子羊たる在りよう。

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加登の社員証は、最近多くの企業で採用されているストラップ式です。
社員証の部分をプラスチックケースに入れ、ケースに紐を通して首からぶら下げるタイプのヤツですね。
日々の業務が終わったら、デスクの引き出しに仕舞って帰るのが通例となってますが、時には外で打ち合わせをした後直帰することもあります。

今日はちょうどそんな日でした。
外出先から直帰し、部屋に入って着替えることもなく、そのまま奥さん（ずいぶん前ですが結婚しました。私事ですみません）を拾って買い物に出かけました。
もちろんスーツ姿のまま。
ホントはいけないんですが、こういう時って社員証を外すの忘れてしまいがちなんですよね。
着けてることすら忘れてマロニーやらいちごカプリコやらまいたけお買い得パックやらに目を奪われていると、
見ず知らずの男性から思いがけぬ声が。

「すいません、ロックアイスはどこに置いてますか？」

２秒ほど固まる僕。
あ、そうか。
僕のことを店員さんだと勘違いしてるんだな。
スーツも着ておまけに社員証までぶら下げてるし。
それでロックアイスの場所を聞いてるんだな。

・・・・・て言うかあなた、選りによって、ロックアイスですか？

残念ながら、思い切り知ってます、場所。
突き当たりを右に曲がり、生鮮食品コーナーを突っ切った先にありますよ。
そう。焼きたてパンコーナーの隣です。
そうそう、今日はピザパンが軒並み半額になってるパンコーナーの隣。

もっとマイナーな商品、
たとえば「レーズン好きのレーズンロールパン」とか「活ハマチお造り用短冊」とか「パリッと朝食ウインナー」とか、
あるいは「エースＤＸ乳酸菌飲料」とかの陳列場所を聞いてくれたなら逡巡なしに
「知りません、僕はこの店の者じゃないんです」と答えたものを、敢えてロックアイスですか！！
迷いますよこれは。

いっそ店員さんの振りして案内してあげようかなあとも思うけど、
本物の店員さんから「何アイツ？　どこチュー？」みたいな目で見られても困るし、
だからと言って「僕はこんな格好してますが実はただの買い物客です。ただ、この店にはしょっちゅう買い物に来てるのでロックアイスの場所なら分かります」
なんて前置きしてる間に特売の豚肉が売り切れてしまうかも知れないし。

結局無難に「い、いや、自分この店の者じゃないんで」なんてひと言で場を切り抜けてしまい、そこに至るまでの深い葛藤は歴史の闇に葬り去られてしまうことになってしまった次第でございます。
とっぴんぱらりのぷう。




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