尊敬語
③我は(時めかむ 「寵愛を受けるだろう」ぐらいが省略されている)
・めざましき・・めざわりな  ・おとしめ・・見下し  ・そねみ・・ねたむ
④・ほど・・身分   ・それ=桐壺更衣  
・下﨟・・よみかた「げろう」 身分が下 
・安からず・・心が穏やかでない  なぜ「まして安からず」なのか。
 桐壺更衣が帝の寵愛を独占。他の女性が顧みられず。→女御は、身分が高い、家柄が良い等でプライドが保てる(でも不満)。→更衣は、プライドを保てるものがないので、心穏やかでない。
⑤・宮仕へ・・帝に仕えること  ・動かし・・刺激し  ・恨みを負ふ(ことが)積もり
 ・負ふ(ことが)積もり・・負うことが積もること
 ・にやありけむ
「に」・・断定助動詞「なり」連用形 「に~あり・はべり・さぶらふ」の時の「に」は断定助動詞「なり」の連用形
「や」・・係り助詞 疑問 「けむ」・・過去推量助動詞「けむ」連体形 結び
・あつしく・・病気がちになる  ・里がちなる・・実家に帰りがち 「里」は「実家」
⑥主語は「帝」 「思ほす」という尊敬語「せ・給は」という尊敬語を重ねた二重敬語が使われている。
・思ほす・・お思いになる  ・そしり・・非難  ・え~ず・・不可能 できない られない  ・はばから・・遠慮する 
⑦・世の例(ためし)・・世の中の悪い帝の例
 ・なりぬべき・・きっとなるだろう 
「ぬべし」「つべし」の時 「ぬ」「つ」は強意の助動詞 「べし」推量・当然の助動詞
・御もてなし・・帝のご待遇
⑧・上達部(かんだちめ)・・公卿 トップ層の貴族 摂政・関白・大臣・大納言以下、三位の貴族まで。この人たちの娘や姉妹が、女御や更衣であり、桐壺更衣を目の敵にしている。
・上人・・殿上人 上達部に次ぐ貴族層。帝のいらっしゃる殿上の間に入ることを許された人たち。五位以上の貴族、六位の蔵人。 
・あいなく・・気に入らない。   ・そばめ・・そむける 
・まばゆき・・見てはいられない
・人(へ)の御おぼえ・・桐壺更衣への帝のご寵愛 「人」は「桐壺更衣」 「御おぼえ」は「帝のご寵愛」
⑨・唐土(もろこし)・・中国 ※当時の日本の貴族達の政治のお手本である。貴族は漢文を学び、公文書も全て漢文である。何か政治上の問題が起こった時などは、中国の事件を参照していた。この場合は唐の玄宗の時代の安史の乱、そして玄宗と楊貴妃の恋を扱う白居易の「長恨歌」を念頭に置いている。
・かかる事の起こり・・このような原因 玄宗皇帝が楊貴妃という一人の女性を寵愛したこと。(それによって安史の乱が起こり、唐の国が滅亡寸前になった)
 玄宗皇帝=帝  楊貴妃=桐壺更衣という対比がなされている。
・やうやう・・しだいに   ・あぢきなう・・にがにがしく  
・もて悩みぐさ・・悩みの種 
・楊貴妃の例・・玄宗が楊貴妃を寵愛して国が乱れた例 国を傾けた悪女の例
 ※楊貴妃もクレオパトラも最高の美人だとされているが、二人とも政治上は悲運なのです。
・「つ・べく」・・きっと~はずだ 「つ」強意助動詞 「べく」当然助動詞
⑩・はしたなき・・体裁が悪い  
⑪主語は桐壺更衣 ・かたじけなき・・畏れ多い  ・御心ばへ・・帝のご配慮
・たぐひなき・・比べるものがない  ・交じらひ・・宮中の人々との交際をする
⑫桐壺更衣の家庭状況を述べる。父は大納言、それほど強い後ろ盾ではなく、しかも今は故人である→桐壺更衣の立場の弱さにつながる。母・・いにしへの人=古い家柄 皇族につながる。
・「人の」の「の」・・同格の「の」。「で」と訳す。「の」の前後が同じものである。
・よし・・由緒。教養と訳す解釈もあり。
⑬・うち具し・・そろう 「うち」は接頭語といい、強調している。具す・・そろう
※みそ汁の「具」が「そろう」と覚えよう。 ・おぼえ・・評判
・いたう~ず・・それほど~ない  ・もてなし・・とり行う
⑭・はかばかしき・・しっかりした  ・後見し・・後見人 支援してくれる人
⑮・よりどころ・・頼るところ

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