『ヨミガエルガール・ジャスティス』➂Canon x Love S.O.S.
「水道代払い終えた」
4月になり入学式を迎えた。その入学さえ大変だった。あの笑顔(ショウガオ)男が花見工芸ハイスクールの手続きをほとんどやってなかったのだ。おかんに任せっきりとおかんもまた笑顔(ショウガオ)男に任せっきりだった。アパートの契約書だけはちゃんと書かされたが、保証人がいなかったので江川笑顔の、つまり大家である江川家の死んだおとんの姪として契約を結んだ。それが幸いしてか、花見工芸ハイスクールにも定員割れの二次募集、更に定員割れの3次募集で入学ができた。筆記試験は記憶が戻らないわたしは、ほとんど白紙に近い答案用紙で提出したけど花見工芸ハイスクールに合格した。それにしても、二次募集でも定数割れで3次募集とか、どんだけの偏差値なんだろう。学校の生徒は寡黙そうで真面目そうなのに、中身はバカなのか。笑顔(ショウガオ)男を見れば頷けるが。けれど、バイトのセリフ覚えはなぜかいい。謎だらけで4月も終わり、ゴールデンウイークに入った。
あれからクスとは会う暇がなかった。あの日以降、わたしたちは集合していない。クスの様子を見に行く暇もなかった。というのも、わたしのスマホはパスワード認証だらけでひとつひとつ開くのが大変だった。ピイピイの残高だけは残ってあり、今月はピイピイでなんとか過ごした。他はまだ開けれないアプリが沢山ある。パスワード認証をこじ開けるだけでも何日も経った。わたしの本名、つまり漢字のフルネームが思い出せない。スマホには『ベーコ』というネームはあちこちにあるのに、本名が思い出せないから今難儀している。
「クス!」
「あ、ベーコちゃん!」
「こ、こんばんはーー」
「こんばんはーー」
「今からコンビニですか?」
「いいえ。今から地元に帰る用事があって‥‥‥」
「ふーん。なんの用事ですか?」
「友達のカーナビが故障したみたいで、ちょっと見てくれと電話が入ったんだ」
「へえー。クスさん、カーナビも直せるんだーー」
「いいや、まったく素人だよ。ただ、ちょっと見てくれって言われたぐらいで、直せるかどうかもわからないんだ‥‥‥」
「ゴールデンウイークは何か予定あるのですか、ていうかここ数日何してたんですか?」
「ゴールデンウイーク初日に地元の友達とツーリングに行って。帰って来てから会社に行って。そしたらカーナビが調子悪いってさっき電話があったから。僕のせいとも思ったから、で、行くんだ」
「何度も大変ですね」
「列車が来る時間だから、行くね。じゃーー」
「あ、じゃーー」
わたしはクスの鎖骨部分を見てキュンっとなってしまった。わたしは鎖骨フェチなのか、こないだ骨壺を持ってきたからなのか、わたしの推しは骨なのかな。部屋に戻ったら骨画像検索して見て見たくなった。
「よおーー」
「やあー。ごめんね、こんな遅くに呼び出しちゃって」
「こないだ、俺何か、いじったかな。どんなふうに調子悪くなった?」
「お姉ちゃんのに乗ってたら、動かなくなって‥‥‥」
「お姉さんの?」
「なんかヤンキーがたむろしてる。ちょっとクスの腕に抱きしめて歩かせてね」
「絡まれたらすぐ逃げるからな。目え合わすなよ‥‥‥」
「う、うん。クスくんがいるから平気」
「よくここまでこれたなーー」
「田舎のゴールデンウイークはやだやだ‥‥‥」
「余計な事‥‥‥」
「これ」
「サイドカーか!」
「これに付いてるカーナビがね、動かなくなって。ミュージックも聴けるんだけど、どうしてかなーー」
「じゃー、ちょっと見せてもらうよ」
「暗くない?違う場所のほうがよかった?」
「うん、ああ、ちょっとなんでだろ‥‥‥。電源がつかないね」
「ペンライトあるよ」
「サンキュー。ちょっと借りるね。あ、なんだ、ここのソケット抜けてるからかーー」
「ソケット?」
「どっかで引っ掛けたんじゃないのか。ここを繋げば‥‥‥。ほら、起動したよ」
「ありがとう。よかったーー。お姉ちゃんに怒られるとこだった」
「それにしてもいいサイドカーだな」
「こないだはツーリングだったからね。ねえ。明日休み?」
「祝日だから休み」
「まだ時間いいでしょ?ドライブ行こ。ひとりでサイドカーはつまんないもん」
「いいよ。俺も運転したかったんだーー」
「美容師専門学校は慣れたか?」
「こないだもそんなこと言ってなかった?」
「そうだっだ」
「まだね。始まったばっかりだし。そう言えばさー。お姉さんが花見城のバイトしたいんだって」
「こないだ聞いてたルクスのバイト?」
「うん」
「さあ。ルクスに聞いて見ないと‥‥‥」
「ルリさんも知ってるでしょ?。あの人に聞いてもいいかなーー」
「俺からはルクスに話しておくよ」
「お姉ちゃん。花見で一人暮らしたいんだって」
「お姉さんが‥‥‥」
「もっと飛ばしてーー」
「五月中にもバイト始めたいらしくて」
「カフェか、なんかでバイトしてなかった?」
「今のご時世厳しくて‥‥‥」
「そっか‥‥‥」
「あ、ちょっとヤバい感じの人がいる!」
「頭がヤケに尖がってる!バンドでもやってるのかなーー」
「バンドマンにしては、バイクがなんともヤバいな」
「巻いてーー」
「いぇぇーーい」
「はしゃぐなよ」
「行者渓に行こ‥‥‥」
「あそこ水しぶきが凄いんじゃ」
「いいから行こうよ」
「舟くだりやってないぜ。たぶん」
「こないだ行きそびれた場所あるでしょ?。あそこでちょっと休もうよ。喉が湧いた」
「俺もだな」
「うわー滝すごーい」
「というか、もう服がビショビショだ。ここ、カッパか雨具着て見るところだろ‥‥‥」
「誰もいないね」
「立ち入り禁止の中に入ってきたからな‥‥‥」
「ジュースで酔った」
「おい!洋服脱いでどーすんだよ!。水に入るなよ! 危ないぞ!」
「服が乾くまで‥‥‥」
ザザザザーーーーー!!!!!!!
