前回
②ニートクリスマス番外編 狼なんか怖くない
「ドライヤーありがと」
「ああ、うん、ちゃんと乾いたか?」
「うん、ありがと」
「ちょっと帰るから車かしてくれる?」
「え、あの、俺送って行くけど」
「家に行ったら、あれでしょ」
「また来るから車ちょっと貸して」
「俺は別にいいんだけどな」
「車だけちょっと貸して、大丈夫」
「まあ、心配してるだろうから早く帰ったほうがいいけどな」
「どこにも出かけないでしょ?」
「まあ、このとおりだから俺」
「じゃ、あしたまた来るから」
「仕事は?」
「終わってからだけど、今パートで早いから」
「そうなんだ」
「じゃねえー」
「う、うん」
カノは弟が迎えに来てから、夕方近くに俺の車を運転して実家へと帰った。残された俺は、再びカノとクドウが訪れる以前の生活へともどった。
俺は仕事を辞めニート生活になると、その大半はテレビモニターの前で生活をしていた。ニートという負い目もあり、外でのコミュニケーションは遮断していた。その間のコミュニケーション。そして対人関係は、オンラインゲームの世界だけで行われていた。
「こんにちはー」
「こんにちはー」
「今日はこの辺りのダンジョンを攻略しようか」
「はい」
俺がオンラインゲームを初め、全クリしてオンゲーで暇を持て余していた頃、俺の所属するギルドに新人が入ってきた。
不思議なタイミングだった。俺のギルドは独りしか居なく、先輩ゲーマーたちはなんらかの理由で抜けて居なくなった。独りになっていた時に彼女は俺の所属しているギルドに入ってきたのだ。
彼女はゲーム初心者だった。夕方頃に一度ログインして来ては、少し遊ぶと食事の時間だと言ってログアウトしていた。
夜の時間になると、再びログインして現れ、眠くなるまで俺とオンラインゲームを楽しんだ。オンラインゲームで先輩だった俺は、彼女にゲームのいろはを教え込んでいた。
石野真子 わたしの首領
わたしの首領 | |
クリエーター情報なし | |
Victor |
「食事の時間なので落ちます」
「じゃ、また夜にでも」
「はい」
「お疲れさまでした」
「おつです」
ピンポーン・・・・
「誰だ?」
「何日か泊めてくれる?」
「何日かって心配するんじゃないのか?」
「心配しないよ 近くだし」
「クドウ!」
「家で揉めたかなんかしたのか?」
「泊めてくれる?」
・・・・
(ちょっと待ってよ!)
(これ、あの時のパターンか!ええと、このままだとその後、クドウが泊まって)
(こうなって)
(こうなって)
(こうなっていって)
(カノが)
「そうだったのかー」
(ってなって)
(最後はこうなるんだよな・・・)
(おいおい!)
(これじゃまた巻き戻さないといけないじゃないか!)
(酔っていた時ではなく・・・)
カノが目が覚めた時に巻き戻して、話しをちゃんとしなければいけない。
<ニートクリスマス番外編>
続く
次回
④ニートクリスマス番外編 日曜日はストレンジャー