ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

電動モルセレータについて 1

2014-10-24 | 子宮筋腫

平成26年4月17日、米国食品医薬品局(FDA)が電動モルセレーターを子宮筋腫に使用することを推奨しないという声明を発表しました。電動モルセレーターは腫瘤を回収するための筒状の刃の付いた器具であり、子宮筋腫を腹腔外へ搬出するために使用されます。小さな切開部位から組織を細かく切って体外に取り除くことができ、低侵襲手術では欠かせないものですが、子宮筋腫が悪性であった場合、悪性細胞が拡散される可能性があるとして、FDAはこの装置を使わないよう勧告しました。その後、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、平成26年8月、この装置の販売中止を決定しました。

通常、子宮筋腫の診断で手術をした場合、大多数は良性ですが、FDAは350例に1例程度(0.3%)に子宮肉腫があるとしています。しかし、私たちが子宮筋腫の診断で手術をした場合に350例に1例もの割合で子宮肉腫に遭遇することはありません。FDAの根拠とするデータ(文献)の診断方法が古いのかもしれません。たとえば、米国では医療費の関係で子宮筋腫の術前にMRI検査をあまりしないようです。私の伝え聞いたところによると、MRI一回で5-10万円くらいするので子宮筋腫に対してMRI検査をすることは少ないようです。(しかも保険でカバーされない場合もあり)

本邦では、子宮筋腫の術前にMRIをしないほうが稀かもしれません。これによって、子宮肉腫などの悪性疾患は、ある程度は術前に診断されることになります。また、日本人には(アフリカ系の女性に比べると)子宮肉腫はあまり多くはないようで、1000-2000人に1人程度と推測されます。

先日、日本産科婦人科内視鏡学会が、今年の5月に緊急で行なったアンケート結果を公表しました。

子宮筋腫の術前診断で手術をした後に、術後病理診断で悪性疾患であると判明したものの割合は、

 開腹子宮全摘出術      13/13,448 (0.10%)

 腹腔鏡下子宮全摘出術    12/10,679 (0.11%)

 開腹子宮筋腫核出術      2/ 5,625 (0.03%)

 腹腔鏡下子宮筋腫核出術    4/13,545 (0.03%)

 腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術  2/ 2,674 (0.07%)

となっています。

このアンケート結果をよく見ると、33例の悪性疾患のうち子宮肉腫は15例となっていますので、実際に子宮肉腫が出るのは、もっと少なくて、子宮全摘術の場合でも1000~2000例に1例以下ではないかと思われます。子宮筋腫核出術で悪性疾患が判明する割合が小さいのは、子宮体癌や子宮頸癌が見つかることはないこと、手術の対象となる年齢層が子宮全摘術より若い人が多いということが関係していると思われます。

では、1000~2000例に1例の割合で子宮肉腫があるということ、子宮や子宮筋腫を細切除去するということ、ということをどのように考え、どのような対策をとるのかということについて考えてみたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出張三昧?

2014-10-16 | 大阪日記

先月から出張が連続しています。

9月11~13日 日本産科婦人科内視鏡学会(鹿児島)

9月19日 第2回婦人科疾患エキスパートMeeting(名古屋)

9月20日 第1回琵琶湖畔縫合結紮セミナー(草津)

10月2-4日 第27回日本内視鏡外科学会(盛岡)

10月11-12日 第37回日本産婦人科手術学会(札幌)

10月16日 東京産婦人科医会多摩ブロック(立川)

10月17日 札幌医科大学(手術デモンストレーション)

10月18日 西梅田結紮・縫合セミナー in 札幌

10月19日 北海道産科婦人科学会(札幌)

一ヶ月ちょっとの間、日本の南から北まで飛び回りました。こんなに忙しかったことは、さすがに今までありませんでした。(もちろん、病院での業務は、いつもどおりです。) 

 

写真は、名古屋の講演の時のものです。講演やセミナーでお話したり、また、飲んで語り合ったりできる機会を与えていただいたことに感謝です。ありがとうございます。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

教えることと学ぶこと

2014-10-14 | 腹腔鏡

私は婦人科医であり、腹腔鏡下手術技術認定医ですが、手術を指導する立場でもあります。講演や縫合結紮セミナーなどで、手術を教えてもいます。

指導していて感じることは、『自分が出来ていないことがわかっていない』ということです。多くの人が、何か知識や技術を上乗せしていくことが、手術の勉強や練習であると考えています。でも、本当に大事なことは、『自分が何が出来ていて何が出来ていないのか知っている』ということです。それが出来て、はじめて、知識や技術が自分の血となり肉となるものだと思います。

出来ていないことを出来ていると思ってしまうと、間違った方向に進んでしまいます。

出来ていることを出来ていないと思ってしまうと、進歩が止まってしまいます。出来ていないと思うことは、一見謙虚ですが、ただ臆病なだけかもしれません。

何が出来て何が出来ていないのか、何が分かって何が分からないのか、正確に認識することができるのならば、特別な努力をしなくても人は少しずつ前に進んでいくことができます。ただし、これは本当に難しいことです。

『良い指導とは生徒が自分の足で立つチャンスを失う事なく導く事だと私は思っています。』

Kaori先生のブログを拝見すると、自分が漠然と考えていたことが正しかったんだと感じます。単に技術を教えるだけではなく、私の生徒が自分の足で立てるように導いていけるような指導ができたらと思います。そして、私も多くのことを学ぶことができると思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする