たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (26)

2009年04月15日 16時00分22秒 | 砂電車の冒険
砂電車の冒険 (3-5)

「奈美、渚、早く砂電車まで帰ろう!」
海人君が渚君の手を引き、奈美ちゃんがチロのリールを握り砂電車に向かって速足で歩きだすと、砂丘の砂は“ひんやり”と冷たくなっていました。
「お兄ちゃん、もう歩けないよ~」
渚君は砂の上に座り込んでしまいました。
「渚、もう少しだ、ガンバレ、ガンバレ」
海人君は砂電車を気にしながら奈美ちゃんと励ましますが、渚君は立ち上がろうとしません。
「奈美、お兄ちゃんは砂電車まで先に帰るから、足跡を辿って後から渚を連れて帰って!」
海人君は奈美ちゃんの様子を覗き込むように言いました。
「渚、大丈夫? 後から奈美と帰ろうね!」
奈美ちゃんは不安を打ち消すように、砂の上に座り込んでいる渚君に優しく手を差し伸べました。
「お兄ちゃん、チロを連れて行ってね!」
海人君はチロのリールを握ると、砂電車の停まっている砂丘駅に向かって走り出しました。
お城の見えた峠まで帰ると、大スリバチの頂に砂電車の姿が見えてきました。
「間に合った!」
海人君は“ほっと”胸をなでおろしました。
「もう少しだ、ガンバロウ!」
海人君は“ハ~ハ~”息を弾ませながらも、自分に言い聞かせるように再び走り出しました。
奈美ちゃんが渚君の手を引きながら大スリバチの頂の見える峠までさしかかると、山頂に砂電車の姿がみえました。
渚君は山頂の砂電車を見つけると少し元気を取り戻したように
「お姉ちゃん、こっちを通って帰ろうよ!」
渚君は大スリバチの山頂に向かって真っすぐ歩いて行こうとします。
「渚、ダメ!お兄ちゃんに言われた通りに帰らなくては!」
奈美ちゃんは海人君の足跡を辿って帰ろうとしますが、渚君は勝手に歩き出していきました。
「渚、しょうがないわね!」
奈美ちゃんはしかたなく渚君の後を追って歩き出しました。





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砂電車の冒険 (25)

2009年04月15日 15時57分03秒 | 砂電車の冒険
砂電車の冒険 (3-4)

海人君が手を差しのべると、砂ネズミたちが“ちょこちょこ”と近づき指を“ペロペロ”と舐めはじめました。
「奈美、渚、こっちにおいで!」
海人君が小声で囁くように呼ぶと、奈美ちゃんはチロを柱につなぎ渚君と静かに近づいてきました。
「奈美もやってみる!」
奈美ちゃんは腰をかがめると、砂ネズミの中に入り手を伸ばしました。
すると砂ネズミは手のひらから、肩、背中へと“スルスル”と登ってきます。
「ワ~くすぐったい!」
奈美ちゃんは“ニコニコ”しながら、肩に乗った砂ネズミを手に取り、優しく撫でてやりました。
渚君の周りにもたくさんの砂ネズミが集まり、渚君がホールの中を走ると一斉に後を追いかけていきます。
三人が砂ネズミとすっかり仲良しになり楽しく遊んでいると、回廊の横にある部屋の砂ネズミたちも次々に集まり、ホールは海人君たちと砂ネズミの運動場のように騒がしくなっていきました。
そのうちに砂ネズミは二本足で立ち、前足を頭まで持ち上げ輪になると、ネズミのダンスを踊りだし、海人君たちもネズミの動きに合わせ、手拍子をしながら一緒になって踊りました。
チロだけは前足を“だら~ん”と投げ出しおとなしくこの様子を眺めています。
あまりの楽しさに時間のたつのもすっかり忘れ遊んでいると、砂ネズミたちは一匹、また一匹と姿を消し、ホールは“シーン”と静まり海人君は我に帰りました。
「ワー大変だ、早く砂電車に帰らなくては!」
海人君たちが慌ててお城の外に飛び出すと、太陽は西に傾き、空は茜色に染まっていました。



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