G.G.の徒然山遊録

岐阜各務原市周辺の低山の山行記録、折々の雑感、書評などの雑文を記し、山に関する情報を提供します。

スマホGPS vs GPS専用機の比較(その2)

2017-01-12 | 登山関連情報

1.はじめに:
前回は2016.12.14に鈴鹿の入道ヶ岳山行を基に“スマホGPS「ジオグラフィカ」vs eTrex Vistaの比較”http://blog.goo.ne.jp/g-g-shimizu/e/79f7bf7c2cffdf6eea21a12017596f3e)を報告したが、今回、2017.1.7の尾張三山山行で新たな知見を得たので比較(その2)として報告する。なお、今回の考察では、基本的なナビデータであるトラック(軌跡)及び標高図(距離vs標高、経過時間vs標高)の比較のみを取り上げた。
<付記>比較したのは前回の報告と同様で、ジオグラフィカ(フリーソフト、スマホは富士通のM03)とGPS専用機「eTrex Vista」(Garmin製)である。 

2.山行コース:
名鉄小牧線の羽黒駅→大宮浅間神社→尾張富士(参拝)白山神社(参拝、昼食)→本宮山(参拝、展望)→信貴山(拝観、展望)→大縣神社→名鉄小牧線の楽田駅(歩行距離は14 km)
(付記)この間、尾張富士、白山神社、本宮山、信貴山で長時間、歩行停止している。
                 (1目盛り約600m) 
3.トラック図:

3-1ジオグラフィカの場合:
白山神社でのノイズと信貴山への往復でトラックが二重線になっているのが眼に着くが、ナビゲーション上は全く支障はない程度である。
                   (1目盛り約300m) 

3-2  GPS専用機の場合:
ジオグラフィカの場合に比べるとトラックがシャープであり、白山神社のノイズと信貴山の二重線が解消しているのが分かる。

(1目盛り約300m)

4.標高図:
一般の距離(横軸)vs標高(縦軸)図では、ジオグラフィカとGPS専用機で有意な相違は見られない。
然し、時間vs標高 図では下に示すように、相違が歴然としている。 

4-1 ジオグラフィカの場合:
尾張富士、白山、本宮山、信貴山では15分~40分間、歩行停止しているにも関らず、標高が不明瞭、或いは変動しているのが分かる。実用上は問題ないが、正確な時間分析をするには支障をきたす。

4-2 GPS専用機の場合:
尾張富士、白山神社、本宮山、信貴山の各ピークで標高が平坦であり、各ピークでの停止時間が良く分かる。この記録があれば、山行中の面倒な時間の記録は不要になる。

5.比較結果の考察:
今回の比較結果から次のことが言えよう。

(1)GPSナビとしてどちらも、実用上問題はないスマホの収納に気を使わなくても良さそうである。
(2)正確な時間分析に拘るならばGPS専用機が優れているように見える。
(3)時間vs標高の記録で差が出たのはジオグラフィカのソフトに原因があるとは断定できない
 何故なら今回の山行時、GPS専用機はザックのストラップの上の所に収納していたので、GPS電波の受信条件は良好であったと言える。 一方、スマホはズボンのポケットに入れていたので専用機に比べ、GPS電波の受信条件が不利と思われるので、収納方法の差が一因かも知れない。本件に関しては、次の山行で確認したい。

 


スマホGPS「ジオグラフィカ」vs eTrex Vistaの比較

2016-12-18 | 登山関連情報

はじめに:
最近、鈴鹿の入道ヶ岳に登りジオグラフィカ(フリーソフト、スマホは富士通のM03)と筆者が長年愛用しているGPS専用機「eTrex Vista」(Garmin製)の総合的な比較を行ったので報告する。
なお、今回の比較では、地図画面上での目標点現在位置、歩いてきた軌跡、及び現在位置の緯度、経度、高度のデジタル表示などに付いてのみ評価した。
(注記)これらの機能以外にルートナビ(前もってルートを設定しておき、現地でルートをガイダンスする)機能もあるが今回は試していない。 

1.トラック図及びトラックデータのディスプレイ:
何れの場合でも、地図画面上に目標点(ウエイポイント、WPと略す)、現在位置と歩いてきた軌跡(トラックと呼ぶ)、及び上部の窓には現在位置の緯度、経度、高度がデジタル表示される。 

(1)ジオグラフィカのディスプレイ:
トラック図及びトラックデータの集計表を下図に示す。
ディスプレイは5インチで太陽光の下でも鮮明で視認性は良好である。実用上、問題はなかった。
下図では現在位置が筆者宅であるので地図画面には表示されていないが、上部の窓には筆者宅の緯度、経度、高度が表示されている。
(注記)サイズは略、実物に近い。

(2) eTrex Vistaのディスプレイ:
トラック図とトラックデータ(Trip compと呼ばれる)を下図に示す。
スマホに比べると画面サイズが小さいので視認性が悪い点を別にすれば、筆者が長年、使用してきて実用上問題は無かった。
(注記)サイズは略、実物に近い。

