奈良田の里温泉の管理施設の古民家を玄関から裏口へ抜けて、再び集落内の道に出る際に上図の行先案内看板を見ました。これにも既視感がありました。
御覧の通り、アニメにも出ているからです。左右の行先表示が実際と変えてあります。これから向かう古民家カフェの「鍵屋」は「かさや」に変えてあります。矢印の方向はそのままですから、その方向へ歩き出しました。
道から古民家カフェ鍵屋へ分かれる分岐の手前で、上図の景色を見て立ち止まりました。奥に見える古民家カフェ鍵屋への石段に既視感があっただけでなく、手前の道端の草に半ば隠れている椀形の鉢に気が付いたからでした。志摩リンが見ている方向に有った妙な土器みたいなものの正体が分かったからでした。
同アングルの劇中シーンです。志摩リンが古民家カフェへ向かう各務原桜のあとをひそかに尾行しているシーンですが、個人的には志摩リンのすぐ前方右にやや傾いた状態で立つ大きな土器みたいなのは何だろう、と初視聴時から気になっていたのでした。実際に現地にそのモデルである椀形の鉢があったので、疑問が氷解しました。アニメでは大きく描写されていますが、望遠レンズで撮ったからかもしれません。
同時に、志摩リンの左脇にある灰色の方形の箱状のものがブロックで囲まれた花壇であることも判明しました。
志摩リンが立っていた位置を撮りました。この位置で私も志摩リンっぽくそーっと石段の方角を伺い・・・ませんでした。人に見られたら、絶対に挙動が怪しい不審人物と思われるに決まっています・・・。
古民家カフェへの石段を各務原桜の気分で登りつつ、一度振り返って奈良田の集落と西山の山並みを見ました。高台に登っているので、南側と西側はどこを見ても眼下に景色が広がります。
同じ位置から、抜けてきたばかりの奈良田の里温泉の管理施設の古民家の大屋根を見下ろせます。古民家というより、明治大正期の地方の役場関係の建物のような雰囲気が強く感じられます。かつての奈良田地区の行政支所か公民館であったんじゃないのかな、とふと思いました。
石段を登ってゆくと、次第に古民家カフェ鍵屋の建物が見えてきました。
こちらも大きな建物です。地域の庄屋階級または富裕層の住宅クラスの構えの古民家です。現在は銅板葺きの屋根になっていますが、軒の厚みがあるので元は茅葺きだっただろうと思います。鍵屋というから鍵型に曲がる建物をイメージしていましたが、実際には一本棟の長い入母屋の建物でした。
アニメでもそのままの姿で出ています。建物周りの小物や鉢植えなどは省かれているので、文化財修理完了後のようなスッキリした外観になっています。
玄関右脇の壁に懸けてある、鍵屋の建物の由来案内文です。昭和60年に富士吉田市から寄贈されて移築した旨が述べられます。寄贈主の渡辺家は富士吉田の大百姓の家柄であった事が分かります。
大百姓は「おおびゃくしょう」と読み、江戸期には庄屋、村役などを幕府や藩より任されて地域の自治行政の要となった階級、身分を指します。田畑を沢山所有する豪農や地主層が大部分を占めました。
なので、その家宅が大きくて立派なのも、地域の人々を祭事や寄合や合議等で集めて収容出来る施設としての側面を併せ持っていたからです。山梨県に限らず、全国どこでも大百姓クラスの住宅建築は広くて立派なものであるのが一般的です。ただ、建物が現存して今も使用されている事例は大変に少ないので、この古民家建築は貴重な文化財でもあるわけですが、建物自体を指定登録しているといった話は聞いたことがありません。
というのも、早川町全域がユネスコ(国連教育科学文化機関)のエコパーク(生物圏保存地域)に登録されており、鍵屋はそのガイダンスステーションとしての機能も果たして早川の見どころなどをパネル展示しているため、文化財指定による保護策が必要無いということであるのかもしれません。 (続く)