2013年8月14日のブログ記事一覧-カトカト日記 ~霊園・墓石の株式会社加登 公式ブログ~

40度超えと墓石との半ば無理矢理な関連性を語る。

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お盆です。暑いです。
最高気温が連日40度を超えるところもあるということで、猛暑、炎暑、酷暑、・・・・・。
一体何と形容して良いのやら。
室内にいても熱中症になることがあるみたいですね。皆様十二分にお気を付けください。

さて、「40度超え」と聞いて僕が思い出すのは南インドはカルナータカ州にあるハンピという村を訪れた時のことです。
インドと言えば何処も彼処も年中暑いと思っておられる方が多いのではと思いますが、実際のところは決してそうとも言い切れず、僕が初めて降り立った首都デリーの夜などは息も白むほどの肌寒さでした。空港からのローカルバスにはガラス窓が嵌っておらず、冷気を含んだ風に乗客の大半がマフラーを首や口元に当てて寒さを凌ぐという有様。インドでは冬に当たる2月のこととは言え、日中は流石に長袖ではいられないほどの陽射しが照り付けるのですが、暑さという点では驚くに値するものではありませんでした。他に驚くべきことが多過ぎたせいかも知れませんね。


ハンピではありませんが、インド。映画「シェルタリング・スカイ」みたい?

そんな僕がハンピを訪れたのは2度目のインド訪問の際のことです。
初回はデリーやヴァラナシなどの北インドを廻ったのですが、2度目は趣向を変えタイのバンコクから映画「ムトゥ 踊るマハラジャ」でその名を轟かせたタミルナードゥ州の州都チェンナイへと飛び、ローカルバスを乗り継ぎひと月かけて南インドを周遊しました。前回の経験からインドの暑さ恐るるに足らずと思っていた僕でしたが、流石に南インドはひと味違いました。日本と違って空気が乾燥しているため体感温度はさほどでもないのですが、昼間の気温はいとも容易く40度近くまで上がり、ゲストハウスの向かいにある食堂まで歩くだけでTシャツに汗が滲んでくるのが分かります。しかも、皆さんご存知ないでしょうが、毎日毎日カレーばかり食べていると、汗がカレーのニオイになるんですね。それに気付いた瞬間、ああ僕も随分インドに順応したもんだと、妙に嬉しくなりました。

僕をハンピに向かわせたのは確か、チェンナイで知り合った日本人バックパッカーからの情報だったように思います。何をどう聞いたのか今となっては明確に思い出せないのですが、とにかくのんびり出来て良いところらしい。
ハンピなんて聞いたこともないわいとは思ったものの、1ヵ月後にチェンナイからバンコクに戻ることだけが決まっていただけで、入国後の旅程は風まかせという僕にとって悪い情報ではありませんでした。
ハンピまではチェンナイ中央駅からホスペットという町に行き、そこからローカルバスに乗り継ぐという、一聴するとシンプルでイージーな道のりなのですが、そこは流石のインド、ひと筋縄では行きません。
列車に乗り込み発車を待っていると、妙に目付きの鋭いインド人が同じ車両に乗り込んで来ました。南インドって割合目がクリクリな人が多いので、彼の眼光はひときわ印象的でした。列車は5両位の編成だったでしょうか。昼間の閑散とした時間帯で、僕の座っていた車両には彼と僕との二人だけ。後から乗ってきた彼は何故か僕のことを凝視してきます。外国人だから物珍しいという風でもなく、第一物珍しいと思えば一分の遠慮もなく話し掛けてくるのがインド人。バス待ちのターミナルで見ず知らずの人にいきなり声を掛けられたかと思うと、僕が手に持っていたミネラルウォーターを飲ませてくれと普通に言われたり、知り合って二十数秒後に「結婚してるか」とか「通っている学校の名前は」とか聞かれたりすることに何の違和感も覚えなくなっていた僕にとって、彼の不自然なまでの距離感は却って不気味でした。発車までしばらく時間があったので、試しにホームに下りて売店を冷やかしたりしてみると、彼もホームに下りてくる。
さっきとは違う車両に乗ってみると、同じ車両に乗り込んでくる。

