ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その4

2006-02-28 | 子宮内膜症
4. 年齢
痛みについて考えることは病変についてだけではなく、年齢も考えなくてはならない。一般に痛みだけで考えてみると年齢が高いほうが予後がよいと言われている。20代の若い女性では腹膜病変では炎症が強い透明病変や赤色病変が多く、月経が30年くらいは続くことを考えれば管理はやっかいだ。しかし、30代後半~40代女性になると10-15年程度で閉経になるのでそれまでのことを考えれば痛みは管理できる。

しかし、40代女性では、癒着も強固で(経過が長いためか?)病巣の繊維化が進んでいることが多い。手術自体は非常に困難なことがある。一方、20代女性の場合は深部病変の繊維化は比較的軽く、切除しやすいことが多い。これらから考えると、40代女性の場合には多少は残ってもよし、20代女性の場合にはできるだけ攻めるというのも一つの戦略ではないかと思う。
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直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その3

2006-02-27 | 子宮内膜症
3. 腹膜病変
腹腔内に子宮内膜症の腹膜病変、とくに透明病変や赤色病変があると炎症がおこって月経痛の原因になる。これらは、ふつうダグラス窩、広間膜後葉、仙骨子宮靱帯などにできるが、子宮や直腸表面にもしばしばみられる。腹膜病変は電気焼灼やレーザー蒸散することによって治療することができる。しかし、腸管表面の病変を切除するのなら削るように切除するのが普通だ。(焼いてはいけない。術後に腸管穿孔をおこしてしまうかもしれない。)

直腸の腹膜病変(厳密にいうなら直腸漿膜の病変)であるならば、直腸漿膜を薄く削ればよいだけなので切除するのは決して難しい操作ではない。直腸穿孔のリスクは低い。しかし、削りはじめてから直腸筋層に深部病変があることに気付くこともある。全層切除になる可能性は常に考えておかなくではならない。

ただ、直腸漿膜に病変があるときには、他にも広範に腹膜病変があることがあり病変は残ってしまう。どうせ残ってしまうなら直腸に少しくらい残っても同じだろう。そういう意味では手をつけないのも選択肢のうちの一つである。
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私だけ?(4)

2006-02-26 | 腹腔鏡
最近思うこと・・・【教えてもらったことが正しいとは限らない】
上司や著名な人が教えてくれたことが後で考えてみると大嘘やん!と思うことがよくある。
信じていると痛い目に遭う・・・

これも私だけなんだろうか?
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わたしだけ?(3)

2006-02-25 | どうでもいい話
「頑張ります」という人で、本当に頑張っている人はいない・・・と思っているのは、私だけ?
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斜陽産業?

2006-02-23 | 医療全般
【潰れる会社の見分け方】
「値下げして潰れる会社はたくさんあるが、値上げして潰れる会社はない。
値下げをするということは、粗利が減ることである。その分、いままでの売り上げを稼ぐためには、値下げ率の何倍もの努力をしなければならない。つまり、忙しくなって考える暇さえなくなって、潰れてしまうのだ。身体を忙しく動かしても、利益はアップしない。頭に汗をかくことによってこそ利益はアップする。」(仕事のヒント p.103 神田昌典著)

2006年度の診療報酬は3.16%引き下げられる。(過去最大の下げ幅)しかも1990年からずっと引き下げられ続けているらしい。多くの病院で経営は難航し、人手不足は続いているにもかかわらず・・・値下げしたくないのにさせられてしまう悲しさ・・・

神田昌典氏によれば、値下げ率の何倍もの努力をしなければならず、忙しくなり考える暇さえなくなって潰れてしまうそうだ。これでは皆燃え尽きてしまう、斜陽産業じゃないか!

これからは保険診療に未来はないのかもしれない。自由診療(体外受精、UAE、MRgFUS)に走るか、国外に脱出するかしかないのか?
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直腸子宮内膜症は切除しなくてよいのか?(2)

2006-02-22 | 子宮内膜症
今日も直腸周囲の子宮内膜症による骨盤痛について考えてみる。

2. 直腸の深部病変
前回述べたように子宮内膜症の深部病変は仙骨子宮靭帯だけでなく直腸にもできることがある。直腸筋層に子宮内膜症が浸潤していることもあるし、直腸筋層内に結節性病変ができていることもある。深部病変はボリュームとしては大きくなるので、プロスタグランディンの産生が多くなり月経痛が強くなるのだろう。直腸全層切除や低位前方切除の後は月経痛は非常に軽くなる。

逆に直腸病変が広汎に残った場合、月経痛は改善しても腰の重い感じが残ることは少なくない。病巣が残れば症状も残ってしまう。長期予後も悪くなるかもしれない。

とはいうものの、切除しようとすれば全層切除(穿孔)のリスクはある。それがイヤなら手をつけないほうがいい。
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直腸子宮内膜症は切除しなくてもよいのか?

2006-02-22 | 子宮内膜症
骨盤痛に関しては直腸の子宮内膜症病巣は残ったままでもよいという意見も少なくない。実際のところどうなのだろう?

まずは骨盤痛について考えてみる。子宮内膜症があるとなぜ痛いのか?