 2.ウエイポイント(WP、目標点)の設定:
山行に先立って、何の設定もしなければ、周辺の地図と現在位置は表示されるが、進むべきWPが表示されていないのでナビゲーターとしては使い難い。
そこで、最小限、WP(或いはマーカー)を事前に設定しておく必要がある。

(1)  ジオグラフィカの場合
地図をスクロールしWPを画面の中心に移動し、「マーカー追加」ボタンを押すだけでよい。

(2)  eTrex Vista の場合:
パソコンでカシミール3Dを起動し、パソコンの地図上でWPを作成し、それをGPS専用機へアップロードする必要がある。

3.パソコンへのデータ転送、トラック図の描画: 

(1)ジオグラフィカのトラック図:
GPX(GPSのデータフォマット)データをGooglドライブでパソコンへエキスポートし、ダウンロードするとカシミール3Dが自動的に起動しトラック図が表示される。
実際の登山道はジグザグの個所が多いが図形は滑らかである。これは記録時間間隔が約80秒と長いため、左右の小さな動きが円滑化されるからであろう。

(2)eTrex Vista のトラック図:
カシミール3Dを起動し、GPSをパソコンにUSB接続し、GPSからダウンロードするとトラックが描かれる。
ジオグラフィカの場合と比べるとトラックが稍々ギザギザしているのが分かる。
これは記録時間間隔が20秒で、ジオグラフィカの1/4と短いために左右の動きがより忠実に記録されるためであろう。

4.コストパフォーマンス:
スマホGPSのアップリはフリーソフトで使用は無料である。
一方、GPS専用機は機種により数万円~10万円位で、可成り高価である。
従って、スマホ所有者ならば、GPS専用機はスマホGPSのライバルになり得ない。 

5.諸性能、特性の比較:
優劣の評価はコストが全てではないので、念のため、ナビゲーターとしての諸性能・特性を比較してみたが、下記の如くスマホGPSはGPS専用機に勝るとも、劣るものではないことが分かった。 

(1) ディスプレイの見易さ:
大画面、鮮明度、視認性などではスマホが圧倒的に優れている。

(2) WPの設定のし易さ:
ジオグラフィカは地図をスクロールし「マーカー追加」ボタンを押すだけでよい。
eTrex Vista の場合はパソコンでカシミール3DによりWPを作成し、アップロードする必要がありハードルは高い。

(3) パソコンへのデータ転送、トラック図の描画精度:
データの転送方法が異なるだけで、何れもカシミール3Dを必要とし、トラック図の出来栄えに差異はない。

(4) 使用時間:
最近のスマホは電池が進化し、3日位持つので、両者に実用的な差異はないようである。

(5) 物理的特性:
eTrex Vista はスマホに比べ、小型、堅牢であるのがメリットかも知れないが決定的な差ではない。小型であることは携帯性は良いがディスプレイが小さく視認性で劣り、堅牢性ではスマホも改善され実用上問題がないレベルに達している。防塵性、防水性も両者、大きな差異はないようである。   

6.まとめ:
今回の限られた、基本的な使用に関する限り、GPS専用機よりも断然スマホGPSの方が優れていると言える。但し、最終的な優劣は今後、種々の使用場面・環境、スマホの機種やOSの相違等を勘案して、精度、操作性、信頼性などの評価を俟たねばならないのは勿論である。
(追伸)
ジオグラフィカに付いて詳しく知りたい方は http://geographica.biz/tmp/gps_and_map.pdf をご参照下さい。

 

 


山岳講習会に参加して

2016-10-20 | 登山関連情報

岐阜県山岳連盟主催の山岳講習会に参加したので概要を報告する。 

日時:2016年10月16日(日)、9:00~15:00
場所:各務原市の少年自然の家、伊木山の岸壁
参会者:山岳連盟の会員及び一般、60名位
テーマ:「救急処置法(応急手当)」及び「岩場を安全に通過するために」 

1.救急処置法の概要
    講師は山岳医の服部順子先生による解説と実技で、印象に残った事項のみ記す。 

①    怪我:捻挫、骨折の場合はRICE(rest,icing,compression & elevation)が有用
   外傷の場合は圧力をかけた水での洗浄が重要
   骨折の場合の固定方法の実技
       捻挫、骨折時のテーピング実技
②    病気:熱中症、低体温症、高山病などの場合は何れも水分補給が必要
③  その他:爪下血腫の血抜き、蜂刺症にはエピペンを用意、ダニは感染症伝染の恐があるので咬まれた時
      は医療機関で処置を受ける、こむら返りには芍薬甘草湯68番が良い(腹痛にも効く)
④    心肺蘇生法:人形を使っての胸骨圧迫の練習。120回/分、5cm押し下げる。 

2.岩場を安全に通過するために
    初級、中級、上級に分かれて山岳連盟の指導員から説明と実技の指導を受ける。
    私が受講した初級の講座内容概要を記す。

①    ピレイしてもらい岸壁を三点確保で登る、ロープを使っての懸垂下降、ロープを使ってのトラバースなどを    練習した。
②    背負い搬送:テープスリング1本での背負い、ザック・雨具・ストックを使っての背負いで怪我人を搬送す     る実技指導 

