「ええ、私は結婚しない道を選びましたがそれが何か?」
とさっぱり割り切って毎日を過ごしているのではないのです。私たちは、
「えーつと私は結婚できないんじゃなくてしないだけで、それでも私は毎日楽しいから
十分幸せなんで、勝ち犬の方から同情されると心外だし、むしろ私は勝ち犬の方が可哀相
って思ってるくらいなんで、今更結婚しろって言われても一人の生活が快適だから無理だ
って思う・・・(中略)
・・・と、もやもや考えながら生きている。負け犬の数は、増加の一途をたどっています」
ちょっと長い引用になったが、酒井順子さんのエッセー「負け犬の遠吠え」(講談社文庫)
の一節です。
結婚せず、仕事をばりばりして快適に暮らする独身女性に対して、[結婚もせずに・・・」
と勝ち犬(既婚者)から憐れみを目で見られることから「負け犬」とレッテルを張られて
いる女性たち。
政治家的な視点から見ればこのような「負け犬」信念を持った女性が増えているから、日
本の少子化が進むのだ、ということになろうか。
著者の酒井さんによると、負け犬――「すなわち結婚も出産もしない、主に30歳以上の女
性達に対して、今度の自民党総裁選で、少子化への危機感を一番強く抱き、「子ども庁」
創設を一番熱心に訴えているのは野田聖子さんのように見える。
でもなあ、「負け犬の遠吠え」のように、居直って結婚しない女性たちの固い信念を打ち
破るには、政党レベルでいくら「政策」を練ったところでうまくいくとは思えない。
「女性は子供を産む機械」とか「子供を産まない女性に後々まで税金を使うのはどうか」
と言う大物政治家たちが一向に消えない日本のなかで、彼女たちは何十年の時をかけて永
久凍土のように地下深く「負け犬」の岩盤を張り巡らせてきたからだ。
野田さん、どうやってこの岩盤を掘り起こし、「負け犬」たちの心を溶かそうとするのか。
50年後の日本の人口は5000万人に半減するという危機を訴えているが、その前に、ど
うすればこの最大の危機から脱することができるか、野田さんの明確な処方箋を聞きたい。