少数派シリーズ/二度と戦争を繰り返すな
「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ…」日本のいちばん長い日・新作映画化
ブログを移転したため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。
◇今後、投稿削除、あるいは大幅な修正を行う予定です。
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歴史評論家の半藤一利氏の著書「日本のいちばん長い日」の映画が、約半世紀ぶりに新作としてロードショーされます。前作は1967年上映なので、残念ながら見ていません。調べたところ、昭和天皇が降伏を伝える玉音放送の直前に自決した、阿南陸軍大臣に三船敏郎が扮していました。前作出演者の紹介は省略しますが、当時、あるいはそれ以降の名立たる名優が出演しています。個人的には、新作より前作を見たい気持ちです。原作は半藤一利氏なのですが、気の毒にも前作当時は無名(出版社社員)だったことから大宅壮一作とされていました。関心のある方は、上映の前に原作をお読み下さい。
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原作を簡単に説明すると、1945年8月・日本の敗戦が色濃く、連合国からポツダム宣言受諾を要求された時点が描かれています。政府と軍部との間で、降伏、いや一億玉砕論が渦巻き、中々、決められません。逡巡する間にも、原爆投下や各地の空襲が相次ぎました。にも関わらず、連合国への降伏受諾通告は混沌としたままです。心を痛め業を煮やした天皇陛下が、遂に御前会議でご聖断されます。それでも軍幹部・青年将校がクーデターや戦争継続を画策し、天皇の御声(詔書)をレコード録音した「玉音盤」の奪還工作、一部の軍部の妨害などが顕著になっていきます。原作は、そうした終戦直前の8月14日正午から翌15日正午の「玉音放送」までの緊迫した24時間に絞り、日本のいちばん長い日として、1時間ごとに1章・計24章の形式になっています。
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ポツダム宣言の受諾を迫られ、事に至っても政府、陸軍・海軍とも面子ばかりで右往左往、統率能力がない末期的な状況だったのですね。特に陸軍は軍組識のことしか眼中になく、天皇を奉っているのもポーズだけで、面従腹背は明らかです。古今東西、軍隊というのは面子第一、国民のことは全く考えていません。刻一刻、状況が変化していく事実を伝えるとともに、半藤氏は戦争の虚しさを訴えています。なお玉音レコードは、2組作られたそうです(数分の録音でも2枚に及ぶため、計4枚)。また15日正午にいきなり放送が始まった訳ではなく、前夜から「重大な放送あり」の予告、当日朝からは「玉音放送をする」に変わり、繰り返し予告されました。NHKの東京ラジオ局管内は放送出力を3倍に上げ、ローカル局では日中は放送を中止していたものを、急遽、出力準備させた裏話も見えてきます。
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「~堪え難きを堪え忍び難きを忍び、以て万世の為に太平を開かんと欲す~」、一般国民のほとんどが、ラジオの玉音放送で初めて天皇の御声を聞いたのです。当時の録音状態・ラジオの性能も悪く、詔書の文章も難しいため、「天皇が何を言っているのか分からない」、でも「何となく戦争が終わったことを知った」というのが、ほとんどだったそうです。私は当時生まれていませんが、「玉音放送」(数分間)だけが流されたと勝手に思い込んでいたのです。しかし半藤氏の作品を拝見すると、天皇の御声の後もアナウンサーが詔書を読み返し、さらに詔書を解説したような鈴木貫太郎総理の「内閣告諭」も読み上げています。正午から、37分半続いたそうです。
■8月15日・正午のラジオ放送内容
▽正午の時報
▽NHK・和田信賢アナウンサー 「ただいまより重大な放送があります。全国の聴取者のみなさまご起立願います」
▽情報局・下村総裁 「天皇陛下におかせられましては、全国民に対し、畏くもおんみずから大詔を宣(の)らせ給うことになりました。これより謹みて玉音をお送り申します」
▽君が代
▽詔書(昭和天皇・レコード録音盤2枚)
▽君が代
▽情報局総裁 「謹みて天皇陛下の玉音放送を終わります」
▽アナウンサー 「謹んで詔書を奉読いたします」 (玉音放送と同内容を朗読)
▽続けて同アナウンサー 「内閣告諭(鈴木貫太郎内閣総理大臣の内閣告諭)」「聖断の経過」「ポツダム宣言の内容」「受諾通告の経過」などを朗読した
■詔書・全文
私は天皇主義ではないのですが、二度と戦争を繰り返さない主旨として、この歳になって初めて詔書全部を読んでみました。半藤氏によると、偶然にも8月15日と同じ「815字」だそうです。と言ってもなかなか読めないので、ふりがなや意味を解説した書籍を借りてきました。それをブログ用に一文字ずつ入力していたのですが、PCから取り出せない字も多くて途中で断念しました。掲載サイトを、無断でコピペした次第です(詫)。(太字は投稿者が強調)
『朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所
曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス
然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス
加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル
而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ
斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ
惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス
爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所
堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ
若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム
宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ
爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ』
御名御璽
昭和二十年八月十四日
戦争終結への昭和天皇の「聖断」を美化するのは正しい歴史認識ではない