3.教訓

①    安全な山行のために:
   本来、色々な知識、技能が要求されているのが良く理解できた。
     サークルのリーダーだけでなくメンバー全員の学習が望ましい。
②    救急処置法について:
      登山には潜在的なリスクが沢山あること、今まで救急処置を要する事故に遭遇しなかったのは、たまたま
      幸運であったと痛感した。
      又、自分が如何に無知であったか思い知らされた。今日の講習内容を忘れないよう時折、復習が
      必要であろう。
③    岩場を安全に通過するために:
      ロープで確保している限り、考えていたよりも岩登りは危険でないことを実感した。
      高齢者の私が、ロープを使うような岩稜にアッタクする積りはないが、懸垂降下、トラバース、転落時の
      救助などロープワークが必要な場面に遭遇する可能性は皆無でないので、学習しておくのが望ましい。

                                                   [岩登りのオリエンテーション風景]

                                                     [三点保持による岩登りの実技風景]

 

 

 


安全山行のための気象情報の活用例

2016-09-07 | 登山関連情報

1.はじめに:
私達の登山サークルでは、山行日は土曜、日曜、及び月曜日の内で、天気の良い日を選んでいます。
この際、悩ましいのは、天気予報を見て山行日を決定するプロセスです。
安全サイドを過度に重視すれば山行日が中々、決まらず苛々し、又、夜半は雨天でも間もなく天気は回復するとの予報を信じ現地に行った所、予想通りの時間に回復せず登山を中止し時間と費用をロスする時もあります。
多くの山行リーダーも同じような事態に直面していることと思います。
かような苛々や、ロスを改善するために、天気予報以外の、気象衛星、レーダーなどの観測データとそれらをスーパーコンピューターで処理した気象情報の積極的な活用が考えられます。
天気図、雨雲の状況、及び高度毎の風速の現況と今後の予測データの観察により、“より安全な山行”が担保できると考え、以下に具体的な活用例を記します。 

2.計画段階と山行当日に於ける気象情報:
信頼度の高い気象予測は2日間位であるようである。従って、山行段階により活用する気象情報は異なってくる。 

2-1.山行の2日前まで
目的地域、山塊の週間天気予報[“てんきとくらす”http://tenkura.n-kishou.co.jp/tk/kanko/kasel.html?ba=tk&type=15、及び日本気象協会tenki.jpの“10日間天気(詳細)”(www.tenki.jp)]と天気図に目を通し大凡の候補日を選定する。

2-2.山行2日前の夜:
(注)山行実施の約36時間前
天気図(予測)雨雲・雨量(長期予測)で明日、明後日の予測データを確認し、山行実施日を決定し、サークルのメンバーに連絡する。

2-3.山行前日の夜:
(注)山行実施の約12時間前
天気図(予測)雨雲・雨量(長期予測)、及び高度毎の風速(予測)で明日の予測データを確認し、要すれば山行実施日を変更し、メンバーに連絡する。

2-4.山行当日:
天気図気象レーダーによる雨雲(実況と短時間予測)、及び高度毎の風速で当日の予測データを確認し、山行実施が不適切な場合は、参集したメンバーに山行日変更を伝える。
 なお、山行時に天候が不安定な場合はスマホを持参し雨雲の様子をチェックするのが望ましい。 

3.使用する気象情報例:
2章で使用した天気図、雨雲・雲量、気象レーダーによる雨雲、及び高度毎の風速などの情報の概要を以下に示す。
なお、ここで紹介した情報源は筆者がnet.で調査し、実用的であると判断したもので、将来、更に良い情報源が見出された時には更新する所存です。 

3-1. 天気図(実況と予測):
低気圧、高気圧、前線などに注目し大局的な気象状況を把握する。
日本気象協会tenki.jp(www.tenki.jp)の場合、実況は3時間毎に更新し、予測は3回/日の更新で3日後までのデータを示す。
 

3-2. 雨雲、雨量(長期予測)

雨雲の位置、雨量を把握し山行の安全を図る。下図はGPV気象予報(http://weather-gpv.info/?guid=ON)の例で、30分毎の更新で39時間後までの予測データを示す。この予報は雲量も表示する優れものである。
右側上のスケールは雲量を、右側下のスケールは雨雲の雨量を示す。
 

 3-3. 気象レーダーによる雨雲(実況と短時間予測):
下図は日本気象協会 tenki.jp(www.tenki.jp)の雨雲データの例で、雨雲の実況(5分毎に更新)と6時間後まで予測(30分毎に更新)を表示する。
右下のスケールは雨雲の雨量である。
 

3-4. 高度毎の風向・風速(実況と予測):
下図は「世界版リアルタイム風向きマップ」(http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/gpv/wind/)の例で、各地の高度毎の風向・風を1時間毎で24時間後まで予測する。とても見易く使い勝手が良い。
右側のスケールで所要の高度を選択する。
なお、風速の危険レベルは風を遮るものがない場合は10m/sec(瞬間風速は20m/sec、台風並み)が目安となろう。