旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

続々・安い理由

2006年02月07日 | 旅行一般
 前に書いたような”見えないところ”に利益分を押し込む事によって発生するこの仕事の問題点。これは”気持ち”の問題なので、目に見える”金額”ということだけを評価基準にする人にはあまり関係のない話です。

 社会人であれば判ると思いますが、旅行会社の人間もたいていの場合、”賞与査定”とか、”人事考課制度”などがあるわけです。第一線で働いているスタッフにとっては”取扱高””送客人数””利益率”、それからマイナス材料として”クレーム”あたりが人事考課の対象でしょう。
 
 旅行商品そのものの利益率が非常に低い現状では、利益率を積極的に稼ぐには例えばオプショナルツアーをお薦めしたり、そういった付加販売に努力することなのですが、そのほかに天から与えられる大逆転に”キャンセル料”や”変更料”があります。

 会社の管理体制が進んでいる会社であれば、毎月、あるいは毎週、各人の営業成績は集計されます。(これ、私自身の体験)。月末頃に”ああ~今月はちょっと利益率やばいなぁ~”なんて思っているときにキャンセルが発生し、キャンセル料や変更料の利益率が実際に旅行に出発されるよりも高かったら、小躍りせんばかりでしょう。あなたが残念なことに旅行を断念したとき、それを手配している側はガッツポーズかもしれないわけです。また、そんなときに予約を申し込みに来たお客様の応対をしている腹の中では”何とかこの人もキャンセルになってくれないかなぁ~”位のことは優秀な人間なら考えているでしょう。(私も会社員時代は考えたことありますよ。)あなたが旅に胸躍らせているとき、手配する側はあなたのキャンセルを心から願っているかもしれないという話です。

 もちろん、みんなの話ではありませんから、あなたが現在利用されている旅行会社がそうだとは限りません。一方で、こういう体制が現在航空会社でも、旅行会社でもサプライヤーでもビジネスモデルとして肯定され、確立されていることも事実です。

 私はこういうお客様と逆のベクトルで仕事をする事には抵抗があるので、結局こういうやり方をビジネスモデルとして採用することができずにいます。もちろん、取消料とか変更料は手配している側もサプライヤーに払わなければならない部分があって、丸儲けではないし、取り消しになったとしても手配を進めていることにはなんら変わりないので、ある程度の手数料をいただくことは正当だと思いますが、取消料から得た利益が、実際に出発した人から得る利益を上回った時点でお客様と手配側のベクトルが逆転してしまうではありませんか。

 実際に旅行に行く方に喜んでもらった上でそれなりに利益をいただき、行けなくなくなった人にはできるだけ払い戻しして、その人が次に行くときにそれなりに利益をいただく形で社会が成り立ってほしいなと思います。だから、料金はそれほど安くはないです。ただし、それほど高くもないんじゃないかと思っていますが・・・。

 ところで、皆さんが言う激安とか格安って具体的にはどこ行きに対して幾らくらいの話なんでしょうね?十数年前から旅行している私には今の価格は何だって激安なんですけどね。
 
 インターネットや電話で一番安い値段を一心に探して”賢い消費者”を気取るのもよいかもしれませんが、その時間を現地の情報を集めたり、現地で何をやるかを計画したり、その国に関係のある本を読んだりすることに充てて”愉快な旅行者”になるという楽しみ方あるんですけどね。楽しみ方は人それぞれです。

・・・終わり


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