ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

電動モルセレータについて 5 Semi-closed power morcellation 続き

2015-02-22 | 子宮筋腫

現時点で考えられる、アイソレーション・バッグを用いた電動モルセレータによる細切除去の利点と欠点は以下のとおりです。

利点

1.腫瘤の破片や血液が腹腔内に飛散しないので、万が一、癌や肉腫などの悪性腫瘍があった場合に予後が悪化するリスクが非常に小さい。

2.手術操作終了時の腹腔内洗浄が容易で迅速になる。

3.袋が膨らんで袋外の腸管が圧排されるので、電動モルセレーター操作中に腸管を巻き込んだりするようなトラブルのリスクが低くなる。

欠点

1.従来の方法より時間が少し長くかかる。1例につき、およそ20分程度手術時間が延長します。従来、1時間30分で手術できていたような場合は、1時間50分程度の手術時間になります。患者さんにとっては、あまり大きな問題ではないでしょう。

2.肥満女性・腹壁の固い未経産女性・巨大子宮筋腫などの場合、想定していたより時間が大幅に長くかかることがある。この手技ができないこともありうる。前述のようにできなかったことはありませんが、袋に入らなかった場合にどうするか考えておくことは重要です。

3.袋が破れる等のトラブルがおこる可能性がありうる。

(注)子宮筋腫核出術については現在検討中ですが、今のところ従来法による細切除去法を行なっています。もし、子宮筋腫が悪性であった場合、子宮筋腫を核出する操作そのもので腫瘍を拡散してしまう可能性が大きく、袋を用いた細切除去法を行なう利点が非常に小さいと考えられます。

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電動モルセレータについて 4 Semi-closed power morcellation

2015-02-16 | 子宮筋腫

現在、私たちは、腫瘤を飛散させない方法として、アイソレーション・バッグの中で上図のように半閉鎖的に子宮筋腫を細切除去する方法を開発しています。これは腫瘤の飛散をほぼ完全に予防できる画期的な方法であり、今後、この方法で皆さんに安心して腹腔鏡下手術を受けていただくことができるだろうと考えています。当院の腹腔鏡下子宮全摘術は、開腹による子宮全摘術に比べても、出血量が少ない、他臓器損傷などの合併症も少ない、などの利点がありますが、電動モルセレーターの使用時における腫瘍の飛散リスクも極めて低くなり、真に安全性の高い低侵襲手術が確立できつつあると思っています。

なお、子宮全摘の際の細切除去の方法は、以下のように選択します。

1.子宮が小さい場合は、経腟的にそのまま取り出す。(腟内で子宮に切開を加える場合あり。)

2.子宮が大きい場合は、摘出子宮を回収袋に入れて経腟的に細切除去。

3.腟が狭い場合、子宮が大きすぎる場合には、摘出子宮をアイソレーションバッグに入れて、経腹的に電動モルセレーターで細切除去。

4.アイソレーションバッグに入らない場合、バッグを用いた場合にスペースが狭くて操作困難な場合には、従来の方法で電動モルセレーターで細切除去。

しかしながら、現在まで3の方法(Semi-closed power morcellation法)が出来なかったことはありません。おそらく、2kgくらいまでの巨大なものでも可能だろうと思います。

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