うーん。尋常ではないこの状況。

頑張ってポジティブに解釈してみるなら、彼は僕のことを滅茶苦茶好きなのかも知れない。それはそれで困ったものですが。
常識的に解釈するなら、僕って何だか犯罪に巻き込まれそうな雰囲気。
いずれにせよ、あまり楽しくはなさそうです。列車が動き出したのを見計らい(インドの電車は発車のベルというのがありません)、僕はホームに飛び降りました(列車の時速はせいぜい1キロ位だったので、そんなに華麗なものではありません)。幸い彼が付いてくることはなく、僕は次の列車を待ってホスペットへと向かったのでした。


別の機会に行ったインドで撮影した写真ではありますが・・・。

ホスペットからハンピまでは1~2時間(良く憶えていません)ローカルバスに乗るのですが、道中はまるで舗装されておらず、想像を絶するデコボコ道が続きます。僕は最後尾の座席に陣取っていたのですが、バスが跳ねた瞬間身体が宙に浮き、天井に頭を思い切りぶつけることすらありました。車に「揺られる」とは正にこのことだな、などと考える余裕もなくただただ僕は舌を噛まぬよう意識を集中するばかりでした。例に漏れずガラス窓のないバス(あったら逆に暑くて困りますが)は、信号などあろうはずもない田舎道で時折止まったかと思うと、家畜として飼われている山羊の大群が横切るのをひたすら待つとか、およそ日本では考えられないような世界を疾走していきます。当時撮ったフィルムの大半が暑さのせいかダメになってしまいお見せできないのが残念ですが、とにもかくにも美しい農村風景でした。
美しいと言えば、インドに行くとすべての瞬間、すべての光景が濃密で、人工物も自然の動植物も何もかもひっくるめて美しい。
事物の輪郭の濃さ、彩度とコントラストの高さが、日本はもちろん東南アジア諸国とも全然違う。インドに入る前にはタイとマレーシアを訪れていたのですが、どちらが優れているということではなくインドの空気感は全くの別物です。チェンナイに着いてまず感じたのは、「色が綺麗!」ということ。何気ない路地の風景ですらベルナルド・ベルトリッチ監督の映画を観ているよう。それだけでインドに来て良かったと思いました。
ところで、彩度とコントラストの高い濃厚な色彩は、そのままインドの人々のキャラクターにも当て嵌まるようです。
皆が皆、漫画とか小説とかに出てきそうな極端な性格とヴィジュアルとを兼備している。
「俺ってちょっとヘンなのかな」と思い悩んでいる日本人は、騙されたと思ってインドに行ってみてください。自分が如何に平凡で月並みな人間であるかが分かると思います。寧ろ、自らの凡庸さに嫌気が差すかも知れません。


停車駅のホームは楽しいです。ギルバート・メレンデスそっくりな人がいます。

と言うわけで、長い長い導入に自分自身辟易し始めた僕は、いよいよハンピの暑さについて語りたいと思います。
ハンピは南インドカルナータカ州の内陸部に位置し、僕の訪れた3月の最高気温は大体45度くらいでした。砂漠地域では50度を軽く超えるインドですから、45度なんて大したことはないのかも知れません。
しかし、45度にもなると色々なことに弊害が生じるようになります。

雑貨屋さんでボールペンを買おうとしたときのこと。
日本でもそうですが、試し書きをさせてくれるお店が多いですよね。そのお店も同様で、親切な店員さんは据付のメモ用紙に試し書きを勧めてくれました。30本ほど刺さっているペンの中から無作為に1本を選び、試し書きを敢行。

ん?

暑さのせいかインクが出ないではありませんか。

45度、こんなこともあるでしょう。気を取り直して別のペンを取り、再度チャレンジ。

ん?

