三峰神社境内の諸建築を見てゆくなかで、特に印象に残ったのが上図の国常立神社の建物でした。江戸期の宝暦十一年(1761)に別当寺院観音院高雲寺の護摩堂として再建され、本地堂とも呼ばれて本尊の不動明王像を祀っていました。神仏分離の際には建物の用途を変更したのみで、仏像は降ろして蔵にしまい、堂内に神棚を設けて神社の型式となり、いまに至っています。
国常立神社の南には、小さな祠がずらりと並びます。摂末社であり、名札を見てゆくと日本武神社、伊勢神宮、月讀神社、猿田彦神社、塞神社、鎮火神社、厳島神社、琴平神社、屋船神社、稲荷神社、浅間神社、菅原神社、諏訪神社、金鑽神社、安房神社、御井神社、祓戸神社、春日神社、八幡宮、秩父神社、大山祇神社とあって、日本中の代表的な神社が集まっているのでした。
その南端に大きな上図の社殿があり、現在は東照宮となっています。三峰神社を崇拝した徳川家が寛永元年(1624)に徳川家康を祭神として祀ったのに始まりますが、その社殿の上舎は、室町期に月観道満によって再建された旧本殿の建物を転用しています。三峰神社に現存する最古の建築遺構として、埼玉県の有形文化財に指定されています。
現在の本殿は、遠くから見ても大きく見えますが、実際に旧本殿よりも大きく造られています。逆に旧本殿はこじんまりとしていて、建物も意匠もシンプルです。室町期当時の三峰神社が質素であった様子をうかがわせますが、江戸期の再建事業による現在の建築群がいかに徳川家好みの豪華さに包まれているかがよく理解出来ます。
東照宮を過ぎるともとの参道筋の辻に着きますが、そこから分かれて上図の奥宮遥拝殿への石段を登りました。この範囲はゆるキャン原作コミックにも登場し、志摩リンが石段を駈け下りるシーンが描かれます。
上図の右のコマですね。ゆるキャンコミックに登場した三峰神社関連の施設は、三ツ鳥居とこの奥宮遥拝殿の二ヶ所だけです。随身門から拝殿、本殿に至る建築群はなぜか描かれていません。
とりあえず、志摩リンが見た景色を見ておこうと、奥宮遥拝殿に登りました。
遥拝殿は、御覧のようにコンクリート造の展望所形式に造られています。
殿内に進みました。奥宮は、三峰山の南東の妙法ケ岳(標高1329メートル)の山頂に鎮座しており、遥拝殿の正面口から奥に見える山のコブ部分にあたります。
その妙法ケ岳のコブ状の山頂が望まれました。ここから登山道が通じていて、1時間ほど山道を登れば奥宮の祠に着くそうです。
同じアングルで志摩リンも奥宮の山を見ています。
この日は晴れていたので、遠くまで見渡せました。
志摩リンも、同じ景色を眺めていました。彼女は、三峰神社に限らず、これまでにも色んな所で、高いところや展望所などで景色を眺めていますね。そういうのが好きな性格なんでしょうね。
いい景色です。立ち止まって5分ぐらい眺めていましたが、吹き上がってくる山の風が涼しくて気持ち良く、同時に俗世間の垢にまみれた自身が洗われてゆくような気分になりました。 (続く)