良かったが
盛況でゆっくりとは鑑賞できない
観覧料金 | 当日 | 前売 | 団体 |
---|---|---|---|
一般 | 1,500円 | 1,300円 | 1,200円 |
高大生 | 1,200円 | 1,000円 | 900円 |
小中生 | 500円 | 400円 | 300円 |
※団体は20名以上
※障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料
葛飾北斎(1760-1849)は江戸後期に浮世絵師として画界に登場してから90歳で没するまでの約70年間、常にあらたな画様式に挑んだ不撓不屈の画人です。世界中で広く愛されている浮世絵版画の中でも、北斎の作品は特に人気があり、日本のみならず欧米にも熱心なコレクターや研究者が多く、世界各国の美術館に作品が収蔵されています。北斎は、米国のライフ誌が選んだ「この千年で最も重要な出来事・人物」に、唯一名前の挙がった日本人でもあります。
本展は、日本が世界に誇る北斎の魅力に、世界屈指の日本美術コレクションで知られる米国・ボストン美術館の作品から迫ります。北斎研究の第一人者・永田生慈氏の監修のもと、同館の珠玉の所蔵品の中でもおどろくほど色鮮やかな作品、他では見ることができない非常に珍しい作品など、特に優れた作品約140点を厳選してご紹介します。想像をはるかに超えた「北斎」に、どうぞご期待ください。
今から5年前の2008年1月に、第1回目の「ボストン美術館 浮世絵名品展」が開催され、当初の計画通り、今回最終になる3回目の展覧を開催する運びとなりました。この3回にわたる展覧で、大半が日本初公開の厳選された優品、約450点が公開されること となります。これまでの展覧では、今まさに摺り上げたかと思わせるほど色目の鮮やかな多くの作品が、浮世絵ファンを魅了し大きな反響を呼びました。
その掉尾(ちょうび)を飾るにふさわしい企画として、「北斎展」を開催いたします。一般にはあまり知られてきませんでしたが、学術的な見地で構成された本格的な「北斎展」の嚆矢(こうし)は、1892年から93年にかけて、アーネスト・フェノロサ(1853-1908)の監修で、ボストン美術館日本部で開催された「北斎と一門展」でした。それからちょうど120年の星霜(せいそう)を経て、ボストン美術館に収蔵される北斎作品が、今度は故国の日本において一堂に公開されるのが本展なのです。
その展覧内容は、実に多彩でユニークな3部構成となっています。1章では「稀品と優品でたどる浮世絵版画70年」の表題で、北斎の70年にも及んだ画歴の中から、約110点の浮世絵版画を年代順に題材や様式などで分けて、業績全体を概観します。代表作品はもちろんのこと、従来ほとんど知られていない稀品も数多く出陳の予定です。2章は「美麗な摺物と稀覯(きこう)本」の表題により、摺物19点と版本7種が展覧されます。摺物は、いずれもクオリティの高い美麗なものばかりが厳選され、贅を尽くした木版画の芸術性を目の当たりにしていただけるものと考えています。版本は狂歌本を中心に、現在確認できる唯一のものなど、今後の研究に供すること大と思われる内容です。3章では「肉筆画と版下絵・父娘の作品」の表題で、北斎6点に娘の応為の肉筆画1点が出陳されます。これらの中には、古くから優品として評価の高い作品も含まれますが、北斎研究には欠くことのできない、第一級と見なせる資料も出陳されます。
以上のように本展は、北斎の業績を広く見渡しながらも、貴重な作品が多数出陳されるという、 「ボストン美術館 浮世絵名品展」の掉尾を飾る一大企画です。北斎芸術の理解のうえから、またとない機会と捉え、一人でも多くの観覧を切望しているところです。
本展監修 永田生慈(葛飾北斎美術館館長)
岡倉天心とともに日本美術の保護や振興に努めたことで知られるアーネスト・フェノロサは、日本から米国に帰国してボストン美術館のキュレーターとなった後、1892-93年に第1回特別企画展「HOKUSAI AND HIS SCHOOL」(北斎と一門展)を開催。世界で初めて本格的に北斎を紹介した展覧会でした。それから120年の時を経て、ついに故国日本にボストンの北斎が里帰りします。
