季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

人それぞれ

2016年08月13日 | その他
欝病を患っている人に「頑張れ」と声をかけるのは絶対にしてはならない。人はついつい励ましてあげることが一番大切だと張り切ってしまう傾向があるけれど。はなはだしい勘違い人間は、叱咤激励が一番効果があると信じている。とんでもない間違いである。

心理学を学ぶひとはこうした知識をたくさん積み上げていく。そうすることで人間の心という難問に到達するならまあ良いだろう。

でもちょっとだけデリカシーを持った人ならば、言われることなく知っている知恵のはずだ。

欝病といわれる人に対してだけではない。あらゆる場面でいえることであろう。

野球解説の豊田泰光さんが現役のころ、河村というピッチャーがいた。この人も豊田さんに負けず劣らず気の強い人だった。

ある時、ピンチに陥った河村投手に豊田さんが「頑張れ」と激励に近寄ったところ「頑張っとるわい」と怒鳴り返されたという。

それもそうだ、とその後豊田さんは誰に対しても「頑張れ」と声を掛けなくなったそうだ。

僕はこうした話が好きだ。頑張っとるわい、と怒鳴った選手もだが、それもそうだとあっさり自分の中の「ウソっぽい」部分を捨て去る豊田という男も好きだ。

そのような豊田さんだが、解説者時代にある選手から面と向かって「俺のことをあれこれ抜かすな」と怒鳴られたことがあるそうだ。

野球が好きな人なら知らぬ人はあるまい、城島というキャッチャーだ。大リーグでもレギュラーまで張った名選手だ。

この人は引退会見で男泣きに泣いた。何があったのか、僕は野球に関心がないのでそこは分からない。

ではその後城島元選手はどうしているのか。ひょんなことから知ったが、この人は現役時代から釣りが大好きだったという。

イチローと同じチームだったこともあり、イチロー曰く、城島は一番が釣り、二番が野球、だそうだ。

引退会見での号泣後、彼は釣り師としての自分を見出した。自身の釣り番組を持ち、釣り雑誌の表紙を飾り、赤銅色の肌、無雑作に束ねた長髪を見る人は、これがかつての一流野球選手であるとはまず気がつくまい。

漁師に生まれたかった、とまで言っている。このような男だ、豊田さんに鬼の形相で抗議したのだろう。その時のことをたしか豊田さんが何処かで書いていたように記憶するが、勝手に空想する方がいい。

因みにこの城島さんはクラシック音楽が好きなのだそうだ。早朝から海へ出て、昼ご飯に帰宅して、午後はクラシック音楽を聴いて昼寝をするのが日課だという。

クラシック音楽の何がこのような人を動かすのであろうか。