事故から二年が経った。
その間に同僚のSが結婚退職し、
二人でご飯を食べていたのが一人になってしまった。
大きな食堂で一人ご飯は寂しいので
昼食時は職場の休憩室に残り、
持ってきたお弁当をそっと食べた。
Oがいて、三人でご飯を食べていた頃が懐かしかった。
初物を食べる時には西を向いて、
三人で笑っていた頃だ。
十代の終わりから二十代の始め、
私達はごく普通の女の子だった。
来た道はばらばらだったけど、何かの巡りで集い
それぞれの運命を辿るために又散っていく。
三人とも似ていないようでよく似ていた。
同じ年、高校は同じ学科、担任の勧めで就職し
三人とも同じ職場の人を好きになった。
誰がどの運命を辿っても不思議はなかった。
事故から二年経ってOは職場復帰を果たした。
私はそれをとても待ち望んでいたけど
同時にそれが望んでも望めないものと
薄々分かっていた。
職場復帰はOとOのお母さんの強い希望だった。
私は以前のようにOと二人で昼食を食べ、
一緒に休憩をとった。
Oは頭蓋骨の一部が無くなっているので
いつもプラスチックの骨の入った、
特殊な帽子を被っていなければならなかった。
暑いらしく、休憩時間はその帽子を脱いで
以前のように缶コーヒーを
…味覚が弱くなっているので以前と同じ微糖ではなく
売っている中で一番甘いものを飲みながら
Oは飼っている犬の話をする。
家に帰ると犬がワンと鳴く。廊下を歩くと犬がワンと鳴く。
話しかけるとワンと鳴く。階段を見上げてワンと鳴く。
来る日も来る日も話題は変わらなかった。
誰とどんな会話をしても、
Oは犬の話だけしていた。
事故後、Oの頭の中には小さな世界があって
そこには小さなシーズーが一匹住んでいた。
Oはその話をするので精一杯だったのだ。
三人のうち誰がどの運命を辿ってもおかしくなかった。
結婚退社をしたのがOで
それを見送ったのがS、
そして事故に遭ったのが私でも
何の不思議も無かったのだ。
その間に同僚のSが結婚退職し、
二人でご飯を食べていたのが一人になってしまった。
大きな食堂で一人ご飯は寂しいので
昼食時は職場の休憩室に残り、
持ってきたお弁当をそっと食べた。
Oがいて、三人でご飯を食べていた頃が懐かしかった。
初物を食べる時には西を向いて、
三人で笑っていた頃だ。
十代の終わりから二十代の始め、
私達はごく普通の女の子だった。
来た道はばらばらだったけど、何かの巡りで集い
それぞれの運命を辿るために又散っていく。
三人とも似ていないようでよく似ていた。
同じ年、高校は同じ学科、担任の勧めで就職し
三人とも同じ職場の人を好きになった。
誰がどの運命を辿っても不思議はなかった。
事故から二年経ってOは職場復帰を果たした。
私はそれをとても待ち望んでいたけど
同時にそれが望んでも望めないものと
薄々分かっていた。
職場復帰はOとOのお母さんの強い希望だった。
私は以前のようにOと二人で昼食を食べ、
一緒に休憩をとった。
Oは頭蓋骨の一部が無くなっているので
いつもプラスチックの骨の入った、
特殊な帽子を被っていなければならなかった。
暑いらしく、休憩時間はその帽子を脱いで
以前のように缶コーヒーを
…味覚が弱くなっているので以前と同じ微糖ではなく
売っている中で一番甘いものを飲みながら
Oは飼っている犬の話をする。
家に帰ると犬がワンと鳴く。廊下を歩くと犬がワンと鳴く。
話しかけるとワンと鳴く。階段を見上げてワンと鳴く。
来る日も来る日も話題は変わらなかった。
誰とどんな会話をしても、
Oは犬の話だけしていた。
事故後、Oの頭の中には小さな世界があって
そこには小さなシーズーが一匹住んでいた。
Oはその話をするので精一杯だったのだ。
三人のうち誰がどの運命を辿ってもおかしくなかった。
結婚退社をしたのがOで
それを見送ったのがS、
そして事故に遭ったのが私でも
何の不思議も無かったのだ。