ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

よい手術を受けるためにできること

2014-04-25 | 腹腔鏡

ときどき、患者さんから「手術までにできることはないですか?」と聞かれることがあります。

もし、体重が重いようだったら、減らしてもらった方がいいです。肥満患者は、全身麻酔のリスクが高くなると言われています。首が短かったり可動域が狭かったりして、気道の確保が難しいことが多く、気管内挿管を行なう上で不利になることがあります。また、人工換気がやりにくく、低酸素状態になりやすい、深部静脈血栓症を発症しやすい、などの問題もあります。

私たちにとって一番問題なのは、手術がやりにくくなることが多いということです。皮下脂肪が分厚いと皮膚を切開してトロッカーを腹腔内に挿入するのが難しいことがあります。また、気腹しても腹壁が持ち上がらないので、腹腔内が非常に狭くて手術操作をしにくいことが多くなります。また、内蔵脂肪が多いと腸についている(腸間膜の)脂肪が邪魔をして手術操作が困難になることがあります。これは、とくに子宮筋腫核出術においては顕著になります。

どの程度の肥満が問題かというと、

BMI 30以上→肥満 35以上→病的肥満 *BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

となり、基本的に良性疾患である程度時間に余裕がある場合は、BMIが30以下になるまでは手術を見合わせておいた方がいいだろうと考えます。

で、肥満傾向のある患者さんには体重を減らすよう、お勧めするわけです。どか食いや間食をしている人は食事制限をするのも大事なんですが、できれば、よく運動していただきたいと思います。とくに有酸素運動をお勧めします。できるだけ長時間ゆっくりジョギングするとか、無理だったら早足で2時間くらい歩くとか。もちろん、ヨガやピラティス、エアロビクスなどもいいんですが、毎日出来ることとなると、走るか歩くかがお手軽で良さそうです。ある程度、筋肉が付けば基礎代謝が亢進するので、自然に体重は減ってくるはずです。

実際、運動習慣のある方、たとえば運動系のインストラクターや舞台に立つ仕事をされている方は、お腹も膨らみやすく(おそらく腹筋も柔らかくて、よく広がる)、内蔵脂肪が少なくて腹腔内が非常に広く感じられます。

手術をする立場としては、皮下脂肪が分厚くて腹腔内が多少せまくなるのは我慢できますが、内蔵脂肪が分厚くて腸や膀胱などが術野に垂れ下がってくるのは、かなりのストレスです。手術まで2~3ヶ月あれば、ある程度は改善できますので、是非努力していただきたいと思います。もちろん、どんな状態でも安全な手術を心がけていますが、合併症の確率を少しでもゼロに近づけるために患者さんにできることもあるのです。

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第3回西梅田婦人科ラパロセミナーの御案内

2014-04-15 | 腹腔鏡

第3回西梅田婦人科ラパロセミナーのご案内

今年も健保連大阪中央病院婦人科の腹腔鏡下手術教育セミナーとして、第3回西梅田婦人科ラパロセミナーを平成26年5月24日に開催します。参加ご希望の方は、FAX(06-4795-5540)で、お名前とメールアドレスをお知らせください。

第3回西梅田婦人科ラパロセミナー

日時:平成26年5月24日(土曜日)

場所:健保連大阪中央病院

参加資格:研修医、卒後15年までの婦人科専門医(ただし、日本産科婦人科学会技術認定医は除きます。)技術認定医・卒後15年以上の方は若手医師をご紹介いただいた場合は一応参加可能です。

参加費:6,000円(懇親会費込み)

募集人員:20名程度まで(ハンズオンセミナーは初心者、初級者の方を優先させていただきます。)

プログラム

11:00~13:30 縫合結紮ハンズオンセミナー

13:50~14:20 パワーソースの原理と実践

14:20~14:40 スコープの操作

14:40~15:00 助手との連携

15:00~15:10 コーヒーブレイク

15:10~15:50 ラパロ学力テスト(仮)

15:50~16:10 卵巣嚢腫核出術

16:10~16:30 子宮筋腫核出術

16:30~16:40 コーヒーブレイク

16:40~17:40 ラパロ学力テスト 解答と解説

18:00~ 懇親会

4月16日現在、満席となりました。ありがとうございました。

以後、キャンセル待ちのみ受け付けます。

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“お疲れさまでした。” 4

2014-04-14 | 腹腔鏡

剣道や柔道、合気道などの日本の武道では『礼に始まり礼に終わる』といいます。相手に技をかけたり打ち込んだりして学ばせてもらい、相手に技をかけられたり打ち込まれることで自分の弱いところを教えてもらっている、そこには、「お願いします」「ありがとうございました」の言葉はあっても、「お疲れさまでした」の言葉はありません。

そのとき、感謝と礼節がなければ、武道は、単なる暴力、殴り合いになってしまいます。

「手術室で業務として手術を行なっているが、それ以上に学んでいる」、これが理解できない人もいるかもしれません。私たち術者は、医療行為として合法的に人の身体を切り刻むことができます。それは医師免許を持っているからではありますが、常に学び続けているからでもあります。

私は既に術者として完成されていると思われているようです。しかし、昨年手術を受けていただいた方には申し訳ありませんが、今年のほうが少し上手くなっていると思います。来年は、さらにもう少し上手くなっているでしょう。つまり、それは学び続けているからです。ですから、当然、周りの人が後輩であろうと、私は学ばせていただいたことに感謝して「ありがとうございました。」と言うのです。

もし、そこに感謝と礼節がなければ、手術は何になってしまうのでしょうか?(考えたくないですね。)

ところで、武道では、道場に誰もいなくても必ず礼をして入るそうです。では、私たち術者は、「お願いします。」「ありがとうございました。」を、誰に向かって言っているのでしょうか?

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“お疲れさまでした。” 3

2014-04-10 | 腹腔鏡

日常診療として、私たちは手術を業務として行っていますが、より高度で安全な技術を習得することを日々の手術を通して学んでいます。手術室は私たちにとって業務の場であるとともに学びの場、修行の場でもあります。

そのような場所であれば、『お願いします。』で始まり『ありがとうございました。』で終わる、というのが普通ではないかと思います。終わりの挨拶で『お疲れさまでした。』と術者をねぎらう必要があるでしょうか?術者も助手もそして周りの見学者も『ありがとうございました。』と、その場で勉強させていただいたことに対して感謝の意を表べきであろうと考えます。

そうなると、術者が『ありがとうございました。』と勉強させていただいたことに感謝の意を表しているところに、助手や見学者が『お疲れさまでした。』とねぎらう、そして勉強したことに対する感謝の意を示さずに終わる、というのは、おかしなことだと思いませんか?

そういう言葉が先に出るということは、それほど勉強にはならないのでしょう。それならそれで、術者は反省しなければなりません。

勉強になったと思ったときだけ、『ありがとうございました。』というのも変な感じがします。そもそも、勉強にならない手術というのはありません。どんなヘタクソな術者の助手をしたとしても学ぶものはあるでしょう。こんな手術でも大丈夫だったということがわかっただけでも学んだことになりますし、何かトラブルが起これば、それはそれで、ああいうことをすれば危ないということを学んだことになります。

私が言っている意味は、これが、武術や武道における修行の場であったらどうかということを考えてみればわかります。

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