久し振りに緊迫した国会質問だった。1月29日の参院予算委員会で、立憲民主党の杉尾 秀哉議員が独自に入手した「機密扱いメモ」をかざして2020年度のips細胞研究費予算の決定に至る不透明な経過を質した。
参考人は昨年の8月9日に安倍首相の懐刀と言われる和泉総理補佐官と一緒に京大の山中教授を訪ね、週刊誌に詮索された厚労省大臣官房の大坪審議官(内閣官房 健康医療戦略室次長)だった。
かつては国会が止まるほどの“爆弾質問”は珍しくなかったが、今はノラリクラリの政府説明員とのヒアリング結果から矛盾点、疑問点をTV中継のある国会の場で追求するというパターンが一般化してしまった。
国会議員の情報収集力、調査力が落ちているのも政治に無関心な空気が生まれる原因の一つになっているのではないか。質問力も大事だが、杉尾議員、共産党の田村議員のような地道な取り組みが欲しい。
杉尾議員が件のメモにより取り上げた内容を大雑把に纏めると以下のようなことだった。
昨年8月16日に文科省、経産省の担当者を集めた会議で、大坪次長は山中教授にIPS細胞をストックするための新設法人には国費を投入しないことを伝えたことを説明し、山中教授の目の前で書いたというIPS関連予算額が記載された資料により関係省の概算要求の考え方も示している。
大坪次長の権限は無いにも拘わらず、“虎の威を借りる”ようなことで一官僚が国の重要な予算を差配していいのか、という問いかけだった。
大坪次長は、定番となっている「メモ内容は実際とは違う。」「メモは共有されていない。」「省内会議の内容は記憶が定かで無い。」との答弁を繰り返した。しかし、微に入り細に入り書かれているメモの信憑性は高い印象だ。杉尾議員は提供者に配慮し公開しなかったが見てみたいものだ。
最終的には10年間の補助総額維持と2019年度並み予算額は措置されたが、京都大の山中教授が11月の日本記者クラブで、ips研究費が一部の官僚による不透明で理不尽な決定でゼロになったと発言したことで問題が明らかにならなければどうなったか。他の予算でも似たようなことが起きていないのか。
一官僚が忖度し、虎の威を借りるように独善的に進め、告発する内部メモには知らない、記憶に無い、を繰り返す行政がモリカケ事件から何も変わっていない。杉尾議員には予算が復活した経緯も引き続き問い質して欲しい。