日本産食品の輸入緩和協議 中国、震災後の方針転換
安倍晋三首相と中国の李克強(リー・クォーチャン)首相が9日に都内で開く会談の合意内容の大枠が固まった。中国が東京電力福島第1原子力発電所事故の後に続ける日本産食品の輸入規制を緩和するため協議体を設けることで一致。中国の広域経済構想「一帯一路」でも官民で協力のあり方の協議を始める。幅広い分野で連携を強め関係改善を前面に打ち出す
中国の日本産食品の輸入規制を巡る事務レベルの協議体では、輸入停止地域の一部解除や輸入条件の緩和へ議論を始める。中国は2011年の東日本大震災での福島第1原発事故を受け、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、新潟、長野の農林水産物の輸入を停止。10都県以外も、政府作成の放射性物質検査証明書や産地証明書の提出を義務付けるなどの規制をかけていた
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、16年の日本の農林水産物・食品の輸出実績では対中国輸出額が4位の899億円だ。中国が輸入規制を緩和すれば、日本からの輸出拡大に弾みがつく
中国側はこれまで日本産食品の輸入規制の緩和に一貫して慎重だった。中国国民の間で原発事故の日本産食品への影響を懸念する声がなお強く、規制緩和が習近平(シー・ジンピン)国家主席への批判に転化しかねないと警戒していた。習政権も2期目に入り国内基盤を固めた。日中関係の改善につながる規制緩和に向けた環境が整いつつあると判断したようだ
日本側は習氏が進める一帯一路への連携姿勢を示す。第三国での協力のあり方を議論する官民の協議体を設けることで合意する見通しだ。河野太郎外相と王毅国務委員兼外相が議長を務める日中ハイレベル経済対話と絡め、外務、経済産業両省や民間企業も参加することを想定
会談では、金融危機の際などに通貨を融通しあう通貨交換(スワップ)協定の再開に向け、詰めの協議を急ぐことも申し合わせる。02年に協定を締結した後、沖縄県の尖閣諸島を巡る対立などの影響で13年に失効したままになっていた。今後、首相会談での合意を受け、日本銀行と中国人民銀行(中央銀行)が具体的な交渉に入る見通