東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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第16回リハビリテーション科地域連携勉強会を開催しました!

2017年08月04日 | 活動報告
年に2回開催しております当科の地域連携勉強会は、近隣の病院や福祉施設等で従事される方々にお声をかけ、様々なディスカッションや講演等を通して顔の見える連携作りを目的とし、毎回趣向を凝らした企画を重ねてきました。

今回で16回目を迎えるわけですが、これまでにいただいたアンケートで要望の多かった「嚥下障害」をテーマに、「明日からいつでも誰でもどこででもできる知識と技術」を持ち帰っていただきたいという想いから、講義とハンズオンという形の企画を立ち上げました。

前半は実際に経験した症例を紹介しながら嚥下障害についての一般的な知識をリハビリテーション科専門医より講義形式でお話ししました。嚥下の過程というものは、①先行期(食べる前の準備段階、覚醒度や姿勢など)、②口腔期(口の中で咀嚼して咽頭へ送り込む段階)、③咽頭期(嚥下反射が起きてゴックンと咽頭から食道へ送り込む段階)、④食道期(食道から胃へ送り込む段階)の一連の過程を形成し、それぞれに対するアプローチが必要であることが大事です。そのため、「“嚥下障害”はSTの仕事」と思い込まれている方がいらっしゃるかもしれませんが決してそうではなく、多職種で多角的にそれぞれの問題点にアプローチをすることが大事であることをお伝えしました。


写真 嚥下障害についての講義(嚥下造影画像を交えて)

その具体例を示したものが後半のハンズオンです。PT、OT、ST、看護師(Ns)がそれぞれの役割について知識とともに技術をお伝えします。

OTのブースでは適切な姿勢を作ることの重要性としてポジショニングについて、座位と臥位での作り方を実際にデモンストレーションしました。また適切な食器具や自助具の紹介について具体物を用いて行いました。実際の症例では体を寝かせた状態で自己摂取することになったので、食事トレイが見やすく捕食しやすくなるための傾斜台を作成したのですが、この実物もお見せしました。


写真 OTによるシーティング・食事動作のブース

STのブースでは摂食・嚥下領域認定言語聴覚士および日本・摂食嚥下リハビリテーション学会認定士により、安全な食事を提供するために適切な摂食方法を食事場面での注目ポイントとして姿勢・食べさせ方・嚥下時・食後について具体的に(参加者さんにモデルになっていただきながら)お伝えしました。また、とろみ剤の使い方(粘度によって差があること)や、当院で提供している嚥下食をお見せしながらどんな人にどんなものを提供したら良いのかなど、当院の管理栄養士とともにお伝えしました。


写真 STによる嚥下食・食事介助のブース

Nsのブースでは摂食・嚥下障害看護認定看護師により、口腔ケアとリスク管理についてお伝えしました。口腔ケアではモデル人形を相手に、歯ブラシなどのケアグッズを用いて実際に参加者の方々に人形の口を綺麗にしてもらいました。数々の便利グッズの違いを体感しながら、気にかけたい注意ポイントまで具体的にお伝えしました。


写真 Nsによる口腔ケアのブース

PTのブースでは誤嚥をした後の排痰介助について呼吸リハの観点からお伝えしました。参加者の方々にヨガマットに横になっていただき二人一組で排痰介助を行う実践的な内容となりました。また、誤嚥をしても肺炎にならない基礎体力を日々蓄えておくことが重要であり、有酸素運動のHome programの例もお伝えしました。


写真 PTによる咳嗽・排痰介助のブース

これら4つのブースをグループごとに参加者全ての方が回っていただき、講師の間近で細かい話をお伝えすることができました。初めから最後まで2時間の間に非常に濃い内容をギュッと詰め込んだ会でしたので、参加者の方々には実に有意義であった反面、もっと時間が欲しかったというご意見もいただきました。それだけ参加された皆さんにとって必要と感じ向上心の高まる意見を寄せていただいたことに、この会の大きな手応えを感じました。

今回の勉強会は「誰もがすぐに使える知識と技術を持ち帰っていただく」ことを目的としていましたが、一人の患者さんに対しいかに多角的に多職種が関わり成し遂げることが大事かということを感じ取っていただいた方も多かったようです。「普段は他部門の専門性をよく知らなかったのでそれがわかってよかった」などの感想をいただき、急性期でも在宅期であっても誰もが行き詰まった際に気づいて専門家への相談にすぐつなげられるような多職種間での連携意識に大きく繋げることができたようです。

今後も、施設間内外の連携、多職種間での連携を充実させ患者さんに実のある医療が提供さるべく、顔の見える勉強会を開催していきたいと思います。

G7(MD)

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