アルピニスト・野口健さん
2011.5.4 07:39
忘れられない光景がある。
宮城県気仙沼。日はどっぷりと暮れ、全国から応援に駆けつけた消防車十数台もその日の業務を終え、宿舎に引き揚げようとしていた。そのときである。
道ばたから、小学3年生ぐらいの男の子がパーッと飛び出してきた。彼はピンと背筋を伸ばし、帰路につく消防車を見送りながら一台一台に「敬礼」をしたのである。
後ろで見ていた僕は涙が出そうになった。
彼には分かっているのである。
「(消防士たちが)自分たちを、町を助けに来てくれた人たちなんだ」と…。