ボストン美術館の浮世絵作品は門外不出と言われ、近年までほとんど公開されたことがなかったために保存状態が極めて良好です。今回の出品作品は、その中でも特に選りすぐられた140点。まるで、いま摺りあがったかのような色鮮やかさです。
たいへん貴重な初期の武者絵「難波六郎常任」や団扇絵「菖蒲に鯉」など、世界中でボストン美術館のみに所蔵が知られる作品が出品。また、北斎の動静を今に伝える肉筆画に加え、同館が誇る版本コレクションの中でも特に珍しい『花の兄』『盆踊』などが出品。豊富なコレクションから、これまで知られていなかった北斎が、今明らかになります。
「諸国瀧廻り」全8図、「百物語」全5図のほか、「冨嶽三十六景」、「諸国名橋奇覧」など、誰でも一度は見たことのある名作も出品。ボストン美術館所蔵作品ならではの色彩美で、北斎の代表作をお楽しみください。
西欧の透視画法を採り入れた浮絵「新板浮絵 忠臣蔵」全11図や洋風版画「阿蘭陀画鏡 江戸八景」全8図といった北斎の多彩な画業を伝える名品、高い芸術性が注目される「花鳥画」シリーズなど、非常に貴重で珍しい作品も多数出品。これまで注目されてこなかった組上絵(切り抜いて立体に組み立てる浮世絵)もご紹介。 北斎ファンも唸る充実のラインアップです。 *組上絵は会場で再現する予定です。
江戸時代後期に浮世絵師として画界に登場して以降、浮世絵の範疇に留まることなく常に新たな分野に挑み、多彩な作品を描き続けた葛飾北斎。本章では、北斎の70年にも及んだ画歴の中から、約110点の浮世絵版画を年代順に題材や様式などに分けてご紹介します。役者絵にはじまり、浮絵や洋風版画、「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」などの著名な浮世絵版画、摺物、団扇絵や珍しい組上絵にいたるまで、北斎の多彩な業績の全体を、色鮮やかなボストン美術館所蔵の名品で概観します。
「菖蒲に鯉」 文化中期(1808-13)William Sturgis Bigelow Collection遺存の少ない団扇絵の中でも、本作品は現在のところボストン美術館での所蔵のみが知られる貴重な作品。後の為一時代の作品を彷彿とさせる鮮やかな色が印象的。 |
「吉原遊廓の景」 文化8年(1811)カWilliam Sturgis Bigelow Collection北斎の作品中で最大の大判五枚続。遊廓の風俗を題材にしためずらしい作品として注目される。 |
「お岩さん」William Sturgis Bigelow Collection |
「こはだ小平二」William Sturgis Bigelow Collection |
天保2-3年(1831-32)頃江戸時代に流行した、怪談話を語る遊びを表題にした作品。全5図が出品。 |
Photographs ⓒ 2013 Museum of Fine Arts, Boston. All rights reserved. |
日本の画家として世界一有名といってもいいほど、誰もが一度は名前を聞いたことがある葛飾北斎は、宝暦10年(1760)年9月23日、江戸本所(現 東京都墨田区)に生まれました。当時の江戸は、町人文化が円熟し、鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽などの絵師による錦絵が黄金時代を迎えていました。町民として生まれ育った北斎は、幕府や大名の御用絵師とは一線を画し、90年にわたる長い生涯を一介の画工として生きました。終生質素な暮らしを貫き、酒も飲まず、煙草も吸わず、高級なお茶も飲まず粗食に徹し、身なりにもかまわず破れた服で暮らしていたといわれており、生涯で93回も転居を重ねた引越し魔であったとも伝えられています。また、「勝川春朗」としてデビューしてから有名な「北斎」、「為一」等を経て「画狂 老人卍」として没するまで、30以上の画号を使用したことでも知られ、死ぬまで自らの絵の革新のみをひたすらに追い求めた人生でした。