みなさん、こんにちは。今回は、パーキンソン病患者さんの生活動作のちょっとした工夫についてお話しします。
パーキンソン病の代表的な運動症状に、安静時振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢反射障害があります。
パーキンソン病患者さんは、これら運動症状によって寝返りや起き上がり、歩行、身辺動作など、日常生活動作において、やりづらさ感じます。実は、困りごとが出現する要素は、運動症状だけではありません。
パーキンソン病では早期より、遂行機能、視空間認知、注意機能を中心とした認知機能も影響してくると言われています。
- 遂行機能:計画を立て、物事を実行していく機能。情報処理が遅くなったり、着替えのような複数から構成される系列動作、家事などの同時進行の並列した動作において、順序立ててできなかったり、切り替えに時間がかかるようになります。
- 視空間認知:コントラストの感度、奥行きなどの視知覚、ボディイメージ、運動の知覚が低下します。いわゆる、視空間と身体情報の、脳での統合が上手くいっていないことから起こります。例えば、目的の手前ですくんでしまう、着替えで手を後ろに回してズボンをあげるとお尻でひっかかる。これらは、運動症状も関係するが、視空間認知の要素も関係しています。
- 注意機能:動作の切り替えがスムーズにできなかったり、家事などの並列した動作において、それぞれ注意を分配して作業をすすめられなかったりします。
生活動作においてどのような対策をとるとよいか、3つの戦略を紹介します。
- 動き・動作の分割
パーキンソン病では、無動の影響により、上肢・下肢の協調的な動きや反復運動が上手くいかず、また遂行機能の低下により動作の切替えがスムーズにいかないことが多いです。系列動作を単純な運動に分解する、複数のカテゴリーで構成されている動作を分割します。
例)起き上がりには、身体の関節の動き、ひとつひとつに分解する。
トイレに行くまでの動作で、立つ、歩く、止まるに分割する。
- 意識化
分割した動きや動作のひとつひとつに注意を向けることです。本来、寝返りや起き上がりなどの基本動作、歩行、着替、家事などの日常生活動作は、補足運動野や前頭前野、大脳基底核などがスムーズに連携を取り合うことによって、これらの動作を無意識的に行えています。しかし、パーキンソン病では基底核や線条体の機能低下により、この神経のループが悪くなり、自動的に行えた動作が、無意識下では上手くできなくなるため、意識的な運動、動作に切り替えることが必要になります。
- 感覚情報の活用
外的キュー(視覚情報、体性感覚、聴覚)の利用によって、即時的に動作が改善することはよく知られ、特に歩行障害の改善に有効とされています。視空間認知の観点からみると、パーキンソン病では、ボディイメージの低下により視空間と自身の身体情報との統合が上手くいかなくなります。ですので、視覚で捉え、触ることで、体に情報をしっかりと入力させ、物と体の位置関係を確認することが大切です。
動作をちょっと工夫するだけでも、まだまだできることがあると思います。
今回のお話が、少しでもお役に立てたらうれしいです。
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