「人工透析」の強酸性排水が下水道管を損傷

2024年12月27日 07時39分42秒 | Weblog

「人工透析」の強酸性排水が下水道管を損傷 東京都が突き止め、7年かけ問題解決に導く

東京都下水道局が、腎臓病患者の生活に欠かせない「人工透析」の後処理から生じる排水の性質が、下水道管を損傷させる可能性が高いことを突き止めた。事実確認から全国初の実態調査、検証、対策へとつなげ足かけ約7年。業界の協力も得て、東京23区内の透析医療施設の未対応ゼロを実現させた。

「取付管」と呼ばれる部分の損傷の様子。コンクリートが溶け鉄筋がむき出しになっている(東京都提供)

「見たことがない」損傷

平成29年11月、都内のビルで下水のつまりが発生。都下水道局のベテラン職員が確認に向かうと、思わず「こんな状態の管、見たことがない」とこぼすほど、損傷が進んでいた。

底は掘り返したような状態となり、コンクリートは溶け、内部の砂粒や鉄筋が露出。あるいは腐食によってあるべきはずの管が完全に姿を消している。家庭などから排水を集め、下水道管へつなぐ、「公共汚水ます」や「取付管」と呼ばれる部分だ。最悪の場合、道路陥没などにもつながる状況だったという。

このビルの下水の性質を1週間にわたって調査すると、基準を大幅に上回る強酸性排水が、決まって深夜に流れ込んでいることが判明。複数の医療施設が入居していたが、聞き取り調査を行うと、その時間に稼働していたのは人工透析を行うクリニックのみだった。

強酸性で装置洗浄

人工透析は機能しなくなった腎臓に代わって体内の老廃物などを取り除く医療行為。都下水道局の担当者は「クリニックの説明では患者の体内から排出され、装置に付着したカルシウムを除去するために強酸性の洗浄剤を使っているとのことだった」と振り返る。クリニックでは日中、患者に透析を行い、深夜を装置の洗浄にあてていた。

都の担当者にとって、人工透析の排水が下水道管にダメージを与えているという話は初耳。すぐに調査すると、当時23区内にあった全361の透析医療機関から排水が流れ込む下水道施設の約4分の1、96カ所で損傷があった。すぐに対応が必要なほど重篤なケースは8カ所にのぼった。

この時点で、人工透析の排水が下水道管を損傷させる可能性を認識していた自治体はほかにもあったが、全体調査に乗り出したのは都が初めてだった。

足かけ7年

調査結果を重く見た都は30年10月、国に情報提供し、人工透析の業界団体にも実態を指摘。洗浄剤や中和装置を取り扱うメーカーに、水質規制に見合う製品や省スペース化された装置の開発などを依頼した。業界側も人工透析による排水が下水道管を損傷させているとの認識は「当初はほとんどなかった」(担当者)という。

ボロボロの下水道管が発見されてから約7年、23区内では未対応の透析医療施設ゼロを実現。こうした点が評価され、都下水道局と日本透析医学会などが共同で、令和6年度国土交通大臣賞の一部門に選出された。(宇都木渉) 産経新聞

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 岩屋外相「中華から日本誕生... | トップ | 最新ニュース 2024年12月27日 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事