「だーいすきーー!!」
ザザザザーーーーーーーー!!!!
「えッ!何?」
ザザザザーーーーーーーー!!!!
「クス!!」
「わあーー!!」
わたしは諏方ココ(スカタココ)。水舎裁縫ハイスクールに通っていたときに、水舎町が地元のクスと知り合った。ハイスクール3年の冬休み、クスのジュニアハイスクール時代の友達と知り合うようになった。わたしはクスのことがひと目で気に入ってしまった。ハイスクールを卒業後、クスにはいろいろなことがあったようで、特に自慢できるような彼ではなかったが、わたしはハイスクールから美容師専門学校に入学してから、新学期を迎えたばかりでわたしはその先はまだわからない。けど、お姉さんがクスに接近していくように思えて、その前にクスにわたしの気持ちを伝えたかった。
「スキ」
「コ!‥‥‥」
「服が濡れてるから。乾くまで一緒にいて‥‥‥」
「ココ」
「寒くないか?」
「ぜんぜん‥‥‥」
クスが友達のところへ行くと言って出かけた晩。わたしは妙な夢を見た。
誰かと誰かが抱き合ってる夢だ。
その男女はわたしには見覚えのないふたりだった。けれど、男性は妙に面影がクスに似ている。ふたりが抱き合ってる時、わたしはとても心地よかった。
目が覚めて、もう一度同じ夢を見てみたいと二度寝したいくらいな朝を迎えた。そして思い出すのはクスの鎖骨だ‥‥‥。
「MJさまーー。ここにいらっしゃったのですかーー」
「ウクか。営業は捗ってるか」
「今回は釣り番組のロケに行ってまいりました」
「どうせ、餌なし設定のボウズ役だろう」
「さすがMJさま」
「ウクや、次は『こまいぬ』がくる。こまいぬシームじゃ」
「こまいぬ」
「こまいぬはいい。じつにいい」
「はいMJさま。次こそ、こまいぬシームがきますぞ」
「水ヨーヨーシームの時は熱中したなーー」
「はいMJさま。大人買い爆買いしました」
「カニシームがくると思ったのじゃがな。『二日目のカニ』に持っていかれてしまった」
「MJさま。カニシームはMJさまが巻き起こしてなんぼです」
「くやしいなーー。ウク」
「はい。くやしいでございました」
「そこのこまいぬを増やして見せてくれぬか?」
「かしこまりました。MJさま」
「おお、増えとる増えとる。こまいぬが増えとる」
「お見事お見事‥‥‥」
「見事じゃった。こまいぬ」
「MJさま‥‥‥」
「さあ、仕事に戻るぞ」
「ははーー」
「おぬし、有名になってるだっちよ」
「何が?」
「スーパースターレインジがネットで話題になってるだっち」
「いつ?」
「ここ最近、単独で行ったちか?」
「ゴールデンウイークの夜の街を歩いて見ただけだけど。これは以前からしてたことだけど」
「動画がアップされてるだっち。人助けしただっちか?」
「つい最近、道端で襲われてる人がいたから。でもいつの間に‥‥‥」
DQX 撮影動画 KAWAGANI DQX 紙芝居magNET 演目アイテム
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「被害者に名前教えただっちか?」
「訊かれたのでスーパースターレインジと」
「スーパーヒーローになってるだっちよ」
「えーー。でも、僕はヒーローじゃなくてスーパースターさ」
「おつかれさまですーー」
「誰だっち」
「新入りの諏方サエと申します。よろしくお願いします」
「クスとルリさんの知り合いで、こちらはバイトの先輩の曼陀羅ダラ男さんです」
「よろしくだっち」
「僕はルクスです」
「かねがね伺ってます。この頃は有名だそうで」
「えッ!」
「それでは、おつかれさまでした」
「おつかれだっち」
「おつかれさまでしたーー。きれいな方だなーー。もう僕のことも知ってるんだ」
「ルクスは楽屋では、ゲイで有名だっちからな」
「なんだって!!」
「ジェンダー平等だっち。偏見はないだっち。気にするなだっち」
『ヨミガエルガール・ジャスティス』➄Pleasure x Newjack x Civilization