『DQXエンドレス・ラブ』①
前回
『エンドレス・ラブ』コウモリ④
<禁じ⑤>
トントン
「どうぞ」
「今夜はいたのか。ジェイドは?」
「元気だよ。彼女は明日フランス語のテストなんだ。だから僕も…勉強するって決めたんだ」
「おまえは成績優秀だ。でも何年か経てば数学の成績など忘れてしまう。ほんとうに記憶に残るのはもっとべつのことだ」
「そうだろ?」
「まあな」
「…幸せか?」
「ああー」
「いいことだー。おやすみ」
「おやすみ」
リリリリリーン
「もしもし。ボン ソワ アンコール…」
「トレ ビアン エ トワ」
「”バスをワナにかける”ところまで訳したわ」
「バスをなに?」
「バスをワナにかける」
「”バスをワナに”だって?”それ、語訳だよ」
「バスに間に合う”が正解だ」
「もっと集中しなくちゃ…ジェイド、愛してる…」
「私もよ。フランス人って情熱的だから、バスにワナをかけることもあるかもしれない…」
「いつまで話してる!」
「なによ兄さん」
「もう1時間以上だ!いい加減にしてほしいね!」
「キースがうるさいから、もうそろそろ切るわね。愛してるわ…」
「僕もだ」
「じゃあね、また」
「おやすみ」
「おまたせしましたーどうぞ思う存分お使いくださいませ」
「電話でデートか?来ないと思えばこれだもんな」
「勉強がありますんで失礼するわ…」
「あばずれ…」
デヴィッドは電話のあと、ジェイドが恋しくなり勉強が手につかなくなりました。
そしてまた、ジェイドの家へに走って行きました。
デヴィッドは部屋に忍び込み、寝ていたジェイドの頬にキスをすると…
ジェイドは起き上がり、デヴィッドを抱きしめました。
そしてふたりは服を脱ぎ、お互いに唇を閉じたまま重ね合いました。
「星に君の名前をつけよう」
「そうだな」
「どれ?」
「わたしの胸って小さいかしら?」
「きれいだ」
「両目が近づき過ぎてない?」
「素敵だ」
「もし、シワシワで太ったら嫌いになる?」
「ずっと愛すよ」
「先のことなんて分からないでしょ?」
「僕にはわかるさ。はじめっから分かってた。どんなことがあっても愛し続ける。ほんとだよ、君は僕のすべてだ。永遠に…君のそばにいたいんだ」
「なんだか怖いわ…あなたへの想いがとまらないの。愛は渇きのようなものだと思っていたの…満たされるものだって…けど、もっと奥深いものだった」
「朝になるわよ。帰って眠らないと」
「離れたくない。ずっと一緒にいるんだ。帰りたくない…」
「…ん!」
「起きたの?」
「ああ」
「今何時?」
「さあね、まだ早いよ」
「なんの音?」
「まさか!」
「!!」
「何してる!何を持っているんだ!」
「なんでもない」
「よこしなさい!信じられん、どういうつもりだ!」
「眠れないのよ」
「睡眠薬はダメだ!」
「眠れないのよ」
「それはこっちが言いたいことだ!あいつのせいだ!」
「あなた、そんなに怒鳴らないで」
「睡眠薬を飲もうとしていた!」
「ただ眠りたいだけなのに!…」
「だからってこんな薬に頼るのか!」
「鍵をかけておかないからよ!お願いだから怒鳴らないで、薬を飲ませてあげてー」
「俺は医者だ!これは子供が飲むような薬じゃない!」
「だったらほかのをちょうだい!」
「だいたい、男を連れ込むなんて!俺は許さんぞ!」
「もう、うるさくて眠れないよー!」
「デヴィッドを家に入れるな!」
「そんなことイヤよ!どこがイケないの?私たちはもう子供じゃないわ!」
「あいつは身勝手だ、お前を大切にしない。自分の欲望を満たすためなら、だれでもいいんだ!」
「あいつは出入り禁止だ!」
「パパは私たちに嫉妬してるだけじゃない!パパのウソつき!物分かりのいいフリをして、本音は違うのね!」
「デヴィッドはやめとけ、ムカつく」
「あなたは黙ってて!」
「なんで?僕には連れてきた責任が…」
「いいから部屋にもどって!」
「出入り禁止だ、わかったな!」
「わたしはパパのお人形なんかじゃない!言いなりになんかならないわ」
「このヒステリー娘をなんとかしろ!頼む!」
「あなた医者でしょ?興奮してるだけよ」
「娘の肩を持つのか!そもそも甘やかしたのはおまえだろう!」
「じゃーあなたはどうしたいって言うの!落ち着いてよ」
「パパが私たちの仲を引き裂く気よ!」
「あいつは出入り禁止だ!」
「でも学校に行けば会える」
「だったら田舎の学校に転校させてやるまでだ!」
「あなた、もういい加減にして!」
ドタン!!
アンはジェイドの部屋に入りドワを閉めました。
「あいつのせいで口答えするようになった」
ドタン!
ヒューたちも自分の部屋へと入って行きました。
日曜日の朝、何も知らずにデヴィッドはジェイドの家の玄関前まで訪れていました。
「おはようございます」
「やあキース?キース?…」
キースは無言でデヴィッドを横切り家の中へと入って行きました。
「おい…デヴィッド?」
「家には入るな」
「なぜです?」
「しばらく娘には会わんでくれ」
「何?」
「これは、もう決まったことだ」
「そもそもきみに自由を与え過ぎたようだ。ジェイドの成績は下がる一方だし不眠症にもなってる」
「でも僕、ジェイドから何も聞いてません」
「だから今言ってる。学期末までの30日間だ、娘には会うな」
「そんなの無理です」
「きみは何か勘違いしているんじゃないのか?ジェイドは私の娘で、まだ15歳なんだぞ。30日経ったら先のことを考えよう。分かったな…」
「中にいるんでしょ」
「家には入るな」
「話しがあるんだ」
「私の家に近づくんじゃない!」
「イヤです」
「さっさと出て行け!」
「そんなのあんまりだ!会わせてください」
「あなた、バクスターさんに電話して。3回も連絡があったわ…ここは私に任せて…」
「ねえ、デヴィッド」
「ジェイドは?会わせてください…」
アンはデヴィッドの手を握り、庭の角に案内しました。
「私を信じる?」
「はい」
「ヒューを恨まないでほしいの」
「僕らの仲を裂こうとしている」
「それはね、一度冷静になってほしいだけなの。あなたたちは少し夢中になりすぎた」
「それじゃまるで子供扱いだ。もう親の指図をうける歳じゃない!お互い真剣なんだ」
「1ヵ月?期間は?」
「30日」
「たった30日よ。そんなのあっという間じゃない。あなたは卒業試験を受け、ジェイドには期末試験がある。やっだーまるで教育ママみたい。誤解しないで、母親ぶるつもりはないのよ…」
「約束して…お願いだから。でないと、主人が逆上して何をするかわからない。そうなってからだと遅いの…何も変わったりしないから…今でも家族の一員よ」
次回
『エンドレス・ラブ』ストーブ⑥