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『ヨミガエルガール・ジャスティス』④TROUBLE

2021-05-17 00:57:26 | ヨミガエルガール・ジャスティス

『ヨミガエルガール・ジャスティス』➂Canon x Love S.O.S.

「水道代払い終えた」

 4月になり入学式を迎えた。その入学さえ大変だった。あの笑顔(ショウガオ)男が花見工芸ハイスクールの手続きをほとんどやってなかったのだ。おかんに任せっきりとおかんもまた笑顔(ショウガオ)男に任せっきりだった。アパートの契約書だけはちゃんと書かされたが、保証人がいなかったので江川笑顔の、つまり大家である江川家の死んだおとんの姪として契約を結んだ。それが幸いしてか、花見工芸ハイスクールにも定員割れの二次募集、更に定員割れの3次募集で入学ができた。筆記試験は記憶が戻らないわたしは、ほとんど白紙に近い答案用紙で提出したけど花見工芸ハイスクールに合格した。それにしても、二次募集でも定数割れで3次募集とか、どんだけの偏差値なんだろう。学校の生徒は寡黙そうで真面目そうなのに、中身はバカなのか。笑顔(ショウガオ)男を見れば頷けるが。けれど、バイトのセリフ覚えはなぜかいい。謎だらけで4月も終わり、ゴールデンウイークに入った。

 あれからクスとは会う暇がなかった。あの日以降、わたしたちは集合していない。クスの様子を見に行く暇もなかった。というのも、わたしのスマホはパスワード認証だらけでひとつひとつ開くのが大変だった。ピイピイの残高だけは残ってあり、今月はピイピイでなんとか過ごした。他はまだ開けれないアプリが沢山ある。パスワード認証をこじ開けるだけでも何日も経った。わたしの本名、つまり漢字のフルネームが思い出せない。スマホには『ベーコ』というネームはあちこちにあるのに、本名が思い出せないから今難儀している。

 

 「クス!」

「あ、ベーコちゃん!」

「こ、こんばんはーー」

「こんばんはーー」

「今からコンビニですか?」

「いいえ。今から地元に帰る用事があって‥‥‥」

「ふーん。なんの用事ですか?」

「友達のカーナビが故障したみたいで、ちょっと見てくれと電話が入ったんだ」

「へえー。クスさん、カーナビも直せるんだーー」

「いいや、まったく素人だよ。ただ、ちょっと見てくれって言われたぐらいで、直せるかどうかもわからないんだ‥‥‥」

「ゴールデンウイークは何か予定あるのですか、ていうかここ数日何してたんですか?」

「ゴールデンウイーク初日に地元の友達とツーリングに行って。帰って来てから会社に行って。そしたらカーナビが調子悪いってさっき電話があったから。僕のせいとも思ったから、で、行くんだ」

「何度も大変ですね」

「列車が来る時間だから、行くね。じゃーー」

「あ、じゃーー」

 わたしはクスの鎖骨部分を見てキュンっとなってしまった。わたしは鎖骨フェチなのか、こないだ骨壺を持ってきたからなのか、わたしの推しは骨なのかな。部屋に戻ったら骨画像検索して見て見たくなった。

「よおーー」

「やあー。ごめんね、こんな遅くに呼び出しちゃって」

「こないだ、俺何か、いじったかな。どんなふうに調子悪くなった?」

「お姉ちゃんのに乗ってたら、動かなくなって‥‥‥」

「お姉さんの?」

「なんかヤンキーがたむろしてる。ちょっとクスの腕に抱きしめて歩かせてね」

「絡まれたらすぐ逃げるからな。目え合わすなよ‥‥‥」

「う、うん。クスくんがいるから平気」

「よくここまでこれたなーー」

「田舎のゴールデンウイークはやだやだ‥‥‥」

「余計な事‥‥‥」

「これ」

「サイドカーか!」

「これに付いてるカーナビがね、動かなくなって。ミュージックも聴けるんだけど、どうしてかなーー」

「じゃー、ちょっと見せてもらうよ」

「暗くない?違う場所のほうがよかった?」

「うん、ああ、ちょっとなんでだろ‥‥‥。電源がつかないね」

「ペンライトあるよ」

「サンキュー。ちょっと借りるね。あ、なんだ、ここのソケット抜けてるからかーー」

「ソケット?」

「どっかで引っ掛けたんじゃないのか。ここを繋げば‥‥‥。ほら、起動したよ」

「ありがとう。よかったーー。お姉ちゃんに怒られるとこだった」

「それにしてもいいサイドカーだな」

「こないだはツーリングだったからね。ねえ。明日休み?」

「祝日だから休み」

「まだ時間いいでしょ?ドライブ行こ。ひとりでサイドカーはつまんないもん」

「いいよ。俺も運転したかったんだーー」

 

