「妻と息子から、こんな大事な時期に何やっているんだと強く叱責されました。騒動を挽回するためにも103万円の引き上げをやってこいと言われました。」「一生かけて家族に謝罪し続けたい。」--------と言われても。
それで貴方はどうする気?ということに関しては、「代表の地位については所属議員に選んでいただいている立場であるため、全議員に諮って判断を得た上で決断したい。」---------と。
何ともはや他人ごとのような甘えた答えが返ってきた。議員が集まり、代わりもいないので国民民主党玉木代表の継続が決まった。倫理観が欠如したお馴染みのこの国の政治風景だ。
市町村や農協のトップがこんなことをしでかしたら直ちに辞任していると思うし、町にも住んでられないのではないか。なぜか国会議員は居座る。
この程度のリーダーというか政党であるが、先の総選挙で衆院に過半数を占める勢力がいなくなる〝ハングパーラメント(宙づり国会)〟なるものが出現したため、過半数を割った与党に4倍増となった「28名」をちらつかせて自党の政策の実現を迫る今や〝時の政党〟である。
玉木代表は石破政権継続を容認し、国会では政策ごとに連携する「部分連合」で臨むという。先ずは所得税が発生する〝103万円の壁〟を178万円に引き上げて手取りを増やすという総選挙の公約の実現に向けて、本格的な論戦の舞台となる、年内の臨時国会、年初からの通常国会が始まる前から自民党と「政策協議」を進めている。何故か「消費減税」はいつの間にか消えた。
これまで自民党政府が国会を法案、予算の儀礼的な通過機関にするために慣行的に行ってきた党内部の〝密室事前審査〟と国民民主の部分連合の「政策協議」はどこが違うのか、まことにあやふやである。
「間を取って〇〇万円に引き上げ。」で決着し、国会では質問もせず「賛成」に回る国民民主の姿が目に見えてくる。これでは自民党流の〝密室事前審査〟、閣議決定、国会に法案提出、数で決着の流れに首を突っ込んでいるだけのことではないか。
昨今の玉木・国民民主の動きは、議論が活発化して好ましいという世論の受け止めだが、政党の考え、政策、付随する予算は国会という場でオープンに議論するという民主主義の基本からして果たしてどうなのだろうかと疑問だ。
〝103万円の壁〟を壊すという要求のスジは悪くないが、当初から高額所得者ほど恩恵が大きいと指摘されていたし、実際、年金制度、医療保険制度との連動も含めて総合的に考えなければならない課題であることが〝メディア国会〟で明かになりつつある。
これに対して、玉木代表は今回は税金の問題を焦点としており、8兆円とも試算される財源の確保については「手取りが増えることによって経済が好循環して税収が上がり財源は自ずと確保される。」という苦し紛れの説明の果てに、「財源は政府が考えること。」と無責任な発言をせざるを得なくなっている。
この先、「ガソリン税を一部軽減するトリガー条項の凍結解除」も自民党の「事前審査」を受ける際も同様のことが起きるだろう。
国会議論であれば政府側説明員(財務省等)を呼んで各党による広範囲の精緻な議論を深められるはずだ。
メディアは〝キャステングボードを握った玉木立憲民主党〟を挙って追いかけているが、この度の総選挙で本来の「熟議の国会」へのレールが敷かれただけのことであることを少しは意識した報道が必要ではないか。
「熟議」とは与野党が国会での議論や意見、情報を踏まえて、誰もが賛否の態度を変える可能性をもった状態で、合意に達するよう徹底的かつ理性的に議論することとされている。
これが出来なかったのは多数を占める与党自民・公明が事前審査、党議拘束(逆らった場合、所属政党から反党行為として処分)によって、議案への態度(盲目的賛成)を変える可能性をゼロにしてきたからである。
国民民主党は「ガソリン税を一部軽減するトリガー条項の凍結解除」や政治改革なども選挙公約にしている。
あれもこれも自民党が政策協議なる〝事前審査〟に応じるはずはなく、部分連合はいずれ破綻するのではないか。
各党が国会という同一の土俵で徹底議論する立憲民主党の「国会熟議」の考え方が正攻法だろう。