『ヨミガエルガール・ジャスティス』➅祈りfeat.
わたしは大豪村で15歳まで通信武闘を習っていた。
大豪村で育ったわたしは両親がいなかった。その代わり孤児院があり、そこでジュニアハイスクールまでの生活をおくった。親代わりの人はいたけど、この村ではとくにやることがなく通信武闘の稽古に打ち込んでいた。
そんな生活の中で年に一回行われる通信武闘大会。わたしはその通信武闘大会に出場することにした。
通信武道の初段試験も兼ねた大会。わたしはこの大会ではジュニアハイスクール部門で負けなし。そして有段者になると年齢制限がなくなる。わたしはこの大会が唯一のストレス発散の場でもあった。
試合当日、組み合わせが決まった。相手はわたしより大人だった。
「はじめ!」
「やあーー!!」
「やあーー!かかってきなさい!」
「こちらこそですーー」
わたしは大人相手に怯まなかった。
そして通信武闘で稽古した技を相手に披露した。
「くらえ!!」
試合は一進一退を繰りひろげた。わたしは渾身の力を相手にぶつけた。
「やめーー!!両者引き分け」
「ふうーー」
「お互い礼をして‥‥‥」
「ありがとうございました」
「ありがとうございましたですーー」
1引き分け2勝でわたしは初段試験に合格した。ジュニアハイスクール中に初段を取得できたことは順調な仕上がりだった。大会が終わり試合会場から帰ろうとしたときだった。
「そうだ!思い出した‥‥‥」
わたしはスマホのメッセンジャーアプリに書かれていた内容を読んでから。あの日のことを思い出した。あの日、試合会場である男性から声をかけられた。最初は武闘大会でのわたしの試合を観て、進学はどうするのか、を尋ねられた。しばらく話しをして、そして聞いてるうちにわたしのお母さんが会いたがってるという話しになった。
試合会場から花見キャッスルパークへ行くと、お母さんとそこで会えるという話しになった。けれどわたしは疑った。そしてすぐには返事をしなかった。
お母さんの代理人の方が熱心に話しをしてくるので、わたしは念のため大豪村の孤児院の先生にも確認をした。すると、孤児院にも連絡があったという報告があり、その後わたしは代理人の方を信用した。
花見キャッスルパークにまもなく着く頃だった。日は落ちて暗くなったので、お母さんがわたしを迎えにくるようだという話しになった。
「すれ違っても困るので、この辺りで待ってましょうか」
「あ、はい‥‥‥」
「もうじき着ますから。ちょっとトイレに行って来ますね。ここで待っててくださいな‥‥‥」
代理人の方がわたしを置いて行ったあとの事だった。
バイクから降りてきた女性が、わたしに近づきじっとわたしを見つめていた。わたしはなんて声をかけていいのかわからなかった。
「お母さん?」
「‥‥‥」
「お母さんなの?」
返事がなかった。女性の方はスマホで何かを書き込みわたしに見せた。
「えッ!‥‥‥」
女性の方はスマホにいろいろと書き込んでわたしにスマホを手渡した。
「わたしはベーコ。これは罠よ。お金はわたしのスマホから使って。これは護身用に持ってて。手にはめれば使えるから。バイクの鍵。ここの土に差し込んでおくから。すぐにでも逃げて‥‥‥」
ベーコさんはメッセンジャーアプリに次々と書き込みスマホをわたしに手渡したあと、周辺をキョロキョロと見渡した。
「なに、そこでモゾモゾしてるんですか‥‥‥」
「‥‥‥」
「あ、聞こえてないのですねーー。しかも喋れない」
「きっとくると思ってました」
「‥‥‥」
「これで終わりにしましょう。ベーコさん‥‥‥」
ベーコさんは鎌を持った何者かに襲われてしまった。
「おい!トロールだ!逃げるんだ!」
「誰かいるぞ!フラッシュライトで照らして逃げろ!‥‥‥」
「このひとは?」
