あの味

外を歩けば暑く、社内で仕事をしていると寒い。
お昼時や夕方、空腹感は感じるけれど、食べたいものが思い浮かばない。
食べないとバテる、と思って食べたら胸焼け。
思うにまかせて食べずにいると、フラフラ。
一体、どうすりゃいいんだ？
と、自分の身体に問いかけてみても答えは無い。

そんな今日この頃、ある人のエッセイを読んで、今、自分が食べたいものがハッキリわかった。
その人は生まれて初めて食べたそうで、「どうです？」と訊かれて「おいしい……です、けど」と答えてしまい、「けど？」と訊き返されて、「けど」をつけなければよかった、と瞬時に後悔する。
けれども『けど、つけないと嘘になる。』
と書いていた。

そうそう、私も初めて食べた時、けして不味いとは思わなかった。
けど、手放しに美味しいッ！ とも思えませんでした。
インパクトもボリュームもあって、あの味の濃さ、冬でも食べた後は汗だくになってしまう、そしてしばらくすると何故かまた食べたくなる。
エッセイを読んで、すっかり忘却の彼方へ消えかけていた、あの味を思い出しました。
そして今、無性に食べたい。

そのお店は梅田にあったけれど、今もあるのかなぁ。
そしてこの先、いつ梅田に出て行けるか予測もつかない。
なんとか時間をやりくりして、それを食べるためだけに梅田に出るというのもなぁ。
明日の夜からは野分が来るというし、いつ梅田へ行けるだろうか。
あぁ、でも、食べたい！
食べたらバテ気味の身体もなんとかなるのではないだろうか、とさえ思う。

それは名古屋名物、味噌煮込みうどん。
梅田へ出る機会もめっきり減って忘れていたあの味を、思い出してしまった今、無性に食べたい。