去年の10月頃だったか、新米の出回り始める頃、JAの農作業支援プロジェクトでKさんのところで大根洗浄をしていた時のこと。
コメは作っていないKさんが「コメを確保しておいた方がいいよ」と話してくれたことがあった。
幸い、春先に田植えの手伝いに行っているTさんから妻と1年で食べる量として1俵をJA価格で購入することが出来ていたのでその意味は聞かなかった。
報道によると最近のコメ価格の高止まりの要因に、生産は平年並みなのに出回り量が少ないことがあるという。
猛暑の影響で品質が低下していることと流通業者や投機筋の〝買いだめ〟があるらしい。JA系統外の流れも入っているようだ。
国の減反政策により生産量と消費量のバランスがタイトになっているので影響は直ぐに出やすい。
Kさんが話していたのはこのことだったのだ。
現場では集荷の時期に既に動きがあったということだが、昔の農水省担当者はコメに限らず生産者から生情報を直接得るルートを持っていて、彼らだったらもう少し機敏に反応したかもしれない。
もう20年くらい前になるが道でコメを担当していたことがあった。
国が農家から生産費を賄える価格で買って消費者に安く提供するという「食糧管理法」の時代から市場取引に移行する変革期だった。
この〝逆ザヤ〟などのコメ政策予算が数兆円に上り、世間の風当たりも強く、財政改革で食管法は廃止されて市場取引制度が導入された。
考えてみると〝逆ザヤ〟は欧米の農業政策では標準となっている「農家所得補償方式」と理屈は同じである。ザックリ言うと市場価格と生産費の差額を税金で負担するという仕組みだ。
国民の農業、食料生産に対する理解と支持が無いと出来ないことだ。
民主党政権時代にそれまでのコメ、麦などのモノ別に出来上がっていた複雑な農業政策に横串を通すような仕組みでスタートしたが自民党政権に戻ってすぐに廃止された。時間をかけて手直しすれば良いものに出来上がっていたかもしれない。
かつての〝逆ザヤ〟は政治色の強いものであり、減反と備蓄も合わせると数兆円規模の国費が投入されていたので国民から猛烈批判されたが、今、再度、日本の農業政策を食糧安全保障の観点から構築し直す好機ではないかと思う。
「不足分は輸入で」という時代ではなくなっている。
水田から畑になった農地をコメ作りに戻すには用排水路と畔の再整備、担い手の確保など口で言うほど簡単ではないが、生産、所得、備蓄、輸出の課題に国は腰を据えて取り組まなければ食の世界でも格差が益々拡大するだろう。
このところ自給率は37パーセントでずっと変わっていない。
家畜の餌の配合飼料の原料は殆ど海外に依存しているので実際は10パーセント程度とも言われている。
このまま放置すると〝餓えの国〟にならないとも限らない。
昨年改正された「食料・農業・農村基本計画」はこれらの事柄に応えられているのだろうか。
〝コメ騒動〟が「喉元過ぎれば・・・」になってはならないだろう。