なかなかの読み応え。
『極楽征夷大将軍』垣根 涼介 #読書メーター https://bookmeter.com/books/21148333
手に取ったきっかけは、先月の爆笑問題カーボーイで太田さんがこの作品について熱く語るのを聴いたこと。
なんとも頼りない殿様が、家臣に助けられて、そして不思議と戦に強くて。
太田さん独特の、いかにも読みたくなるお勧め口上についつい釣られた。
私は日本史に非常に疎く、やっとここ最近戦国時代を自分なりに勉強し始めたところ。
まして、鎌倉から室町の時代など、ほんとに何もわからない。
むかし教科書で見た足利尊氏の肖像が実は別人のものでは、という記事を最近読んだのが印象に残っているくらい。
「鎌倉殿の13人」も観ていない。
まあ、そんな無知の状態で読んだことが寧ろよかったかも。
なぜなら、主要人物の運命を知らないままに読み進めることができたので。
以下ネタバレあり。
尊氏の人物造形、これは(時代的に)古くは漢の高祖劉邦、三國志の劉備、ずっと飛んでのぼうの城ののぼう樣。
本人は今ひとつパッとしないのに妙な魅力だけがあり、周囲の人間たちが一所懸命支えていく。
そんな系譜を連想してしまう。
やる気も執着もないそんな尊氏に、何故か周りの人々は惹かれ、着いていく。
その様子が面白くも丁寧に描かれていて楽しい。
物語は、尊氏の弟直義と家宰師直のいずれかの視点で語られ進んでいく。
この形式も面白い。
この二人が、物語の中盤まではそれぞれに尊氏に手を焼きながらも精一杯支え、足利家の権力確立を進めていく。
ところが終盤、その関係性が崩れ、遂にその二人が図らずも反目しまうことになる。
ここで、「二人の視点」という形式が非常に効果的に作用する。
実のところ、直義も師直も、お互いを強く憎んでいるわけではない。
権力を手に入れた結果、有り体に言えば様々なしがらみや行き違いか絡みつき、ある種悲劇的結末を迎えるのだ。
そんななか、次第に(既にいいオトナではあるものの)人間として将として着実に成長していく尊氏。
繰り返すが、このあたりの足利幕府成立後のゴタゴタを全く知らなかったので、尚更純粋にドラマとして楽しめた。
今のところ今年読んだ本の筆頭に挙げられるかもしれない。
ありがとう太田さん。
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