前回
①ニートクリスマス番外編
石野真子 狼なんか怖くない
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クドウを実家に送った晩。
俺が家にもどると、カノは二階の部屋に入っていた。物音もせず、カノは襖の向こう側に居た。
翌日、俺は狼になれたかった。カノはなかなか起きてこない。
「こんにちわー」
「誰だ?」「はーい」
カノの弟だった!
「お父さんがクドウさんに電話したら、ここに居ると聞いて来ました」
「お久しぶりです。アララギ先輩」
「お!おう!久しぶりだな」
「車で来たのか?」
「はい」
カノの弟は陸上部の後輩で。「小学生の頃から俺のことは見たことがある」と、カノからは聞いていた。俺が中学生の頃。当時の小学生たちと陸上を一緒にやったことがあるが、カノの出身の小学生は優秀な生徒が多かった。俺の高校の陸上部はカノが居た陸上部出身で保っていると言っても過言ではなかった。
カノの時代は女子に優秀な選手が多く、俺らはそれを見てアマゾネス軍団と呼んでいた。そのアマゾネス軍団にカノも入っていた。弟の時代は史上最強と呼ばれるほど、有能選手が揃っていた。
「お姉さんちょっと呼んでくるから、待っててな」
「はい」
「カノ?」「カノ?」
「弟が迎えにきたぞ!」
「カノ?」「カノ?」
「弟?」
「アララギ先輩の家に居るっていっといてー」
「カノそれじゃ心配するじゃないか」
「二日酔いで具合悪い」
「カノ!開けるぞ?そこ」
「アララギくんに送ってもらうから、って言って」
「お姉さん、ちょっと夕べから具合が悪くなって俺の家に休みに来たんだよ」
「まだ調子よくなくてさ、これから病院に連れて行くとこでさ」
「その後に、ちゃんと僕が家に送って行くからと、お父さんにはそう言ってくれないかな?」
「はい」
「カノ?」「弟には、俺が家に送って行くからと、伝えておいたから」
「ありがと」
「あとお風呂沸かしといてー」
「はいよ」
「アララギくん、ちょっとこっち見ないでねー」
「!!」
「はいよ」
「お風呂沸いてるよ」
「ありがと」
こうして、カノとの奇妙な一日が始まった。
<ニートクリスマス番外編>
続く
次回
③ニートクリスマス番外編 わたしの首領