京都鉄道博物館の梅小路蒸気機関車庫内の展示機を一通り見ました。
機関車庫の扇形車庫は1914年(大正3年)に建設された鉄筋コンクリート造で、庫内の1915年(大正4年)完成の5トン電動天井クレーン、および引き込み線とともに、2004年に国の重要文化財に指定されています。ほかに土木学会選奨土木遺産、準鉄道記念物に指定されています。
庫外の引き込み線にも2輌の蒸気機関車が停まっていました。見学通路からちょっと離れた位置にあり、1輌は大部分が隠れていて見えませんでした。
それで手前の8620形の11号機を見ました。ナンバープレートは8630なので、8620形の付け番の計算式にあてはめれば、30ひく20たす1で11になるわけです。
8620形は、日本国有鉄道(国鉄)の前身である鉄道院が導入した、旅客列車牽引用テンダー式蒸気機関車の一種です。 1914年から1929年までに672輌が製造され、全国各地の路線で活躍しました。平坦で距離の長い路線に投入され、客貨両用に使用されたため、8620形の姿を見ない路線は無い、とまで言われました。
現在も各地に約20輌が静態保存されており、ここ梅小路機関車庫の11号機は動態保存機として時々「SLスチーム号」を牽引しています。
梅小路機関車庫の中央にある転車台です。
転車台は、「SLスチーム号」のC56形機関車の停まっている側線に繋がっていました。C56形機関車をいつでも機関車庫内に収容出来るようにスタンバイしているのでしょうか。
嫁さんが「こういう蒸気機関車の機関車庫とか、転車台とか、Nゲージでも見るとカッコイイですよ、そのジオラマがあるんで、見に行きましょう」と言いました。そんなジオラマ展示があるの?と訊き返した途端に、腕を引っ張られて、再び機関車庫内へ導かれました。
機関車庫内の一角に、大きなNゲージの梅小路機関車区全域のジオラマが展示されていました。いま京都鉄道博物館の敷地になっている場所に、かつては梅小路機関区の機関車庫をはじめ庁舎や事務棟や検査工場、関連施設などが建ち並んでいたそうで、その往時の姿をNゲージサイズの1/150スケールにて再現してありました。
「おお・・・、これは凄いな・・・、素晴らしい」
「でしょ、でしょ、これ毎回必ず見てるんですよ。こういうの、家でも作りたい・・・」
「こんな大きな範囲を、山陰線ジオラマに入れるんかね?」
「ううん、無理無理。広い家に引っ越したらスペースがとれるかもだけど、今の家じゃ狭いからねえ・・・、それよりは福知山にあった機関車庫のほうが規模的にも小さいから作れるかも」
「福知山に機関車庫があったのか・・・、機関区があったから当然機関車庫もあったわけやな」
「うん、昔の写真とか調べたらね、福知山の機関車庫と転車台とかのがあったですよ。それを再現したNゲージのジオラマもあるんだって。今度見に行きません?」
「どこへ?」
「福知山のフクレル」
「ああ、福知山城の横に最近出来たという鉄道資料館のことか。そこにジオラマもあるわけか」
「うん」
それからは二人で、めいめいの位置でケースにへばりついて広いジオラマを眺めました。上図は南からのアングルで、左側のホッパーと呼ばれる炭台やガントリークレーンのある位置が、いまの京都鉄道博物館の本館施設の南側にあたります。その南側に線路に沿って建ち並ぶ倉庫群のエリアは、いまは京都貨物駅のコンテナヤードの東端にあたっています。
こちらは西からのアングルです。上図右の「梅小路機関区庁舎」の建物群の位置がいまの京都鉄道博物館の本館施設の北側にあたります。その左側に並ぶ線路の一部が、いまの京都鉄道博物館のプロムナードコーナーの線路として再利用されているようです。それらの線路に置かれているのが旧型客車ばかりなので、かつては客車などの駐機場だったのでしょうか。
その客車が置かれた線路のエリアが、上図のように「梅小路客貨車区」とありました。客車だけでなく貨車もこちらで管理していたようです。
東からのアングルです。機関車区の横を山陰線が通っているのは現在も変わりません。山陰線と扇形機関車庫との間は現在は緑地になっていますが、かつては「投炭練習室」や「講習室」などの教育関連施設が並んでいたようです。
嫁さんが、首をかしげつつ、山陰線の横にある「投炭練習室」を指差して言いました。
「投炭練習室って何ですかね?・・・石炭を投げる練習?」
「投げるんじゃなくてな、蒸気機関車の釜に石炭をくべることを「投炭」と呼んだの。単に放り込めば良いものではなくって、釜に投じる量とかタイミングとか、色々と熟練の技が要求されたんで、そういうのを練習したんやな。「投炭」そのものも過酷な重労働なんで、なるべく体力を削らないで効率的に行う姿勢、動作手順があったというから、そういうのも練習していたんと違うかな・・・」
「ふーん、蒸気機関車って、色々と手間がかかってたんですねー」 (続く)