私にはやりたい事があったはずだ。
広かった私の世界はいつの間にか
会社という限定された枠に入っていた。
バブルの中でも崩壊後も安定した企業であり
いつしかここに居れば安心であり、
そしてここに居なくては駄目だという
強迫観念に支配されつつあった。
やりたかった事も目標も全て二の次になっていた。
この会社で仕事をし、安定した収入を得つつ
やりたい事は趣味の範囲で。
…それで良いじゃないか。そう思い込もうとしていた。
世の中にはそうやってきちんと仕事もしつつ
上手く自分の時間を確保して
好きな事をしている人が沢山いると。
でもこの時ばかりはもう誤魔化す事が出来なかった。
「やりたい事を明日忘れてしまったら」
この思いが恐怖となって押し寄せた。
誰にでもいつでも起こり得る現実の残酷さに
一刻もぐずぐずしていられなかった。
私はこの仕事が割と好きだったし
七年間で身につけたものに未練が無いと言えば
それは嘘になるけど
もっと好きな事が、やりたい事があったのだ。
何故七年間も逃げていたんだろう。
私はOに会社を辞めるよ、と言った。
犬の話をしていたOは言葉を切り、
そうなんだ、と相槌を打って
犬が昨日何をしていたかの続きに戻った。
Oにもっと話したい事が沢山あったけど
これから先、一緒にご飯を食べてあげられなくて
ごめんねと言いたかったけど
それを聞いたOはきっとどうしてか分からなくて
ぼんやりしてしまうと思ったので
私はOに
私が居なくなったら寂しいよ!
私はOが居ない間ずっと寂しかったんだから。と言った。
Oは私の顔をみて、ちょっと笑った。
広かった私の世界はいつの間にか
会社という限定された枠に入っていた。
バブルの中でも崩壊後も安定した企業であり
いつしかここに居れば安心であり、
そしてここに居なくては駄目だという
強迫観念に支配されつつあった。
やりたかった事も目標も全て二の次になっていた。
この会社で仕事をし、安定した収入を得つつ
やりたい事は趣味の範囲で。
…それで良いじゃないか。そう思い込もうとしていた。
世の中にはそうやってきちんと仕事もしつつ
上手く自分の時間を確保して
好きな事をしている人が沢山いると。
でもこの時ばかりはもう誤魔化す事が出来なかった。
「やりたい事を明日忘れてしまったら」
この思いが恐怖となって押し寄せた。
誰にでもいつでも起こり得る現実の残酷さに
一刻もぐずぐずしていられなかった。
私はこの仕事が割と好きだったし
七年間で身につけたものに未練が無いと言えば
それは嘘になるけど
もっと好きな事が、やりたい事があったのだ。
何故七年間も逃げていたんだろう。
私はOに会社を辞めるよ、と言った。
犬の話をしていたOは言葉を切り、
そうなんだ、と相槌を打って
犬が昨日何をしていたかの続きに戻った。
Oにもっと話したい事が沢山あったけど
これから先、一緒にご飯を食べてあげられなくて
ごめんねと言いたかったけど
それを聞いたOはきっとどうしてか分からなくて
ぼんやりしてしまうと思ったので
私はOに
私が居なくなったら寂しいよ!
私はOが居ない間ずっと寂しかったんだから。と言った。
Oは私の顔をみて、ちょっと笑った。