「バカ!連れて行けーー!!急げ!!」
その後はわたしは気を失い、それまでの記憶が喪失した。
ゆるこまマンが世の中の注目を集めるようになった。自警団動画を次々とアップしてフォロワー数も増えていった。僕はスーパースターレインジワタシームで注目が集まったが、ゆるこまマンが積極的な動きを見せたのち、ゆるこまワタシームが次世代にくるとささやかれるようになった。しかし、ゆるこまマンの自警団ぶりは半ば強引で、危ない噂までささやかれた。
「ゆるこまマン大人気ですなーー」
「ん?」
変な男が土産物屋に入ってきた。
「そちら側のコスチュームは最近冴えないですなーー」
「観光でいらしたのですか?」
変な男は見るからに変な姿でバニーガールの衣装にアフロヘアーと、どこから見ても変な男だった。花見城の敷地内は誰かかしらなりきり衣装で歩く観光客が多いので、見るからに変な男も花見城観光でテンションが上がっているんだと、そう思った。サブカルの帝王のMJのネットドラマの影響で、サブカル族が花見城へ聖地巡礼に訪れるようにもなった。
「ぼくちゃんは雪ケンケンと言います」
「えッ。は、はい」
「ゆるこまマンの舎弟と言いますか、次のサブカル界を担う者です。こう見えてもぼくちゃんの父は野心家でしてねーー。いくつかの都市伝説があるんですよ」
「そ、そうですかーー。それは凄いですね‥‥‥」
「ぼくちゃんも都市伝説に語り継がれたい。語り継ぎタレント。継タレを熱望しています」
「ぼ、僕が今、あなたのお話しを聞いてるのも継タレの一種なのですか?」
「よくぞお気づきで!」
「えッ!」
「ぼくちゃんがここで語っているのは、次の都市伝説への序章になるのです。ぼくちゃんと都市伝説をつくりませんか?」
「な、なんの?都市伝説?」
「遺骨を盗まれたというような噂を聞きませんでしたか?」
「遺骨‥‥‥。いいえ、僕は何も‥‥‥」
「知らないのですか。ほおーー。もうすでに都市伝説になってますけどねーー」
「そ、そうなんだーー。ぼ、僕はその都市伝説は知らなかった‥‥‥」
「ドラゴン広場をご存知ですか?」
「あーー。上町地区のですね」
「難攻不落という都市伝説がある、あのドラゴン広場がぼくちゃんの縄張りなんですよ」
「縄張り?」
「最近、メルカリ族の縄張りが落ちたという都市伝説がありましてねーー。知ってます?」
「そ、その都市伝説は知ってます」
「ほおーー。そんな都市伝説は語り継がれてませんよ。まんまと引っ掛かりましたね。こう見えて謀略家なんです。ぼくちゃん。スーパースターレインジはキミでしょ?調べはついてますよ‥‥‥」
「僕は正体を明かさないんだ。ただ単に正義を貫いているだけなんだ」
「ゆるこまのアニキは義の人でしてねーー。今、正義のためならと、いっぱいいっぱいやってますよ。正直、キミが邪魔なんですって。まずは、ぼくちゃんと戦いませんか?ぼくちゃんに勝ったら、正義を譲ります。もちろん都市伝説として語り継ぎますよ‥‥‥」
「断ったらどうなるんだ?」
「メルカリ族を復活させて花見城周辺を悪党だらけにします。そしてキミの居場所も奪います」
「そうはさせない!」
「ならばドラゴン広場まで来てください」
「承知した」
「雪ケンケンがレインジたちをおびき寄せたらしいよ」
「でかした!。これであの小娘もこちらには加われまい‥‥‥」
僕はベーコの部屋の家賃の集金と今晩集合する話しをしに行った。
「ベーコ?あれ!いない。もしや、わかってて隠れたな‥‥‥」
「ベーコちゃんなら隣に行ったよーー」
「あ、そ、そうですか。ありがとうございます」
「ベーコ。今晩集合だ!」
「集金は?」
「あ、集金だ!いや、集金と集合だ!」
「今回はどこ?」
「ドラゴン広場だ。家賃はピイピイからでもいい‥‥‥」