1.仙骨子宮靭帯の病巣
Chapronのグループの報告では、深部病巣の局在を検討したところ仙骨子宮靭帯が約60%、膣20%弱、膀胱10%、腸管10%強となっていたとのことだ。これはフランスの報告なので、日本人のものとは若干異なると思う。(日本人では膀胱や尿管の子宮内膜症は少ないが直腸は多め。)しかしながら仙骨子宮靭帯に深部病巣がみとめられることが多いのは、日本も海外も同じようだ。

仙骨子宮靭帯やその周囲には骨盤神経叢が走っており、子宮の知覚神経も当然その中にある。そんなところに子宮内膜症病巣があって毎月のように病巣で出血や炎症を起こせば・・・

そりゃ、当然痛いですわぁ・・・

月経痛に対しては仙骨子宮靭帯切断(LUNA)という術式もある。しかし、子宮内膜症の骨盤痛に対しては有効性が証明されていない。仙骨子宮靭帯に病巣があるのなら切除しない限り痛いはずだ。現在、私はLUNAをしていないが、過去の経験では子宮内膜症がある場合、約半数にはあまり効果がなかった。LUNAはあまり意味がない。

それじゃ、仙骨子宮靭帯病巣はどうするのか?当然、病巣は切除しなければならない。病巣を十分切除しなければ痛みも十分とれない。仙骨子宮靭帯の病巣は排便痛や性交痛とも強く関連しているので、ここの病巣を十分切除するのは大事だ。

病巣を切除しているときに骨盤神経叢も部分的に切除しているのがわかることがある。男性だったら大変なことだが(うっ、性機能が・・・)、女性の場合問題はない。病巣が非常に深く、広汎な切除を必要とする場合には一次的に尿閉になることがあkるが、子宮癌に対する広汎子宮全摘術に比べれば軽度なものである。

ときどき、”靭帯”を切除してしまっていいのでしょうか?"と聞かれることがあります。仙骨子宮靭帯は子宮を支えている靱帯だから、子宮脱になることは・・・ありえる。

一昨年のマレーシアにおけるISGE(国際婦人科内視鏡学会)でHarry Reichの講演中に質問が出た。「脱にならないのか?」

Reichは「子宮内膜症は脱にはならない。決してなることはない」と答えていた。詳細は覚えていないが、私もかなりラジカルな子宮内膜症切除をしても性器脱を経験したことはない。おそらく子宮内膜症では直腸腟中隔や基靭帯(子宮動脈や静脈の付近)で、ある程度繊維化が起こっていて性器が下がりにくいのだろう。

話が脱線してしまった。

私は仙骨子宮靭帯の病巣をできるだけ切除すれば、骨盤痛の6~7割は解決すると思う。それじゃ、直腸の病巣はそのままでいいじゃないかって?

重症例ではダグラス窩が閉鎖して、仙骨子宮靭帯と直腸は強く癒着している。どこから仙骨子宮靭帯でどこからが直腸かわかりにくく、癒着を剥離している途中で仙骨子宮靭帯や骨盤神経叢の一部が直腸側に残ってしまうこともある。そうなると遅かれ早かれ骨盤痛は再発してしまうだろう。できるだけ病巣を切除しようとすると直腸の表面を削らなければならない。
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私だけ?(2)

2006-02-18 | 腹腔鏡
私の左手には手術によるタコがある。親指の第二関節の外側、第一関節と第二関節の中間の内側のあたり。そのために親指が曲がっているように見える(実際には曲がっていない、タコが大きいだけだ)

手術を受けたためではなく、いつも手術をしているためである。
鉗子が合わないのだろうか?それとも体内結紮を頻繁にするためか?

先日、フットマッサージに行きハンドマッサージのオプションも頼んだ。お店の人に、「何か特殊な職業をされている方ですか?」と聞かれてしまった。

左手にタコ、これも私だけ?
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私だけ?

2006-02-16 | 腹腔鏡
私はK社の持針器と鉗子を使っている。バランスや剛性がよく気に入っている。しかし、1~2年使うと壊れてしまう。ちょっと壊れるの早すぎないか?とK社の人に文句を言った。

「先生ほど鉗子を使いまくっている人はいませんから、仕方ないですよ。」

当院の腹腔鏡下手術は年間200例、それほど多いわけではない。同じくらいの症例をこなしている施設は別に珍しくはない。しかし私はほとんど体腔内のみで手術操作をしている。筋腫核出や子宮全摘では、かなり力を入れて縫合することになる。やっぱり、持針器や鉗子には負担をかけているかもしれない。

そんなもんかもしれない・・・仕方ないか・・・
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エンドメトリオーシス研究会その3

2006-02-14 | 子宮内膜症
直腸子宮内膜症の切除について発表で、「私は癒着剥離をして焼灼している。直腸の内膜症は切除していないが患者さんは骨盤痛もよくなり感謝されている。果たして病理学的に直腸に病理学的に子宮内膜症があったのはどれくらいの割合か?」という質問をされた。

どうも直腸子宮内膜症を切除する必要がないと言いたげだ。その先生は内膜症を焼灼しただけでは子宮内膜症は残ってしまうので切除するべきだというような発表を昨年していたはずだが・・・

直腸表面の組織を半層切除(直腸の漿膜と縦走筋を切除するが、輪状筋と粘膜は温存して直腸の穿孔を避ける)したものの検討では、そのほとんどに子宮内膜症組織が認められている。しかし、縦走筋にまで子宮内膜症がみとめられたものとなると3~4割くらいじゃないかな?と思う。では、直腸の内膜症は取らなくてもいいのだろうか?

問題は骨盤痛であり、狭窄であり、妊孕性だ。

次回に続く(いつのことやら)
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