東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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「寝たきりなのに足はつっぱる」ときの対処法【患者・家族向け】

2016年12月31日 | 紹介
勝手に足がつっぱる「痙縮」
脳卒中やALS(筋萎縮性側索硬化症)の方など脳の神経に異常を来す病気の中には,重症度にもよりますが,無意識的に足がつっぱってきてしまうことがあります.
もちろん,すべての人でみられる訳ではないですが,本人の意識があろうとなかろうとものすごく強い力で足が伸びたまま力が抜けにくくなります.
これは「痙縮」と呼ばれる現象で,脳から足に至る神経の異常によって起こります.
そのメカニズムなどの話は本題から逸れるので割愛しますが,
この痙縮は,本人も介助者もコントロールすることが難しく,着替えや寝返りなどを邪魔しますし,足が伸びたまま固まってしまうという事態にもつながります.
そこで今回は,家族やヘルパーさんなどがつっぱった足をどうにか曲げてあげたいと思った場合のアドバイスについて書いていきます.
参考にしていただいて,「たまにはしっかり足を曲げてあげよう」という機会を作っていただければと思います.

つっぱった足をいかに曲げるか
医学的にみれば専門的な方法もあるわけですが,今回はご家庭で簡単にできるテクニックを3つご紹介します.

・ 足の裏をくすぐる
これは何てことない単純な方法ですが,誰もが想像してみれば,足の裏をくすぐられると足を曲げて刺激から逃げるような反応をすることは理解できると思います.
専門的には屈筋反射(屈曲反射)といって,頭で意識しないいわゆる反射の一つです.
一旦足が曲がれば,その後は足を深く曲げるようにゆっくりと曲げていきます.
痛みのない範囲でなるべく深く折り曲げてあげましょう.
ただし刺激が強いようならあまり積極的に行うべきではありません.

・ 足の指を折り曲げながら足を曲げる
文章で書かれてもイメージしづらいかもしれませんので,下に写真を載せました.
これは専門的にはマリー・フォア反射(Marie-Foix reflex)といって,健常な人ではなにも起こりません(経験がないのでなおさらイメージしづらいかもしれません).
足の指を全体的に折り曲げてあげると,足のつっぱりがわずかに緩みます.
この機会に足を曲げると抵抗が少ないまま足が折り曲がるかもしれません.


写真1 足の指を折り曲げながら足を曲げる(マリーフォア反射)

・ ジワジワと足を曲げ続ける
このつっぱりの特徴の一つとして,緩やかなスピードで動かしてあげると筋肉が緩みやすいという特徴があります.
つまり,気長にゆっくりと曲げ続けるように力をかけ続けてあげると足も観念したように少しずつ曲がり始めます.
ある程度曲がってくればあとは簡単に曲がってくるはずです.


写真2 ジワジワと足を曲げ続ける

これらは人によって利く人もいれば,利かない人もいます.
また,仮に関節自体が硬くなっている場合には,筋肉が緩んでも足があまり曲がらない可能性も考えられます.
なので,試しにやってみるといった程度の単なるテクニックの一つとして考えてください.

せっかく曲げた足をどうするか
上に書いたような方法でせっかく足が曲がっても,すぐに伸ばしてしまってはもったいないですよね.(意味がないわけでは決してないですが).
曲げた足をそのままの位置で保てれば,伸びずに曲がったままでいてくれることが期待できます.
なので最も単純な方法を考えると,クッションや枕,丸めた座布団などを膝下に置いておくのがよいでしょう.
もちろん,膝が曲がる機能がついた電動ベッドを使用していれば,それで代用しても問題ありません.
膝を曲げても角度が浅いと伸びてしまうことがあるので,なるべく膝が深く曲がるようにするのがポイントです.
また,もし介助してでもベッド端に座れれば足は曲がりますし,車いすなど座った姿勢がとれれば足は曲がった状態になります.

もし機会があれば,この記事を参考に試してみてください.

M1(PT)

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