わたしは胸騒ぎがした。記憶が戻ってけど笑顔(ショウガオ)男にはまだ本当のことは話してない。この状況がいつまで続けられるかもでも不安だ。今感じているストレスは、何かでスカッとさせておきたい。
「ちょっと寄り道してから行こ」
「どこへ?」
「ものほしざおを拾いに行く」
「ものほしざお?」
「スカッとしたいの」
「あゝ。洗濯してかーー」
「ぶん殴るの」
「おい!」
「あーー。あった!」
「この辺はものほしざおみたいなのが結構落ちてるなーー」
「あなた用にも。はい、これ持って‥‥‥」
「僕も!」
「竿やーー竿だけーー」
「勘違いされるだろ!急げ、ドランゴン広場だ!」
「竿やーー竿だけーー」
「ここだ‥‥‥」
「エンタシスマン。きてくれたの」
「やあーー。よくきたなーー」
「誰?」
「雪ケンケン。と、言っていた」
「招待してくれたから来たぜ」
「ぼくちゃんの縄張りは落とせるかなーー」
「もちろんよ」
「正義を貫くんだーー!!」
「いつまで攻め続づけれるかなーー」
雪ケンケンのドランゴン使いの防御は強固だった。複数のドラゴンを呼び集め、僕たちはそのドラゴン相手に攻め落とそうしたが終わりが見えなかった。
一方、クスのお父さんは異変に気づいたようだった。
「芭駄々さん。お話しが‥‥‥」
「坂野目君。もどってきたようだのう」
「リク君たちが大猫城で籠城戦を繰りひろげたらしいわ」
「ベチカさんはお存じでしたか」
「ベチカや。わしも聞きたいからのう。ちょっと案内してくれんかいのう」
「チリーさんのところで集まってますから。まずはそちらまで‥‥‥」
僕たちがドラゴン広場で雪ケンケンと戦ってる間、クスのお父さんを囲ってゆるこまマンの動向を話し合っていた。
「そもそもベーコという女性が発端なんだろ?何者なんだいったい」
「ベーコちゃんに何かあっただっちゃか?」
「フルニエさん、今、話し中だから黙って聞いて」
「ベーコちゃんは何度かうちの宿に泊まりに来ただっちゃ」
「フルニエさんってば!」
「ベーコという名は、ベコニアという花の名前です。ベコニアの名はフランス人のミシェル・ベコンの名に由来し。ベコンはフランス領アンティル諸島の総監であり、プリュミエを当地における植物採集者としてフランス王ルイ14世に推薦した人物でした。フランスの植物学者シャルル・プリュミエが出版した書物の中で6種をベコニア属として紹介されました」
「それが坂野目君につながるとはのう」
「ゆるこまマン。いや、ウクは今どこにいますか?」
「ウクの活動拠点である。ヤシの実山周辺でキャンプをしているとういうことです」
「アウトドア動画でも結構荒稼ぎしてますからなーー」
「彼の狙いは何?」
「ピンクチーマーをおびき寄せて、壊滅させることが、まずは第一目的だのう」
「杉林の伐採の仕事が入ってきまして行って見たんです。すると大猫に腕利き者どもが集合するといった情報が入りました。案の定、杉林の伐採はその関係者からの発注でした。今、私は園芸職人だと言って断りましたが、追って山道に通じる道路脇の花壇の手入れを頼まれました。でも、私の手づるにすべてを頼みました。報酬は上積みで。どうも私はハイリスクの仕事をとる癖がある‥‥‥」
「ピンクチーマーだけでは人手が足りんからのう。坂野目君が戻ってくれて正解だのう。大猫城で足止めしたのもよかったよのう」
「大博打になってしまいましたが、私もキャンプを張りに行きます」
「坂野目が戻り、ヤシの実山に来るそうです」
「大猫で足止めを食らったが、これでやっと五分じゃ。それ以上にこちら側に分があるわ」
「ウク。長年の親友。ここはおいらに任せておきな」
「頼もしいかぎりじゃ」
「こまいぬワタシームでサブカル界の帝王の座に就くぜ‥‥‥」
「MJめ、どこへ消えた‥‥‥」