暑さのせいかインクが出ないではありませんか。

45度、こんなこともあるでしょう。気を取り直して別のペンを取り、再度チャレンジ。

ん?

暑さのせいかインクが(以下略)

今から思えば腹立たしいほどに暇と時間を持て余していた僕は、店にあったペンのすべてで試し書きをし、結果1本も使えるものがないことを知ったのでした。45度、恐るべし。
ちなみに、世界中のバックパッカーが集まるハンピにおいて当時最も貴重な情報は、どの店に行けば冷たいミネラルウォーターが入手できるか、というものでした。大抵の店では冷蔵庫がその役割を果たすことなく、ぬるま湯のような水が当たり前のように売られている中、稀にとても冷たい水を販売している店があり、その店はただそれだけの理由で大繁盛していました。

それから45度と言えば忘れられないのが、ハンピを流れる川沿いを散策したときのこと。
気さくなインド人の中でもとりわけ気さくな南インドの人々。歩いているだけで滅茶苦茶話し掛けてきます。
その際も気楽な散策のつもりだったのが、ピクニックに来ていた団体さんから弁当を分けてもらったり、行水をしているおじさんにお供させられたりとなかなか忙しい。おじさんは石鹸で身体を洗ったり髭を剃ったりと、完全に銭湯状態です。目が合い挨拶をしたが最後、世間話などといった導入すらもなく、「石鹸を貸すからお前も身体を洗え」と命令口調で仰るので、勢い僕も川に入らざるを得なくなります。当然水着など持っていようはずもなく、かと言って流石に全裸になるのもどうかと思い、下着1枚になって川に入りました。外は45度の炎天。気持ち悪いはずがない。
さんざ楽しんだ挙句おじさんにお礼を言って帰路に就きました。
宿までは10分ほどの道のりでしたが、道程の半ばにも満たない辺りで下着が完全に乾きました。
45度って凄い、そう思いました。


もうひとつ。
若かったせいかやけに元気だった僕は、ある日マタンガ山という、かつてヴィジャヤナガル朝の都として栄えたハンピの遺跡群を一望できる山に真昼間から登ったのでした。同行したのは現地で知り合った日本人とドイツ人。皆暑さに朦朧としながらも30分ほどかけて(そんなにかからなかったかな?)何とか山頂に達することが出来ました。眼下に広がる雄大な農村風景。大変だったけど、登ってみて良かったなあと心底思いました。
皆で記念写真など撮りつつはしゃいでいたところ、ドイツ人のビョルン君がデイバッグからおもむろにアルミ箔に包まれた塊を取り出すではありませんか。
彼はアルミの包みをゆっくりと剥がし、「山頂に着いたら皆で食べようと思って買っておいたんだ」と言います。
現れたのは、見るからに甘そうなタルト風の洋菓子でした。
屈託のない優しい笑顔にほだされた日本人2人は、いっそ倒れた方が幸せなんじゃないかと思える程の暑さ、ならびに来るべきタルトの必要以上の甘さに対して恐怖に近い感情を抱きつつ、日本で食べるよりずっと濃厚な甘い甘いタルトを、かつてないほどの作り笑いで頬張るほかありませんでしたが、疲れていたせいか、食べてみると案外美味しかったです。


・・・・・そんなこんなで長々とハンピの話をしてきましたが、ハンピのあるカルナータカ州は、良質な御影石が採掘されることでも知られているんです。例えば、吸水性が非常に低く安定した採掘量から価格、品質ともにインド産御影石としてはトップクラスの信頼性を誇る「アーバングレー」。この石も、カルナータカ州の丁場で採掘されています。何でもインドで最大規模の丁場ということで、今後しばらくはこの石を見かける機会が増えそうです。国産石にはない独特の色と石目が特徴の「アーバングレー」、ぜひ一度加登の店舗でサンプルをご覧になってみてください。


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