シュヴァイツァーといっても知る人は少なくなってきただろう。ましてやこの人が卓越した音楽家だったことなどは忘れ去られているのではなかろうか。
この人の自伝で知り鮮やかに記憶に残っているのだが、彼は子供の頃ピアノで表現するのが恥ずかしくてたまらなかったという。決して出来の良い生徒ではなかったようである。
ある時無言歌を練習するように言われた
が、先生は「君はどうせこの曲も台無しにするのだろう」と言った。
シュヴァイツァーはその言葉に感じるところがあったのだろう、次のレッスンまで自分に出来るすべてを傾注した。
次のレッスンで彼が心を込めて弾き終えた時、先生は彼の肩を抱いた。以来二人の間には友情が芽生えたという。
こうしたエピソードは両者の音楽への愛情の強さを物語る。