「美容師専門学校は慣れたか?」

「こないだもそんなこと言ってなかった?」

「そうだっだ」

「まだね。始まったばっかりだし。そう言えばさー。お姉さんが花見城のバイトしたいんだって」

「こないだ聞いてたルクスのバイト?」

「うん」

「さあ。ルクスに聞いて見ないと‥‥‥」

「ルリさんも知ってるでしょ?。あの人に聞いてもいいかなーー」

「俺からはルクスに話しておくよ」

「お姉ちゃん。花見で一人暮らしたいんだって」

「お姉さんが‥‥‥」

「もっと飛ばしてーー」

「五月中にもバイト始めたいらしくて」

「カフェか、なんかでバイトしてなかった?」

「今のご時世厳しくて‥‥‥」

「そっか‥‥‥」

「あ、ちょっとヤバい感じの人がいる!」

「頭がヤケに尖がってる!バンドでもやってるのかなーー」

「バンドマンにしては、バイクがなんともヤバいな」

「巻いてーー」

「いぇぇーーい」

「はしゃぐなよ」

「行者渓に行こ‥‥‥」

「あそこ水しぶきが凄いんじゃ」

「いいから行こうよ」

「舟くだりやってないぜ。たぶん」

「こないだ行きそびれた場所あるでしょ?。あそこでちょっと休もうよ。喉が湧いた」

「俺もだな」

「うわー滝すごーい」

「というか、もう服がビショビショだ。ここ、カッパか雨具着て見るところだろ‥‥‥」

「誰もいないね」

「立ち入り禁止の中に入ってきたからな‥‥‥」

「ジュースで酔った」

「おい!洋服脱いでどーすんだよ!。水に入るなよ! 危ないぞ!」

「服が乾くまで‥‥‥」

ザザザザーーーーー!!!!!!!

「だーいすきーー!!」

ザザザザーーーーーーーー!!!!

「えッ!何?」

ザザザザーーーーーーーー!!!!

「クス!!」

「わあーー!!」

 わたしは諏方ココ(スカタココ)。水舎裁縫ハイスクールに通っていたときに、水舎町が地元のクスと知り合った。ハイスクール3年の冬休み、クスのジュニアハイスクール時代の友達と知り合うようになった。わたしはクスのことがひと目で気に入ってしまった。ハイスクールを卒業後、クスにはいろいろなことがあったようで、特に自慢できるような彼ではなかったが、わたしはハイスクールから美容師専門学校に入学してから、新学期を迎えたばかりでわたしはその先はまだわからない。けど、お姉さんがクスに接近していくように思えて、その前にクスにわたしの気持ちを伝えたかった。

「スキ」

「コ!‥‥‥」

「服が濡れてるから。乾くまで一緒にいて‥‥‥」

「ココ」

「寒くないか?」

「ぜんぜん‥‥‥」

 クスが友達のところへ行くと言って出かけた晩。わたしは妙な夢を見た。

 誰かと誰かが抱き合ってる夢だ。

 その男女はわたしには見覚えのないふたりだった。けれど、男性は妙に面影がクスに似ている。ふたりが抱き合ってる時、わたしはとても心地よかった。

 目が覚めて、もう一度同じ夢を見てみたいと二度寝したいくらいな朝を迎えた。そして思い出すのはクスの鎖骨だ‥‥‥。

「MJさまーー。ここにいらっしゃったのですかーー」

「ウクか。営業は捗ってるか」

「今回は釣り番組のロケに行ってまいりました」

「どうせ、餌なし設定のボウズ役だろう」

「さすがMJさま」

「ウクや、次は『こまいぬ』がくる。こまいぬシームじゃ」

「こまいぬ」

「こまいぬはいい。じつにいい」

「はいMJさま。次こそ、こまいぬシームがきますぞ」

「水ヨーヨーシームの時は熱中したなーー」

「はいMJさま。大人買い爆買いしました」

「カニシームがくると思ったのじゃがな。『二日目のカニ』に持っていかれてしまった」

「MJさま。カニシームはMJさまが巻き起こしてなんぼです」

「くやしいなーー。ウク」

「はい。くやしいでございました」

「そこのこまいぬを増やして見せてくれぬか?」

「かしこまりました。MJさま」

「おお、増えとる増えとる。こまいぬが増えとる」

「お見事お見事‥‥‥」

「見事じゃった。こまいぬ」

「MJさま‥‥‥」

「さあ、仕事に戻るぞ」

「ははーー」

 

「おぬし、有名になってるだっちよ」

「何が?」

「スーパースターレインジがネットで話題になってるだっち」

「いつ?」

「ここ最近、単独で行ったちか?」

「ゴールデンウイークの夜の街を歩いて見ただけだけど。これは以前からしてたことだけど」

「動画がアップされてるだっち。人助けしただっちか?」

「つい最近、道端で襲われてる人がいたから。でもいつの間に‥‥‥」

DQX 撮影動画 KAWAGANI DQX 紙芝居magNET 演目アイテム

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「被害者に名前教えただっちか?」

「訊かれたのでスーパースターレインジと」

「スーパーヒーローになってるだっちよ」

「えーー。でも、僕はヒーローじゃなくてスーパースターさ」

「おつかれさまですーー」

「誰だっち」

「新入りの諏方サエと申します。よろしくお願いします」

「クスとルリさんの知り合いで、こちらはバイトの先輩の曼陀羅ダラ男さんです」

「よろしくだっち」

「僕はルクスです」

「かねがね伺ってます。この頃は有名だそうで」

「えッ!」

「それでは、おつかれさまでした」

「おつかれだっち」

「おつかれさまでしたーー。きれいな方だなーー。もう僕のことも知ってるんだ」

「ルクスは楽屋では、ゲイで有名だっちからな」

「なんだって!!」

「ジェンダー平等だっち。偏見はないだっち。気にするなだっち」

『ヨミガエルガール・ジャスティス』➄Pleasure x Newjack x Civilization

 

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