日本では人が亡くなると、お棺の中に六文を入れる。
三途の川で仏さんをこっち岸から向こう岸へ輸送している舟の片道乗船料である。
昔はほんとに一文銭を六枚入れたのだと思うが、いまはたいてい、葬儀屋さんが用意してくれる紙に印刷したものである。
ところが父方の祖母が亡くなったとき、
長男の嫁であるふみちゃんおばちゃんは、姑のもしものときのため、ほんものの六文銭を用意してあった。
それを棺に入れたのだが。
父方の祖母は戦争未亡人である。
父方の祖父は、終戦したときはまだ生きていたが、引き揚げ船を待ってる間にマラリアにかかり、スマトラで亡くなった。
その祖父は三人兄弟で、姉がひとり、妹がひとり、いた。
姉が通称「長曽根のばあ」イワノちゃんで、妹がうちのばあちゃんである。
イワノちゃんにとっては弟の嫁、うちのばあちゃんにとっては兄の嫁、である父方の祖母が亡くなったとき、この小姑ふたりはまだ存命であった。
そんで、このふたりのどっちが言い出したのかは不明だが。
「仏さんに持たせたった一文銭、燃え残ったんみつけて財布にいれといたら、銭たまるなんてなあ」
「え、そうなん?」
「知らんでー。知らんけど、そんなん聞いたことあるわー」
父方の祖母が焼きあがり、さあ、骨拾いとなったとき、
イワノちゃんとうちのばあちゃんは、骨拾い用の箸で焼きたてほやほやの弟嫁(ばあちゃんにとっては兄嫁)の骨をひっかきまわして、一文銭の燃え残りを捜しまくったらしい。
これが「六文銭を捜せ! 世にもサイテーな骨拾い」事件として、親戚うちに語り継がれているのだが。
今回の一男伯父のとき、
ふみちゃんおばちゃんはやはり、一文銭を六枚、用意していた。
用意していて、葬儀屋さんが用意してきた印刷の六文銭でなく、それを棺に入れたのだが。
その骨拾いのとき。
「どのへんに入れたー?」
「このへんやったと思うんやけどなあ」
「これ、なんやろ?」
「あーっ、それ、歯医者で入れたインプラントちゃう?」
「そやわっ、そやわっ、へええええ」
「六文銭を捜せ!リターンズ」……。
調べてみたのだが、一文銭は鋳造時期により、材質にかなりの差があるらしい。
だとすれば、燃えにくい材質で鋳造された時期のものにすれば、拾える確率はかなり上がるのではなかろうか。
あと、一文銭六枚でないといけないのかなあ?
四文銭一枚+一文銭二枚=六文、とかはダメかなあ?
そんで、燃え残ったのが四文銭でも、財布にいれとくと銭貯まるのかなあ?
てか、それ以前に、そもそものテーゼ「仏さんに持たせた一文銭の燃え残りを見つけて財布に入れといたら銭たまる」そのものも本当か? 信じていいのか?
三途の川で仏さんをこっち岸から向こう岸へ輸送している舟の片道乗船料である。
昔はほんとに一文銭を六枚入れたのだと思うが、いまはたいてい、葬儀屋さんが用意してくれる紙に印刷したものである。
ところが父方の祖母が亡くなったとき、
長男の嫁であるふみちゃんおばちゃんは、姑のもしものときのため、ほんものの六文銭を用意してあった。
それを棺に入れたのだが。
父方の祖母は戦争未亡人である。
父方の祖父は、終戦したときはまだ生きていたが、引き揚げ船を待ってる間にマラリアにかかり、スマトラで亡くなった。
その祖父は三人兄弟で、姉がひとり、妹がひとり、いた。
姉が通称「長曽根のばあ」イワノちゃんで、妹がうちのばあちゃんである。
イワノちゃんにとっては弟の嫁、うちのばあちゃんにとっては兄の嫁、である父方の祖母が亡くなったとき、この小姑ふたりはまだ存命であった。
そんで、このふたりのどっちが言い出したのかは不明だが。
「仏さんに持たせたった一文銭、燃え残ったんみつけて財布にいれといたら、銭たまるなんてなあ」
「え、そうなん?」
「知らんでー。知らんけど、そんなん聞いたことあるわー」
父方の祖母が焼きあがり、さあ、骨拾いとなったとき、
イワノちゃんとうちのばあちゃんは、骨拾い用の箸で焼きたてほやほやの弟嫁(ばあちゃんにとっては兄嫁)の骨をひっかきまわして、一文銭の燃え残りを捜しまくったらしい。
これが「六文銭を捜せ! 世にもサイテーな骨拾い」事件として、親戚うちに語り継がれているのだが。
今回の一男伯父のとき、
ふみちゃんおばちゃんはやはり、一文銭を六枚、用意していた。
用意していて、葬儀屋さんが用意してきた印刷の六文銭でなく、それを棺に入れたのだが。
その骨拾いのとき。
「どのへんに入れたー?」
「このへんやったと思うんやけどなあ」
「これ、なんやろ?」
「あーっ、それ、歯医者で入れたインプラントちゃう?」
「そやわっ、そやわっ、へええええ」
「六文銭を捜せ!リターンズ」……。
調べてみたのだが、一文銭は鋳造時期により、材質にかなりの差があるらしい。
だとすれば、燃えにくい材質で鋳造された時期のものにすれば、拾える確率はかなり上がるのではなかろうか。
あと、一文銭六枚でないといけないのかなあ?
四文銭一枚+一文銭二枚=六文、とかはダメかなあ?
そんで、燃え残ったのが四文銭でも、財布にいれとくと銭貯まるのかなあ?
てか、それ以前に、そもそものテーゼ「仏さんに持たせた一文銭の燃え残りを見つけて財布に入れといたら銭たまる」そのものも本当か? 信じていいのか?